Dr.K (Tokyo)

東京で皮膚科形成外科医院をご開業のK先生から頂きました。

内外価格差について


1996.4.4着信

神野先生へ

 私昨年6月に新規皮膚科形成外科で開業しました。開業当時社保のむちゃくちゃな減点査定には非常に怒りを覚えました。大学や派遣病院にいましたときに、保険委員をやりましたが、同じ診察や治療をしても総合病院は問題なく通っても個人のクリニックでは査定されてしまう、そして都道府県によっても全然違う。厚生省のいう何人もどこでも平等に医療を受けられるとはどんなことなのでしょうか?診療報酬改訂ごとに露骨に医療費削減の方針しか見えません。今回の非加熱製によるエイズ感染からも彼らは国民の医療なんで全くこれといった構はもっていなく、ただ単に自分の将来の天下り先のことしかないと思います。天下りと賄賂の後払いとどこが違いますか?

 先生のおっしゃる医療材料の内外較差について、今回の開業時で本当に思い知らせれました。たまたま海外の雑誌に投稿しましたせいかと思いますがアメリカのある皮膚科関係の診療材料の仲卸Delasco社から直接にカタログが送られてきました。そ中の物の値段を日本の物と比べると、同じ物でもひどい場合はなんと15倍もの差が付いてしまいます。輸送費を払ってもたくさんおつりがきます。開業資金を節約できたらと思い、それではと、開院に必要な物を個人輸入しようと思いまして直接注文しましたら、税関ですべて止められてしまいました。医療材料は厚生省の輸入許可がないと輸入できないとのことでした。致し方なく、必要書類をそろえて、1日費やして厚生省に許可をもらいにいきました。しかし、その係官は多数の書類のなか、目を通したのは通関のinvoice上の物の数と私が提出した書類上のもの数が合うかどうかだけでした。まったく人を馬鹿にしているとしか思えません。医療費を高騰させている元凶は厚生省自身ではないでしょうか。輸入障壁を作って、医療器械を高い値段で売らせて、自分たちはそらの医療器械会社に天下りしていくという図式でしょう。そもそも医療材料を海外並の値段に下げれば診療報酬で10%値上げに匹敵すると思います。

 このようなことは国際学会の展示場にも多く見られます。海外の業者も日本の医療器械の気違いなみの値段におおくのビジネスチャンスがあるとみて、大挙日本の国際学会に押し寄せていました。昨年の横浜の学会展示場に全く同じ機械が真向かいのブースに並んでいました。一方は$2000、一方は850000円の値段がつていました。違うのはラベルだけでした。

坪井先生が日本医師会会長に当選しまして、非常に心強く思います。昔の武見先生時代の医師会が戻ればよいと思います。いままでの厚生省のイエスマンだけの日本医師会、そて金だけ吐き出されて何の効果も得られない医師政治連盟を徹底的に改革してほしいと思う次第です。

 以上、長々と大変申訳ございません。これまで感じたことはなかなか訴えるところがなく、たまたまホームページに先生の記事を見まして、内容を拝見しましたら、思わずE-Mailをおくりました。


1996.4.8発信

K 先生御侍史

ご意見ありがとうございます。内外価格差の問題は、みんなが何とかしたいと、風穴をあけたいと思っていながらなかなかできない中、果敢に挑戦した先生の実行力に敬意を払います。

3月29日の政府閣議決定で、規制緩和計画として、医療機関の広告規制の緩和等が示されました。この中で、医療用具についての項もありますが、私の理解力が少ないせいか、分かったような分からないような漠然とした内容のようです。(早い話が、進歩がない)

これを理解するのに、1月に出された厚生省の「所管行政に係る規制緩和要望およびその検討状況」という内部文書によりますと、措置予定(近い将来実行)、検討中(遠い将来)、困難、その他と分類され、258の規制緩和要望項目について、詳細が発表されております。これによると、「営利法人による医療機関経営」という項目で、「検討中」という進歩(?!)がありましたが、日本医療法人協会、全日本病院会からの要望事項としてあげられた「外国で使用されている医療材料の並行輸入の容認」という項目では次のように(その他)の項目、考える必要がない項目(?)で示され、ほぼ現行では手続上難しいと思わせる規制に縛られているように思います。

担当課:厚生省薬務局医療機器開発課
関係法令等:薬事法22条、薬事法23条において準用する同法14条
検討状況:(その他)

並行輸入であっても、医療機関に医療用具を引き渡すまでの間における製品管理、品質管理とうを適正に実施するため、薬事法に基づき、個々の品目に対する承認と輸入販売の営業所に対する許可の取得が必要であるが、これらの手続を行うことにより、現在でも医療用具の並行輸入は行われている。
さらに、臨床検査機器のように直接、人体に接触しないもの等については、平成7年6月の薬事法試行不要品目として指定されたことから、許可を取得すれば品目の届出のみにより輸入が可能となっている。

ということで、(難しい)手続をして、輸入業者になればOKとのことのようであります。当院でも、汎用品で、しかも内外価格差の大きいもの(例えば、カテーテル類)で、何とか並行輸入ができないか模索しております。

ご意見ありがとうございます。医療経営のホームページはいろいろな検索システムにあえて登録してありませんので、持って行き場のない忌憚のない御意見を拝聴できればと思います。

神野正博


1996.4.9着信

神野 先生:

 さっそくのご返事どうもありがとうございました。薬事法でいう”人体にさわらない”ものという表は非常に曖昧であり、実は先日又許可を取るのが面倒と思い、何とか厚生省に行かずに済もうとして厚生省の係りと喧嘩しました。今回はmouth retractorという口を保持する器具で、簡単にいえばプラスチック製U字型の器具で、非常に簡単な物でアメリカでは1個10ドル弱で、3個で29ドルの安物ですが、日本で昨年大学で買おうと業者に見積もってもらったら、なんと1個12000円とふっかけてきました。それで、そのものを配線を押さえる物として輸入しようとしたら、アメリカの業者に私がくれぐれもサンプルであるとだけ票に書き込んでくださいと頼んだにもかかわらず、”Medical Supplies "書いてしまったので、税関で止められました。その厚生省の係官がいうには、たとえ元々の用途は何であろうと、医療に転じて使える物でしたら全て厚生省の輸入許可が必要であると、しかしその論法でいくと、我々はよく手術のデザインにピオクタニン液をコーラの蓋にいれて、爪楊枝をペン代わりでやりましたので、そではすべてのコーラの蓋や爪楊枝も厚生省の輸入許可が必要となってきます。全くばかげた論法であります。そ以上話しでも無駄と思い、引き下がりました。結局は厚生省はいたるところに自分たちの勢力範囲をのばしたいとしか思えません。


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