Proto 87 を試してみる

ちょっと前に、出張に行ったついでによったあるアメリカの模型店で、立ち話をしていて Proto87 の話が出ました。 Proto87 という輪軸と線路の規格の話自身は、前から知っていたのですが「ここまで実物に近い輪軸を使うと、走らせるのも大変だろうなあ」と勝手に思っていて、自分では試してはみませんでした。 ところが、模型店にいたあるモデラーが言うには、「ハンドレイ (既成の線路を使わずに、自分で線路を作ること) ができるんなら、そんなに大変じゃないよ」という事だったので、まずはものは試しとやってみることにしたのです。

Proto87 というのは、考え方としては「車輪のフランジを低くして、車輪を薄くするというのを究極まで追えばどうなるか」ということなのです。 規格は Proto87 の Web site にあるので、それを参照いただければ良いと思いますが、例えばフランジウェイの幅は 0.6mm、フランジの高さは 0.35mm 以下というものになっています。 これだけ実物に近い寸法で模型を作ると言うことから、どうしても公差は他の規格などよりは厳しいものになっており、例えばフランジウェイの幅は 0.57mm から 0.6mm と 0.03mm しか許さないということになっています。

ただ、幸いにしてアメリカの NWSL という車輪を色々出しているメーカ がこの規格にあった輪軸を各種出しており、少なくとも車輪を旋盤でひくというような苦労はしなくて済みます。 そこで、いつも注文する Walthers に、必要そうな輪軸をいろいろと注文してみて、その間に Proto87 のポイントを作ることにしました。

右の写真が、少なくともテスト的に走らせるところまではできたポイントの試作品で、寸法などは Union Pacific の実物の図面にあった #9 のポイントをもとにしています。 フランジウェイが実物なみの広さ (狭さ?) なので、寸法的には全く変更することなく作ることができました。 ちなみに、いつものことですが枕木はプリント基盤から自分で切り出したもので、レールは HO スケールの 100 ポンドレール (とはいえ、Union Pacific が使用していたものとは、ほんの少し寸法が違うのですけど...)、トングレールは一体型の弾性ポイント (これが一番作り易いので) にしています。

手前に見えているみのむしクリップがフィーダになっています。

フログのところを拡大してみました。 写真で見るとフログのところはわかりにくいかもしれませんが、ガードレールのところを見ると、レールの頭の幅よりもフランジウェイの幅の方が狭いことが分かると思います。

この幅の比が、今までの鉄道模型の規格ではどうやっても出せなかったのです。

ポイントのまわりは Kato のユニトラックのレールだけを HO スケールの 100 ポンドレールに変えたものを使ってみました。 偶然なのですが、Kato のもともとのレールも底の幅がほぼ一緒だったので、それを抜いて新しいレールを入れるだけで済みました。 まだ、エンドレスになるほど線路を買っていないので、180度だけ作って前後に動かしてテストしています。

Kato のもともとのレールを使わずに 100 ポンドレールにしたのは、別にもとのレールが気に食わないからというわけではなく、ユニトラックでは別に引き抜きレールを売っていないので、ハンドレイでポイントとか作ると非常に割高になってしまうのを嫌って、それならむしろもとのも抜いて 100 ポンドレールで統一すれば良いやと思ったからです。

写っている車両は順に Walthers の SW-1, Athearn のタンク貨車、それに同じ Athearn の 40ft ボックスカーが二両です。 全て、NWSL で売っている車輪に入れ換えるだけで車両の方の準備は終りのはずでした...

こういう角度から見ると Proto87 と言っても、何も変わりません。 まあ、非常に近くによればフランジが低いことが見えますが、それも気にしている場合だけのことでしょう。

Proto87 化とは関係ないのですが、実はこの Walthers の SW-1 はえらく苦労をして手に入れたものなのです。 というのは、ちょうど今回のを始めようと思ったときに、「これは絶対 SW-1 がいるな」と思ったので、早速 Walthers の web で調べたら、なんと去年で生産中止になっているではないですか... そうなるとむしろ絶対欲しくなるんで、置いてそうな模型屋をインターネットで色々調べたのですが、全く駄目。 しかたないから、銀座のエバーグリーンショップで中古の SW-2 を買ってそれで我慢しようと思ったのですが、フッと 3F に行ったらなんと新品の SW-1 が置いてある。 値段が値段 (もともと $60 以下のものを 15,000 円以上で売っていた) だったので、悩みましたがぐっとこらえて買ってしまいました。

ということで、まだ Proto87 にしていない SW-2 も残っています ;-)

