だから茶箱は面白い!

はじめに

去年 (1998 年) の 12/27 に発売になったモデルワーゲンの ED22 を早速組んで みました。 入手したのは 12/28 のことで会社の片づけにも飽きて、「そろそろ届いているかな?」と思い原宿の IMON (会社から電車で 15 分くらいなのだ...) で現物を見てのことでした。 キハ 28 あたりを IMON で買った時に、「稲葉さん ED22 予約されますか?」とは聞かれたんだけど、何しろ定評のあるモデルワーゲンだから、物を見ずに予約するなんてことは気の小さい私としてはとても無理なことです :-)

ざっと見ての感じでは、ロストワックスパーツなどもクリーンで出来が良く、何といっても動力系が凝っていないことから、「最低限走るようにはなるだろう」ということでその場で購入を決定したのです。 もっとも、買ったのが 12/28 ということから、暮れは実家に帰るし向こうで作る気はしないということから、組み立ては年明けということになります...

動力系と上回り

ここの製品の場合、非常に丁寧な組み立て説明書 (松井大和さんのイラスト入りで) が付いているのが特長なのですが、問題は「設計通りに組んでも動かない!」ことがあまりに多いことでしょう。 そういう意味では、昔の「テツモのキット」と似た面があるとも言えます。

ということで、組み立て手順は参考にはしてもそれに盲従する事無く、自分なりの手順を考えないと未完成へ向かってまっしぐらということになってしまいます。 私の場合はだいたい、動力系をチェックして、上回りの大まかな所を組み立て全体のバランスを見る、そして後はディテールに行く、という順番にすることにしています。

これに従って、まずは動力系の組み立てです。 この機関車の動力系は、昔良くあったインサイドギヤーによる駆動と似た方法でギヤボックスから自分で組むようになっています。 ギヤボックスの精度は最終的な性能を左右する部品ですから、直角ジグなどを駆使してゆっくりと確認しながら組むようにします。 同じギヤボックスを二個組んでそれぞれ独立のキドマイティで駆動するようになっているのですが、どうしてもこうした構成では両方の動力台車の特性が一致しにくいようです。

特性うんぬんの話は、ある程度組みあがってからの話であって、まずここで「何とかならないの?」と思う事が一つありました。 それは、モータの取り付け法のことです。 前にも述べたように、この駆動系は昔のインサイドギヤーに近い方法になっており、ということはモータに直結されたウォームギヤのバックラッシの調節をモータに付いているネジで行うようになっているということなのです。 ところが、モータの幅の狭い方を車体幅方向に置くようにしているために、モータ取り付けネジの片方は完全にギヤの裏に潜ってしまっているのでした。 仕方がないので、そちら側のネジはある程度軽く締めておいて、ギヤと干渉しない方のネジを使ってバックラッシの調節をすることにしました。 モータを付ける方向はこの方が良いとしても (なにしろこのおかげで R350 を周るようになっていますから) モータの取り付けに途中にもう一枚板を付けて、ネジによる調整をやり易くするなりの工夫があれば、この部分の性能はもっと上がることだろうと思います。

さて、こうやって組めた下回りを床板 (この時点では他の部品は何も付けていない) に組み付け、まずはモータにパワーパックを直結してテストしてみました。 すると、予想外に回転も良く何となく前途が明るくなってきたわけです。

ところがこれで終わらないのがモデルワーゲンの良い所で、説明書に書いてあるようにモータの結線をしてこの下回りを線路に乗せてテストしようとすると「動かない!」。 単体では両方とも動いているわけで、ショートしているようでもないので、順に通電を当たっていくことにしました。 このシステムはそれぞれの台車の片方 2 輪からそれぞれ極性の違う電気を集電して両方のモータに流すという風になっています。 つまり、片方の 2 輪 -> ギヤボックス -> モータのフレーム -> モータのラグ板と通電される組が二つできるはずなのです。 で、良く確認するとギヤボックスとモータのラグ板の間で電気は来ていないのです。 どうも、黒めっきのせいか、モータのフレームには電気が流れていないようなのです。 仕方がないので、モータのフレームに沿うような形で t0.1 の黄銅板を挟み付けてやって、この間の回路を確保することにしました。 右の写真にある状態は、台車なども組みあがった相当後の状態ですが、手前のモータのラグ板の下の部分が黒くないのが見えると思います。 これが通電用の黄銅板です。

この問題を除いても、この組み方だと分解する毎にモータへの配線の半田付けを離さなければいけないという問題があるので、最終的にはギヤボックスを床板に繋いでいるセンターピンに挟むような形でラグ板を入れて、そのラグ板にモータからの配線を繋ごうと思っています。 ちなみに、この辺で文句をいいすぎたのか、センターピンをの下に入れるためのバネを片方飛ばしてしまいましたが、まあこれは最後にその辺の燐青銅の線等で作れば良いでしょう。 おそらく、もとのバネはステンレスのようで、私の感覚からいえば少し強すぎるように感じられますし...

