病院1998年6月号リエンジニアリングの展開と患者本位の診療体制づくり 病院6月号月刊「病院」(医学書院発行)1998年6月号

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リエンジニアリングの展開と患者本位の診療体制づくり



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かって北前船の寄港地として賑わった七尾港は海の交易により情報の発信基地として栄えたが、今、地域の活性化のために様々なイベントがもたれている。
このような街の医療を担う医療機関として、医療経営の新しいあり方を能登半島から発進しているのが恵寿総合病院である。

「いつでも」の創業精神

恵寿総合病院は神野正博減理事長の祖父神野正隣氏が昭和9年に神野病院として創設したことに始まる。昭和39年には現会長の神野正一氏が継承し、42年には医療法人として恵寿病院と改称。その後十数年は多くの民間病院と同様に増改築を重ね成長してきた(昭和57年に恵寿総合病院と改称)。病院創業以来、「いつでも、誰でも、たやすく安心して/診察を受けられる病院にする」ことをその精神としてきた。
神野正博現理事長が院長に就任したのは平成5年4月、このときには、現有の関連施設の多くはすでに開設されていた。

患者本位の診療

当院は「地域医療の充実」をモットーに、いつでも断ることなく診療する「患者本意」の病院であることを目指し、診療面での整備に努めてきた。その結果、日本内科学会や日本外科学会など11学会の教育関連施設としての認定を受けている。
病院:心カテ 特に救急医療に対応するために当直医・拘束医による緊急体制で、24時間の診療体制を敷いている。また、救急患者の70%が小児であることから、小児科と産婦人科の医師が常時待機している。
さらに、リハビリ部門から退院患者のフォローまで、その体制を整備してきた。特に、職場や地域に密接した幅広い活動を展開するために地域保険部を設置、検診や在宅医療、訪問看護などを担当している。

リエンジニアリングの展開

当院のQC(quality contorol)活動は昭和63年に「ふれあいサークル活動」として導入され、本年までに20回の発表大会を実施している。
神野理事長は医業経営に関して、「一般企業を範として業務の見直しや改善に取り組むべきである」と考え、「質とやる気を落とさないリエンジニアリング」を試みてきた。その主な動きは、 昨年10月からオーダリングから看護支援、人事管理に至るまで240台の端末とサーバーで統合された。これにより、全スタッフが「必要な情報を必要な時にいつでも簡単に引き出せる」ようになった(KISS=Keiju Information Spherical Systemと呼ばれる)。
外来患者は受付で、患者の基本情報が保存され、IDとしてひとつのバーコードが与えられる。それ以後は診察時や検査時もバーコードを読ませるだけで必要な情報が画面に表示される。また、診察や処方、検査の内容は各患者情報として記録され、同時に検査などのオーダーはオーダー用バーコードが付けられる。
今後はさらに情報ネットワークづくりを推進し、関連の田鶴浜、鳥屋の2診療所ともコンピューターネットワーク専用線でつなぎ、本院と同様な情報を共有する計画である。

21世紀に向けて

病院:看護 「病院のミッション(使命)は病気を予防し治すこと」にあり、「医療の基本は患者さんの心と体の痛みを知ることにある。確かな技術と、それを活かすチームワーク、そしてあらゆることを支える思いやりの心を大切にしていくこと」が重要であると神野理事長は強調する。
その一つが地域との協力関係の強化である。隣接する町に開設されている田鶴浜および鳥屋の二つの診療所と関連施設の強化、さらに独自の方式による地域の医療機関との医療機器の共同利用などがあげられる。
「先代が根をはり、幹を太くしてきたこの病院で21世紀の新しい医療の花を咲かせることが自らの役割である」と神野理事長は明日への抱負を語る。
病院:訪問 地域保健部による訪問診察・訪問看護
病院:和光苑 老人保健施設和光苑:痴呆性老人専門棟デイルームにて

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