まあ、SW-1 を買う苦労というのは今回の本題ではなく、本来 NWSL の輪軸をはめておしまいだったはずの貨車の方が、「言うほど簡単じゃない」のいつもの例だったのです。 この写真で分かるかと思うのですが、本来ぴったり合うはずの NWSL の車軸が Athearn の台車に入れると短過ぎるのです。 しかも、台車ごとに穴の深さが違って (ばらつきが大きい)、 Athearn 用にぴったりの車軸の長さというのが言えないのです。

この台車がついているのは上の写真の赤いボックスカーなのですが、これだけがたがあっても一応走ることは走ります。 ただ、さすがにたまに脱線するのであまり良い方法ではないと思います。

こちらの台車には、NWSL が出している 1.015 インチの車軸より長い 26.5mm の車軸を自分で作って入れてみました。 この台車にはぴったりで、左右のガタが 0.2mm くらいしかないのですが、同じ Athearn でも他のだとこの輪軸は入らなかったりします。

こちらの台車には、シンチュウのブッシュ (モアのもの) を入れてみました。 この場合は、1.015 インチの輪軸ではなく一番短い 0.915 インチのものがぴったり合います。

プラの貨車ばかりでは良くわからないこともあるので、手元にあった 85 フィートのギャラリーカー (とはいっても Overland とかの高いものではないです) もテストしてみました。 最初、片方の台車だけポイントで良く脱線するので、いろいろ直してみたのですが、なんと台車がほんの少しねじれていました。

HOJC 暫定規格あたりだと問題にならない程度のねじれだったのですが、それを直したら脱線しなくなりましたので、一応「ねじれに対しては厳しい」というのも実感できました。 少なくとも Proto87 だからといって、二点支持や三点支持の台車でないと駄目というわけでもなさそうです。

ということで、一回目の結論めいた話としては、「Proto87 は思ったほど大変でもない、でもいつものように罠もある」ということでしょうか :-)

9/1 に交野で HOJC の運転会があるので、他の人にも声を掛けていろんな HO 車両でテストしてみることにしました。 そこで、その前日実家に泊まることにしてリハーサルをしました。 左の写真がその時の物です。

前回までとは違って、6 軸のディーゼルでは分岐のポイント部で脱線が頻発するので困ったのですが、まあここまで来て改造も出来ないので「明日は明日の風が吹く」ということで、おしまいにしてしまいました。

ちなみに、6 軸のディーゼルはまず Athearn のものを改造したのですが、これはアンデコで買った奴だったので、よそ行きということで Kato の C44-9W (Norfolk Southern 塗装のもの) を Proto87 にしたものを持っていきました。 この車両は過去にないくらい改造が (というか輪軸をむき出しにするのが) 難しかったので、その内改造の仕方を書くことにしましょう。

編成がエンドレスの向うの曲線にあるんですけど、ほとんど見えませんねぇ...

こちらはその翌日、交野での実験です。 外側に森井さんの組み立て式レイアウトをまず敷いて、その中に前日とほぼ同じ構成でエンドレスを作りました。 「ほぼ」というのは、分岐側を前日とは違い S カーブにならないように内側にした事で、今後はうって変わって快調な走行を続けました。

もっとも、線路の置いてある下地が前日はカーペットだったのに対して、こちらは机なのでそちらによる差の方が大きいのかもしれませんん。 当日は、一日あったんだからもっといろいろできたはずなんですけど、いつものように色々とやることもあって、あまり詳しい実験はしませんでした。

クラブの他のメンバーのものを Proto87 にしたのも、単に輪軸を変えるだけでほとんど問題なく、この試作線路の上を走りましたから、ことトレーラに関して言えば Proto87 にするのは非常に簡単と言えると思います。

このエンドレスの回りにある、ユニトラックは森井さんが同じ方法で 100 ポンドレールにしたものです。 レール交換するのに手にマメができたというので、「ペンチでやれば...」と言ったところ、「だってそれじゃあレールに傷が付く」と言われてしまいました。 そこで、自分のやったのを見たところ、まあ見事に傷が付いてましたね :-)

当日、他の人のを交換したものも含めて、どの車両にどの輪軸を使えば良いかのリストを下に付けます。

メーカ車両適合輪軸注釈
WalthersSW-12553-6間違って、2539-6 を買ったのでウォームホィールまで交換した
KatoC44-9W27691-4輪軸を取り出すまでが非常に大変
Athearn40' boxcar37617-4台車によりバラツキが大きい
Athearn40' boxcar37677-4モワの軸受けブッシュ使用時
Kadee40' boxcar37617-4輪軸をはずす時は台車を捻る
Accurail40' boxcar37617-4牛越さん所有車
Bachmann棚車37667-4牛越さん所有車、バックマンはヨーロッパ仕様らしい
AHMカブース不適1.015" では長過ぎ、0.970" では短過ぎる
TichyOre car37617-4浅本さん所有車、台車は接着なので組み上げると交換にコツが必要

更新履歴 最後に更新したのは 2002/8/9 17:30(JST) です。