上回りは、黄銅にエッチングされた板をプレスで仕上げられたもので、妻板とボンネットの間のほぞ組も特にずれはなく、順調に形になりました。 ただ、もとの設計では、それぞれのボンネットに二個、キャブの部分に二個の合計 6 本のネジで床板と接合するようになっていますが、これだけ小さな機関車であればキャブの二本のネジは省略しても問題無い (大きく重い機関車であれば、これをやるとせっかく付けたボンネットの部分に荷重が集中してここではずれることがある) と思われるので、キャブ下の床下取り付けアングルは省略することにしました。 これによって、最後に本来アングルが付いている部分にもウェイトを追加することができるので、貨物専用機にはふさわしいと思っているのです。 そういえば、もっと大きな機関車でもそうですが、箱物の補重をするときにいつも気になるのが、床板取り付けアングルの裏側の空間です。 この空間は意外と大きいのに、わざわざ補充されている機関車ってあまり見ませんよね...

この状態までに、合計で 6 時間くらいかかり、1 月の最初はどうしても新年会などの宴会が多く週に 2 日くらいしか着手できませんでした。 ということで、1999/1/9 にこの状態で IMON のレイアウトを使い、慣らし運転を行いました。

ディテールの取り付け

さて、後は直接走行性能には影響しない (ことが多い) ディテールの取り付けです。 つまりは、当社においてはほとんど重要視されない部分ということで、バラキットなどでも、一応の形が出来て走ることが確認できたらそれっきりというものがどれだけ眠っていることか... 今回は、何といっても Baldwin の機関車ということでそれなりにリキが入っておりここで中断することなく継続できました。

とはいっても、何しろモデルワーゲンなのでここから先もさまざまな問題が予想されます。 ということで、勘に従って (これが大事) 上回りのディテール、床板に付けるディテール、台車周り、パンタグラフの順に組んでいくことにしました。

上回りは勘がさえていたのか、ロストワックスを取り付けるときの難しさ (奇麗に磨かないと半田をはじく) を除けば、予想通り大過なく終わりました。 もっとも、こちらの工作力の問題かヘッドライトのステイ (これは洋白のエッチングで出来ている) が片方折れてしまいましたが、「遠くから見ればわからない」ということで無視です。

次が、床板に付けるディテールです。 その中で最も大物はエンドビームでして、これを付けないとカプラーも付かないということからどれだけサボろうにもここはどうにかしないといけない所なのです。 で、問題はこの模型のプロトタイプとなったのが松本電鉄の ED22 ということだったのです。 つまり、松本電鉄の ED22 は非常に大きなスノウプロウを付けており、キットの元設計ではこれをエンドビームに半田付けするようになっています。 ところが、このようにすると KD カプラーの開放ピンが干渉するので、説明書によれば「KD カプラーの開放ピンは切って付けてください」ということになっています。 しかし、ED22 のような小さな機関車はやっぱり入れ替えに使ってこそのものだと思うので、これはあまり嬉しくないことです。 一瞬だけは「エンドビームを作り替えるか」とも考えたのですが、面倒くさいモードだったので、この案は止めにしました。 結局、スノウプロウはエンドビームに M1 のネジ一本で止めるという風に変更することにしました。 つまり、スノウプロウとエンドビームを仮に重ねておいて、上からφ0.8 のドリルで穴を開け、エンドビームの方には M1 のタップを通し、スノウプロウの方にはφ1.0 の穴を通したのです。 こうすると、そとからネジの頭が見えてしまいますがそんなに大きな物でなし無視することにしました。 裏からネジ止めするにはあまりに色んなものが交錯する場所ですからね。

床板周りのディテールとしては、この他にフックの取り付けが少し問題になります。 自作だったら、絶対作らないようなパーツですがせっかく付いているのだから付けて上げようとはおもったのですが、説明書にも記載されているようにこのパーツは取り付け穴と場所があいません。 で、説明書ではフックの方のピンを切ってしまえと書いてあるのですが、せっかく付いている位置決めのピンですし、単に上下にずれているだけなので、ビームにあいている穴の方を長穴 (正確には糸鋸で下まであけて U 字型にした) にしました。 もっとも、この方法は片方一個づつあるステップと干渉する部分ではあまり妥当ではないので、ここだけはピンを切って半田付けをしましたが、予想通りこの部分だけは半田付けがえらくやりにくかったのです。

