院内にコールセンターを設け、系列の診療所や介護施設の情報を一元管理し、患者一人ひとりに合ったサービスを提供しようと、CRMに乗り出す病院が出てきた。
石川県七尾市にある、恵寿総合病院では、周辺にある系列の診療所や介護施設と病院をオンラインで結び、患者情報をデータベース化して一元管理している。2000年6月には、院内に「けいじゅサービスセンター」の名称で、コールセンターを開設した。5名のスタッフが、患者からの介護に関する問い合わせや相談、訪問介護・看護・リハビリ・診療の予約・変更などの受付から、介護記録や健診結果の入力までを実施。情報を一元管理すると同時に介護ヘルパーの事務作業軽減に努めている。
同センターではこの他に、リウマチで自由に動くことができない在宅患者に対して、30分後とにテレビカメラで安否確認するサービスや、在宅心電図サービスも行っている。
「3時間待ちで3分診療」と揶揄されたり、診療に関する説明不足や横暴な態度など、病院に対する不満は多く聞かれる。医療機関に対して、医療の質の向上が求められる中、CRMとまで行かないが、顧客満足度ならぬ“患者満足度”の向上に取り組む動きもある。
山梨医科大学医学部附属病院では、2000年4月から患者満足度調査を実施している。調査方法はアンケートによるもので、その月に退院した患者全員にアンケート票を郵送。回答後、返信してもらう仕組みだ。アンケートの内容は、治療にあたった主治医や看護婦について、病院施設についてなど、29項目に及ぶ。
2000年4月から2001年3月までの退院患者は6,803名。このうち、約53%にあたる3,577人から回答を得ることができた。結果は、4半期ごとに統計を取り、各診療科、病棟、部門にフィードバックしている。
こうしたことが行われるようになった理由としては、ITの進化により医療システムが改善され、院内の薬局での待ち時間が短縮できるようになったなど、顧客満足度向上を推進しやすい環境が整ってきたことがある。また、医療制度改革によって、経営やサービスの改革を迫られていることも挙げられる。現在、「どこの病院で受診したらいいのか」など、医療関連情報の不足が問題となっているが、規制緩和が進み、情報公開がなされることで、患者が病院を選べるようになる。その結果、得意分野など特色を打ち出せなかったり、信頼を得られない病院や福祉は、淘汰されると考えられているのだ。これは一般企業と何ら変わりはない。医療はサービス業であるにもかかわらず、一般企業では当たり前のことがなされていなかったのである。今後は、コンサルティングの需要も高まるだろう。2000年5月には、三菱商事(株)の100%出資によるライフタイム・パートナーズ(株)が設立され、医療・福祉向けのコールセンター事業を展開している。
今後、医療・福祉の分野では、恵寿総合病院で実施しているような遠隔診療や、医師と患者がインターネットを経由して診察結果などをやり取りするネットワーク医療が普及すると見られている。加えて、地域の医師間で情報を共有して行う地域治療も活発化するだろう。また、ある健康保険組合では、組合員に代わって、コールセンターで人間ドッグの病院探しから予約といった一連の手続を行うサービスを提供している。
このように、いまやコールセンターは、患者と医療・福祉施設の橋渡し役として、新たな役割を担いつつあると言えよう。