日経ヘルスケア1996年11月号 月刊「日経ヘルスケア」1996年11月号

特集:クスリの激震が医療経営を揺さぶる

対策編より当院関連記事を抜粋


記事

日経ヘルスケア96-11

急性期でも薬剤比率低減を重視

石川県七尾市にある、特定医療法人董仙会・恵寿総合病院の理事長の神野正博氏も、「安定経営を行うためには、“モノ”にかかるコストをいかに縮小するかが最優先課題」と考えている。病床数は454床で、新看護基準の2.5:1/A加算を算定する。1日当たりの外来患者数は約1000人で、分業率は3割強、薬剤比率は約18%だ。
定額性の算定施設のみならず、出来高性を算定し、急性期医療を担う医療機関でも医薬品に対する意識が変わりつつある。薬価差益の確保ではなく、薬剤比率を引き下げることを重視しているのだ。 薬価引き下げと診療報酬改定が同時に行われる以上、薬剤比率が低い医療機関ほど、診療報酬改定の恩恵を受ける。薬価差益が縮小し、かつ医薬品使用への規制が強化される時代にあっては、こうした傾向が一層強まるだろう。
例えば、恵寿総合病院では、95年4月に比べ、改訂後の96年4月は、外来は7.2%、入院は4.8%それぞれアップした(患者一人1日当たりの点数)。
薬剤比率を下げるためには、医薬分業の実施、在庫管理の徹底などによる在庫削減、処方のあり方の見直し、後発品へのシフトといったようなやり方がある。分業や後発品シフトは、現状では体制が整わなかったり、その是非も意見が分かれる。一方、程度の差こそあれ、在庫の削減、処方のあり方の見直しは、どんな施設でも取り組むべきテーマだ。

卸一社に絞りバーコード管理実施

恵寿総合病院では、医薬品卸の一本化と在庫管理システムの導入で、在庫の削減に成功した。95年10月から取り組みを始めた。
既に、医療材料に関しては、94年12月からSPD(Supply Processing and Distribution)と呼ぶ方法を導入、購入・在庫管理を一社に外注することによって、効率化を図った。95年5月からは、臨床検査も1業者に絞って外注化。「“モノ”が関与する部門の合理化を進めると、当然、医薬品に着手することになる」と神野氏は語る。
「SPDの考え方を応用した医薬品管理システムを、卸と共同開発したかった。主な取り引き卸は8社があったが、1社に絞ることが必要だった」(神野氏)。システム開発の提案と同時に、支払サイトを6ヵ月から3ヵ月に短縮することも約束した。
約1200の在庫品目の絞り込みは行わない方針だったため、一本化した卸がメーカーと新規に取り引きを行う必要などが生じた。卸がメーカーとの仕入れ交渉に難航した場合は、神野氏が直接、メーカーと話し合いもした。こうした苦労を重ねて、実施に至った。卸の一本化で発注業務は激減した。
薬剤管理 バーコードの活用と医薬品の小包装化を特徴とする在庫管理システムは、以下のようなメリットを発揮している。
卸から納品された医薬品は、例えば、1包装1000錠を100錠10包装にするなど小分けした後に、個々にバーコードを添付する。薬品倉庫の入り口と出口にパソコンを設置し、入庫、出庫時にバーコードを読み取らせる。
小包装化で、薬品倉庫から各病棟への少量配送が可能になり、病棟在庫の大幅な削減につながった。
購入伝票は薬局倉庫への納品時に切られるが、卸への支払いはバーコード読み取り機を通過させた時点で発生する。使用しなかった在庫に関しては、期限切れになる前に、返品伝票で処理する。期限切れが生じなくなり、私蔵在庫をなくせる。
このような新システムの導入で、病院全体で見た在庫量は約3分の1にまで減少した。出庫時には、使用場所も入力する。どの部署で利用したかすべて把握できるため、薬剤の保険請求漏れを医事課でチェックできるというメリットもある。
来年4月には、オーダリングシステムを構築する予定だ。その結果、在庫管理システムを請求事務と連動させることも可能になる。


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