共同通信配信2001年5月(全国地方紙)

特集:2001年暮らし

医療再生への道

第2部・岐路に立つ病院 5


生き残りの道模索

市場開放で企業参入も


(記事)

 能登半島の付け根にある石川県七尾市。恵寿総合病院(神野正博院長、454床)は、1999年に収益事業ができる「特別医療法人」の認可を受けた。

 院内には24時間営業のコンビニや露天風呂がある。「院長先生、今度の風呂は最高だね」と患者から気軽に声が掛かる。

 また、治療経過や退院予定日などをパソコンに入れた「電子クリティカルパス」を導入。患者自らがチェックできるサービスを提供している。

 神野院長は特別医療法人の認可を受けた理由について「普通の医療法人では、院長の家族らが医療器具や寝具を取り扱う同族会社を設立し、病院が赤字でも同族会社でもうけている。世間はこのような経営手法をもう許さない」と説明する。

 国の医療費抑制策でどこの医療機関も経営が安定しないで悩んでいるが、同病院のように特別医療法人化や医療の質を向上させることで局面の打開を図る病院はまだ少数だ。

 日本の医療制度は世界でも特殊な存在である。国や自治体が勘負数や病院のベッド数まで厳しく規制しているが、医療の質はあまり問わず、原則として民間企業の参入を認めていないからだ。

 特に病院評価制度は情報提供などが不十分で、欧米のように患者が病院を選ぶ判断材料になりにくいと指摘されてきた。

 その一方で、国民医療費が年間30兆円にも達し、保険財政がパンク寸前で何年も前から制度の抜本改革が叫ばれながら先送りしてきた。

 だが、今年2月、経済産業省の産業構造審議会部会が営利法人などへの市場開放を提言し、日本医師会などに衝撃を与えた。

 2年前、東京・銀座に日本事務所を構えた米国民間病院チェーン顧問フレッド・F・マコーレイ氏は「日本の市場開放は米、金融、保険まできた。医療だけが例外でいられるはずがない」と自説に自信を見せる。日本の医療を取り巻く状況は内憂外患そのものだ。

病院入り口に開設された24時間営業のコンビニ。患者サービスも医療の質向上のためには欠かせない=石川県七尾市

(岐阜新聞より)


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