あとは、本人の工作力の問題ですが開放テコ受けなどの網目板 (床板) の表に付ける部品って、どうやれば奇麗につくのでしょうね。 この手の部品ってどうしても半田で網目が埋まることを避けられないんで、困ったものです... ちなみに、裏にはすでにエンドビームが付いているので表からしか付けられない部品なのです。

台車周り

台車周りを後に回したのは、「そろそろワナがありそう」というニオイがぷんぷんしたからですが、まさかここを仕上げないと走らせてても格好が悪いですからいつかは手がけざるを得ないのです。

実際に組んでみると、ほとんどの部品がロストワックスでできていて、それぞれの部品はそれなりに良くできていました。 しかし、ブレーキシューを付けてから台車枠を付けようとすると、ぶつかって付かない... おそらく寸法を間違っているのだろうと思い、日を改めて (この日はここで撤退) 台車枠の裏に付けるスペーサーを t0.8 の板から切り出してやりました。 で、これで浮かせて、ブレーキシューもきちんと付くようにジグ (というほど仰々しいものではなく、車輪をくるむ紙でできたスペーサ。これでブレーキシューと車輪の間隔を一定に保とうとした) を使って再度チャレンジです。 ところが、何と今回はスペーサなんてはめなくても巧く行くじゃあないですか... 結局の所ブレーキシューを車輪押さえ板に付ける所が、どうとでも付くのに対し (特にピンなどが立っていないから) これと台車枠との関係が非常に厳しい納まりになっているのが問題なのが判りました。 しかも、完成写真を見れば判るようにブレーキシューの下に付くロッドと線路の間隔が巧く作らないと、非常に厳しくなるのです。

ということで、ここはあまり巧く行っていないのですが、これ以上巧いごまかしも思い付かないので一応良しとしました。 ブレーキシューを付け直せば、もう少し改善されるかとは思いますが、この辺の工作をギヤーボックスを付けたまま (すでにこれにはギヤーが E リングで付けられていてはずせない) やっている関係で、樹脂のギヤーを融かしそうでやりにくいのです。 それなりの半田コテのコテ先を作ってからやるべきでしょうね。

これで一応、パンタグラフを除いて大体完成です。 もう一度テスト走行と思ったんですが、ボンネットに入るはずのウェイトはどうも入れ忘れたようですねぇ... 仕方がないから、空いてるところに鉛板からウェイトを作ってやりました :-)

そして最後にパンタグラフ

大物では最後に残ったのが、パンタグラフです。 別にパンタグラフが苦手ということはない (自作も良くするから) んですが、全体からもれ出てくる禍々しさはどう考えても、これを最後にしろと言わんがばかりでした。 ということで、ここでコテを変えて (今までは 60W のコテを使用、ここは 30W の私がパンタグラフ専用にしているものを使用) 仮組みから始めました。 予想外に、寸法精度は良く出ているので驚きましたが、大きな問題が一つありました。 つまり、このパンタグラフは枠組みを台枠に付ける所が、単にはめるだけになっているのですが、「簡単にはめられるということは、簡単にはずれること」でしてどうやっても落着かないのです。もう少し、下の枠組みの横棒が長いか何かのしかけがあればこれで充分良いパンタグラフといえるのですが、このままではどうしようもありません。 仕方がないので、横棒を切ってしまって、その代わりにφ0.5の洋白線を渡すことにしました。 こうすることで、下の枠のトータルの長さが上の枠と合わなくなりパンタグラフを下げたときの格好が非常に悪くなりましたが、これは我慢することにしました。

もしもう一度組むのであれば、むしろ台枠の軸受けの部分にφ0.5あたりの線から作ったスペーサでも入れてやって、枠組みが左右に動かないようにすることで抜けないようにした方が良いなあと思っています。

終わりに

こうして一応全体がまとまりましたが、まだいくつか改良したい点がありまだ塗装はしていません。 もっとも、こういう理由の元で未塗装の車輌があまりに多いですから 2/6 の HOJC の運転会までにはなんとか時間を作って塗りたい (が恐らく無理だろう :->) と思っています。 全体としては、モデルワーゲンの設計品質も一作ごとに上がってきているように思われ、走行性能も昔のあまりにひどかったものよりは格段の進歩を遂げているように思えます。 又、プロトタイプが私の大好きな Baldwin であること (BLW-WH の 25t 機という標準設計) を除いても、適当な大きさということからも「電化私鉄」には是非一台といった感じだと思います。 これを組んでいたら、なんとなく ED10 やら ED53 といった、本線級の BLW-WH 機が欲しくなってきました...

ワ 12000 を牽引する ED22