隔日刊「Japan Medicine」2001年4月9日号

ワイド企画<医療機関の広報・広告活動>
模索続く医療機関の広報活動

インターネット活用中心に

ホームページのリニューアルで病診連携さぐる−トヨタ記念病院

先駆性で利用者ニーズにこたえる−恵寿総合病院

「患者の選択」を重視−新長田眼科

専門性のアピールに期待する−畑内科クリニック


(記事)

広告としては機能しないインターネット

 1996年3月に、いち早くインターネットホームページ(HP)を開設した特別医療法人財団董仙会恵寿総合病院(石川県七尾市)は、昨年11月に健康情報や病院の取り組みを配信するメールマガジンを発行するなど、ネットを利用した先駆的な情報発信を続けている。見る人を「飽きさせない」ために、こまめな情報更新の必要があるHPを広報ツールとして活用するうちに、情報発信に対する職員の姿勢もいっそう積極化してきた。今は「自己満足」敵な側面もあるが、今後は、HP上での検査データ閲覧や、診療予約への発展を視野に入れた健診予約の実施など、利用者の利便性を高める方向で充実させたい考えだ。

 同病院(454床、1日平均外来患者数約1100人、一般病床の平均在院日数約19日)の最初のHPは、神野正博理事長兼院長の自作。旧厚生省の「HPは広告にあたらない」とする見解に配慮した上での開設で、神野理事長は「開設に深い意味はなかった。案外簡単だと思った」と振り返る。日本でようやくインターネットが騒がれ始めたころで、同病院のHPは「おそらく日本で10本の指に入る」(神野理事長)ほど早い。

 HPのメンテナンスは、10年程前に設置された院長直轄の広報課(専任1人)の担当。4月からは原価計算システムなどの運用管理を行う法人本部企画開発家内に統合された。院内で手がけているのは、あか抜けたデザインにするには外部委託が望ましいものの、県内からのHPへのアクセスは5〜6%にとどまるため、委託料に見合う広告効果が期待できないのも一因だ。

 神野理事長は、「患者は、all of Japanではなく地元住民。広告なら新聞、電柱、駅の看板やバスの車内アナウンスの方が効果がある」とし、HPは増患対策にならないと話す。その考えからもHPは、広報誌、メールマガジンなどと並ぶ広報ツールのひとつに位置づける。HPを通じて病院のネームバリューがあがれば、副次的効果として増患もありうると見ている。

お見舞いメールもショッピングも

 99年2月に独自サーバーを設置して以来、入院患者へのお見舞いメールの受付やメールマガジンの発行など先駆的な試みも始めた。健康情報や病院の取り組み、院内にある介護福祉ショップの商品紹介などを配信するメールマガジン「けいじゅ健康通信:For You」の購読者は約100人。HP上での購読申し込みのほか、診療申込書にもメールアドレスの記入欄を設けて、希望者に配信している。

 サーバー2台への初期投資以外にHPの運用にかかる費用のほとんどは、月刊2.8万円の回線使用量。HPの内容を更新するために、職員が新たな取り組みを考えたり、情報発信の視点で院内を眺めるようになった点で「極めて安上がり」な投資だと評価する。また、求人情報もHP上に掲載しており、学生を中心にうまく活用できる可能性もあるとみている。

 HPのコンテンツの中には、中断したものもある。97年から2年ほど行っていたメールによる医療相談がそれ。数が増え、1日5〜6件の相談に対応しきれなくなったのと、標榜していない精神科的な相談内容が増えてきたのが理由。セカンドオピニオンを求める相談も多かった。現在はプライバシーに関係ない部分で作成したQ&A集をホームページ上に掲載するとともに、ほかの相談窓口を紹介している。

地域全体のインフラ整備が重要

 今後のHP活用法については、患者の利便性を高める方向を考えている。HP上で検査結果を閲覧できる仕組みの検討を進めているほか、健診予約の導入も視野に入れている。ただ、同地域にはCATVもないなど、IT関連のインフラ整備が遅れがちで、神野理事長は1病院単位での取り組みの限界も指摘する。

 また、手術件数や治療成績データは利用者の病院選びに役立つとして、広告規制対象外だからこそできるHP上での情報公開を前向きにとらえている。一方では、医療機関のHPが増えていく中で、利用者のHPを見る目は厳しくなり、将来はそれらのデータを「出さざるを得なくなる」と予測した。

 医療連携へのHP活用については、患者の紹介に電子メールを使うことはあっても、1)空将情報派遣のシステムを利用している、2)医療機関の診療機能を記した冊子がある、3)インターネットを利用する開業医がまだ少ない−などの理由から、現時点ではあまり重視していない。

 一方、神野理事長は、第4次医療法改正に伴う広告規制の緩和は「単なる追認」と認識している。同病院では、今後の新聞広告に医療機能評価認定病院を加える方針。すでにHPでは、評価内容をすべて公開している。また、医師の略歴については、開業医はまだしも、多くの医師が勤務する病院が広告するには、コストと広告スペースとの兼ね合いで、難しいとの考えを示した。


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