ジャミックジャーナル 2000年2月号:介護保険サバイバル ジャミックジャーナル 2000年2月号

特集:介護保険サバイバル
直前レポート

気になる動きと話題をチェック


ジャミックジャーナル 2000年2月号

  4月のスタートが間近に迫った介護保険に向けて、今も各地で活発な動きが展開されている。
  病医院では療養型への転換や在宅サービスの整備・強化等が盛んに進められているが、その方向性はサービス機能の付加により複合化を図るものと、他の医療機関あるいは民間企業等との連携をベースにネットワークかを図るものとに分かれる。いずれの戦略にしても、介護保険スターと前にどれだけ患者を囲い込めるかがカギになるのは間違いないだろう。
  一方、在宅介護を中心とする民間企業のシェア競争は第一のヤマを超えた感もあるが、昨年秋頃からは業務提携の推進という新しい動きが活発になってきた。新聞のニュースを拾っただけでも、業界最大手のニチイ学館と日本生命が提携を結んだり(昨年11月5日付日経新聞朝刊。生損保業界の介護ビジネス参入は目覚しく、第一生命が子会社を設立して在宅介護に進出したほか、三井海上がジャパンケアに資本参加するなど多様な形が見られる)、またコムソンの所属するグッドウィル・グループが4月1日付で日本介護サービスを買収する(昨年11月16日付日経産業新聞)など、大きな動きが見られる。すでにシェア競争下での淘汰が起きている今、将来的にこうした民間企業グループ化が問題になってこよう。
  そこで、目前の介護保険サバイバルに向けて、本取材を行った昨年11月中旬〜12月初旬時点での気になる動きをレポートする。実は介護保険サバイバルの勝ち負けは、もうこの時点でおおかたついているかもしれない……。
  また、介護保険で注意したい話題として権利と契約の問題がある。円滑かつ適正なサービス提供という観点からも大きなテーマとなるが、特に福祉は措置から契約へ大転換となるだけに、この意識は重大だ。そこでクローズアップされる契約書の存在である。東京都や弁護士会等でも利用者保護に向けてモデル契約書をまとめているが、どれだけの事業者が適正な契約のフレームを用意しているだろうか。さらに、昨年12月に成立した成年後見制度が介護保険と同時に4月からスタートする。この問題は今後の高齢者会で大きな焦点の一つとなってくるので注意してもらいたい。


REPORT1
時間切れ間際の介護保険対策
各自の取り組み状況はどうか

(恵寿総合病院グループ以外の記事は本誌をご覧ください)

地域密着型のサービス展開!
サービスの多機能化を進める福寿会グループ

    (略)

ヘルパーステーションの設置で在宅を充実!
機能のバランスを図った醫光会

    (略)

まずは施設を整え、ゆっくりと在宅へシフトさせていく!
地域性の変化を見守る今井病院

    (略)

自己完結型のサービス提供!
フルメニューの提示により差別化を図る恵寿総合病院グループ

  グループ化と逆に独自の方向に進む病院もある。454床の恵寿総合病院を中心に2つの診療所、2つの老人保健施設、また特別養護老人ホームやケアハウス等を有する恵寿総合病院グループ(石川県七尾市)は、介護保険に向けて医療法人と社会福祉法人のサービス機能を統合し、「けいじゅヘルスケアシステム」として新たな体制づくりを図っているが、その基本姿勢は自己完結型のサービス提供にある。法人機能の統合は、そのための手段である。理事長の神野正博氏は次のように話す。

  「介護保険制度により、今後、福祉制度はそれまでの弱者救済から医療同様に保険による権利へと変わっています。また、介護保険下では従来の医療・福祉制度の整理・統合とともに、新しい制度や事業が生まれてくるでしょう。そうしたなかで、私ども恵寿総合病院グループの使命は、地域住民の皆様に安心して過ごしてもらえるよう、医療や介護が必要になった時にあらゆるメニューをご提示できるようにしておくことです。そして、それらをより効果的に提供していく体制づくりとして窓口の一本化を図りました」

  具体的には両法人が有するメニュー、外来や入院、入所、また病院の訪問看護やヘルプ事業から福祉法人の訪問入浴や配食サービスまで、あらゆるサービスを一体的に提供するための総合窓口を恵寿総合病院内に設置し、現在54人の介護支援専門員を配している。ここで総合的な相談対応からケアプラン作成までを担っていく。

  「私どもの地域でも、医療法人や社会福祉法人、さらに民間企業など各サービスごとに競合他社が多数います。そうした競争相手に打ち勝っていくためには、何らかの差別化が必要となります。そこで私どもの強みが何かと考えたとき、医療法人と社会福祉法人とで持つ多彩なサービス・メニューだったというわけです。要はハードでなく、ソフトで勝負していこうということです」(神野氏)

  それこそ生まれてから死ぬまで医療や介護で何らかのサービスが必要となった時はすべて提供できますよという考えだが、このメニュー作りは今も進められていて、4月には穴水町にもう1つ病院が設立される。これは143床の療養型病床群となる。5月には療養型病床と救急センターを擁する増築棟も恵寿総合病院に完成する。また、昨年9月に特別医療法人の認可も得ていて、今後の収益事業の展開も期待でき、より多彩なサービス・メニューの構築が進められていこう。さらに、今後の展望について神野氏はこう話をしてくれた。

  「ベッド等はすでに過剰になっていますので、今後は施設としてはシルバー向けのマンションやアパートの整備を、ソフトとしては医療から介護までをトータルにサポートするソフトウェアの開発を考えているところです。特にソフトウェアの開発は有力なものになるでしょう。インターネット・トレーディング等を見ていますと、顧客の取引履歴というものがあるのですが、今の医療や福祉のソフトにはこの発送が足りません。ケアプラン作成のソフトはケアプランだけ、診療支援のソフトは医療だけで完結しています。すべて個別のソフトしかないのです。もっと患者を軸にして医療や福祉など各段階の取引履歴がわかるソフトを開発すれば、より効果的に各自のライフステージを支援していくことができると思います。こうしたシステムの担保として、すでに各関連施設間を専用線でオンライン化してありますし、今後はオンライン化を自己完結のみならず、協力可能な提携施設との間でも視野に入れていくつもりです」

  ここでフルメニューの強みを生かしたシェアの獲得をどう見込んでいるか神野氏に尋ねてみた。しかしこれには明確な数字を出すのが難しいとの回答だった。というのは、たとえばシェア獲得の目安の一つとなる介護申請の代行でも、市町村によって対応が大きく違っているのだ。七尾市はすべて市が申請を行うという方針なのに対して、隣の田鶴浜町はすべて同グループに任せている。訪問ヘルプも自治体の委託で限定的に行っているため、そのうちのどこまでが介護保険での利用につながるかは不明。こうした状況のため、実際に介護保険がスタートしてみなければ具体的な数字は見えてこないと話す。それでも、「入所者の定員など実際に許容できる範囲は決まっていますが、あくまでも100%の獲得を目指すつもりでがんばりますよ」という意気盛んな言葉に強い自信を感じることができた。

けいじゅヘルスケアシステム

目指すはシェア競争ではなく協調!
介護システムのあり方を追求するコムソン鹿児島

    (略)

在宅の入り口に立っただけ!
ニーズとノウハウ収集のため訪問看護に乗り出したSRL

    (略)

眠れる獅子はいつ目覚めるのか!?
介護保険対策に地域で温度差がある厚生連

    (略)

REPORT2
介護は権利と契約の世界へ!
円滑なサービス提供に向けて

    (略)

報道記事目次に戻る