昭和の時代であれば、4月の新年度を迎えて春闘が正念場を迎え、ストライキの是非を巡って、ベアの100円の攻防が行われ、交渉が決裂した場合は、ストライキに突入もあった。ストライキに対抗して、ロックアウトなど....現代では、ほぼ死語になっているのではないだろうか。

 春闘も平成に入り、バブル崩壊後は労働側は全く力がない。ベアという言葉が死語にさえなろうかという感じさえあったが、アベノミクスの3本の矢で、官邸が春闘に際し、労使側の民主党ではなく、経営者側の自民党が、賃上げを要求するという、奇妙な現象が起きている。官製周到とまで呼ばれた春闘が今年で3年目を迎える。

 順調な企業業績に支えられ、昨年と一昨年は官邸の意向もあり、労働側の要求がほぼ認められ、ベアも3000円程度上がったところが多かったように記憶している。アベノミクスはまず、金融緩和により、企業業績が好転し、企業が設備投資や給与にその利益をまわすことにより、日本全体にお金が行き渡り、税収も増え、経済の好循環を図ろうとするものである。

 アベノミクスも日銀の異次元緩和と車輪の両輪で、円安に誘導が成功し、企業業績は確かに好転した。一部の企業では、トヨタの例を挙げるまでもなく、バブル期もリーマンショック前の神家気の決算よりもさらに多くの利益を計上している企業さえある。ただ、今年に入って原油安による、世界経済の停滞、さらに円高も加わり、株価が今年に入って30%近く下がっている。このことが、春闘に悪影響を与え、ベアよりも一時金での妥結を働こうとする企業が増えているのも事実である。

 企業の利益が、労働側に分配されなければ、消費にも悪影響が出るであろう。物価も低迷し、デフレの懸念もぬぐえない。デフレ脱却のためにも賃金の上昇は必要不可欠であるが、今年の春闘は中途半端な感はぬぐえないであろう。

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