潜水艦の運航法についての勉強

初版:2月15日
2版:3月26日

森 洋之

この解説は私が米国のフォーラムでデスカッションするため勉強した個人的ノートです。情報源は米国のフォーラムです。私の知りえる限り正確を期すようにして居ますが、完全ではありません。あくまで参考資料としてお使いください。もし、間違いを発見しましたら森にメールしてください。

略号、用語

PD,CO,OODなどの略号が良く使われる。

PD:潜望鏡を使える水深のこと。(Periscope Depth)

CO:艦長(Commanding Officer)。ワドル艦長。

副艦長:常に艦長をフォローする。独自の視点で艦長の判断をフォローしミスを防ぐ。

OOD:当直士官、3交代で艦の操船を行う。事故当時はコーエン先任将校であった。

Chart with water depths:水深表示海図。左に事故海域の水深表示海図を示す。クリックすると拡大図画を表示する。

Inertial navigator:慣性ナビゲータ 潜水艦の3軸別の加速度を測定して、事前に確定した定点を基に現在位置をコンピュータで算出するナビゲータ。非常に正確で且つ一日に数回GPSに基づ校正する。

fathometer:潜水艦から海底までの深さを測定する。

運航法

潜水艦の基本航法:水深表示海図と慣性ナビゲータにfathometerを組み合わせて、海底の岩やさんご礁に衝突しないように運航する。慣性ナビゲータで算出した現在位置は一日に数回GPSと照合して正しい位置を割り出して行く。

浮上手順:当直士官が操船してPDに浮上する。潜望鏡で周りを見渡し、なにも無ければ、「ノーコンタクト」を報告して、CO艦長に浮上許可を求める。艦長も潜望鏡で「ノーコンタクト」を確認して浮上を許可する。当直士官が操船して海面に浮上する。

ソナー探索:PD浮上に先立って、360度に渡ってパッシブソナー探索を行う。全域を概観し、更に全てのコンタクトを精査し、COにPDへの浮上の許可を求める。COは全ての情報を評価・確認して許可を出す。

緊急浮上演習の操船:一度PDに浮上した後再び潜水してバラストタンクに空気を送り込む。その後、潜水艦は一気に海面に急浮上する。

緊急浮上演習の性格:これは通常の演習ではない。潜水艦が最大潜水深度まで潜水できる認証を得るために定期的に行う保守点検である。これは1960年代のUSS Thresher の悲劇の教訓から出された定期保守である。USS Thresher は緊急浮上システムが動作しなかったため、沈没して乗員全員を失った。

事故直後の原潜服役経験者の見解:これは本来、乗組員の訓練ために行う演習ではない。しかし、その保守を行う時期に、市民が乗船して来たら、感動的であるから、市民が居ても出来ると思って、恐らく市民が乗船している時に実行したのであろう。
 一旦緊急浮上を始めたら、それの中止し・変更はできない。潜水艦はまっすぐに上昇する。


明らかにすべき問題点

1)艦長COは、ゲストよって取り乱されたのであるか。
2)COはことを急いだか。
3)COは予定時刻に係船したくて海面に浮上したのであるか。
4)PDで海上に何も無いことを監視してから緊急浮上を開始するまで何分
経過したか。
5)PDしたときの潜望鏡の視界はいくらであったか。この視界により安全に前進できる時間が算出できる。 t=X/(Ss+Se) ここで、X:視界距離、Ss:潜水艦の速度、Se:潜望鏡の視界の外から視界に入って近づいてくる艦船の速度、t:安全に前進できる時間