同院は’98年に日本医療機能評価機構の認定病院として認可されており、また、現在14の学会から教育関連施設の認定も受けている。
神野正博現理事長が院長に就任したのは’93年。同院の特徴は数多くあるが、その中で特筆すべきは現理事長が取り組んでいる病院経営合理化のための様々な試みだろう。
下の表に示したのが同院の最近の歩みだが、実にオリジナリティーにあふれている。「診療材料の院外SPD化」「臨床検査LAN稼動、外注会社一社化」「薬剤在庫管理システム、納入卸一社化」「事業所内PHSシステム」「クレジットカード払い導入」などは医療機関としてはどれも日本で最初に取り入れたのではないか。
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これらひとつひとつをみれば、既に導入した医療機関も増えてきてはいる。しかし、同院の特徴はこれら一連のシステム改革の全てが有機的に結びついている点にある。
診療材料・薬剤管理や放射線デジタル画像処理システムなど、診療・経営に関するすべての情報が全部署で共有されている。昨年9月には直営診療所とのオンライン化も実現したため、患者情報の共有化だけではなく、医事業務の本院管理もでき、診療所におけるレセプト作成の手間が省けた。当然、診療後の投薬や会計の待ち時間はぐっと短縮された。
むろん、これらのデータの管理・蓄積は、来るべきDRG/PPSへの対応も十分可能で、各疾患はICD(国際疾病分類)に沿ってコード化されており、昨年導入された同院のクリティカルパスもDRG/PPS対応だ。
医薬品卸を一社化し、小分け薬品にバーコードをつけ、薬剤在庫ゼロを目指すなどの発想は、コンビニのシステムにヒントを得たという。このあたりも、常に一般サービス業の動向に目を凝らしているからこそのアイデアといえる。
さらに感心すべきは「当院がいくら合理的なシステムを作っても、他業種にとって当然のことばかり」として、現状に満足することなく、さらに先を見ていることだろう。
同院では現在、特別医療法人かを申請中だが、これが実現すれば関連産業への進出も可能で、神野理事長は、同院の経営システムのノウハウを販売できないか、とも考えている。これ以外にも給食宅配、事務管理、物流管理、コンサルテーション、患者搬送、浴場業への進出など、アイデアは尽きることがない。
特別医療法人化については「MS法人化という手もあるが、それでは自分の財産が増えるだけ。それより病院の財産を増やして医療の充実や継続性を高めたい」と語る。この言葉からも、単に経営の合理化だけを目指しているのではなく、職員の生き甲斐に立脚した患者中心の医療を目指していることが窺える。ただ、残念ながら今回はその説明にスペースを割く余裕がない。
同グループでは第1回ケアマネージャー私見で既に35人の合格者を出している。介護保険を大きなビジネスチャンスとしてとらえている証だ。すでに老人医療は同院の大きな柱の一つになっているが、来年には奥能登・穴水町に143床の療養型病床群を建設するなど着々と準備中だ。
また、介護保険施行後、施設への入所を拒まれる人々への対応も、ビジネスチャンスととらえている。ケアハウスもすでに設置、また、町のケアマネージャーに同院の施設やスタッフの利用を呼びかけるなどして、積極的にアプローチしていくことも考えている。ともかく既存の施設を120%生かすことを目指している。
「うちは初診料をいただかないので、医療費削減の意味からもよい方法と思う」と神野理事長。
同院には開放型の病床5床もある。利用率もなかなか良いようだ。
もう1つの悩みは、老健や療養型病床群などの設備投資に力が入り、本院のリニューアルが遅れている点。今後医療法の改正により急性期病棟の病床面積は5u以上となる。現在、本院の平均在院日数は約22日、看護基準は2.5:1(A)で十分急性期医療の基準に対応できるが、病床面積の改善には資金がかかるし、頭が痛いようだ。
近隣の公立病院が現在リニューアル中で、大いに気になるところだが、これだけのアイデアマン、民間病院の意地を見せ、見事に乗り切ることと思う。