ジャミックジャーナル1998年7月号 月刊「ジャミックジャーナル」1998年7月号

特集:特別医療法人の創設をめぐって
立場によって異なる関心度


ジャミックジャーナル1998.7

記事

疑問と期待が入り乱れる特別医療法人の誕生だが、その推進は各医療機関の関心度によって違ってくる。しかし、評価は医療機関の立場によって大きく異なる。

ビジネスチャンスの到来

まず、前向きに評価する声の第一は収益事業が許可されたことにある。これについて、今回の特別医療法人の設置は病院経営にとってビッグチャンスになるものと語るのは特定医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長・院長の神野正博氏だ。

「医療費削減で締め付けられてきた病院経営にとって、収益事業が認められる特別医療法人の誕生は大きなビジネスチャンスになると考えます。駐車場や公衆浴場・クアハウス等はハードがないとできませんが、こうしたモノを持たない私どものような病院でも、ノウハウを蓄積しソフト(頭)を使って様々な事業が展開できます。それはまさに、病院経営のフランチャイズ化、ボランタリーチェーン化の幕開けがようやく到来したといえるでしょう。
具体的には、直接販売できなかった補聴器やサポーター類あるいはドリンク剤などの医薬品の販売、さらには私どもで取り組んでいる情報システムについても他の医療機関へ販売できるほか、経営に対するコンサルタント業も行えるようになりました。
また、介護保険のスタートと関連していえば、介護関係機器等の販売はもちろんのこと、配食サービスや患者の搬送業にも乗り出すことが可能です。もともと病院は地域のどこにそういうニーズがあるかを把握しており、マーケティングの下地ができているわけですから事業性は大きいです。
それに、病院の本業に派生する事業について、これまでは他の業者に委託するしか仕方ないと思われていたことが自分たちでできるというのは、経営的にプラスなのはもちろん、病院が全体的に責任を持つことができるという意味でもいい方向だといえるのではないでしょうか。
こうした事業を展開するには、各病院の経営戦略が問われるようになります。正しく、医療ビッグバンが待望される今、病院淘汰の時代に突入した病院経営にとって、今回の規制緩和がひとつの分岐点になるように思います」

こう評価する神野氏だが、特定医療法人と特別医療法人がどう整理されるのかで取り組みは変わってくるため、今後示される具体的な移行の条件に注目したいとつけ加えている。

一方、同じように収益事業を規制緩和の推進と評価する医療法人社団慶友会吉田病院・理事長の吉田威氏だが、現時点ではとりあえず静観したいと話す。

「一般的に見れば収益事業が認められた特別医療法人の創設は非常にいい方向に進んでいるものと評価します。今は医療の中心にいる人たちが苦しい立場に追いつめられ、周辺の医療産業が潤っているという状況にありますから、そこに病院のビジネスチャンスが広がることは大きな前進といえるでしょう。
しかし、私どもとしては自由診療部分を伸ばしていきたいと考えており、残念ながら現状では特別医療法人の条件はあてはまらないと思います。今の状況でも健康診断部門を別組織にしてやれば特別医療法人への移行は可能かもしれませんが、それでも収益の20%未満などシバリが厳しいですから、もう少し今後の展開を見て判断したいと思っております」

やはり、20%制限はかなりのマイナス要因となっている。そのため、吉田氏のように今回の収益事業の許可を規制緩和の第一歩ととらえ、今後の拡大を期待している人も少なくない。

公益法人誕生への期待と関心

営利・非営利が曖昧!


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