大学病院事務のY氏からいただきました

病院の管理について


2005.12.7着信

 某大学病院事務部のY氏から頂戴しました。

野正博先生

はじめまして、○○大学病院の(事務部)Yです。

 今ままで、医療経営に役立つ情報を雑誌等で読ませていただいておりましたが、先日、神野正博による医療経営のホームページを拝読させていただき、医療経営者の医業経営の取り組み・考え方を学ぶことができ、仕事に役にたせていただきたいと考えメールをしました。

私は、大学を卒業して、厚生省病院管理研究所(現国立保健医療科学院、管理専攻科修了)で一年間学び、現在、○○大学病院(事務部)に勤めています。そして日本病院会、病院経営者養成課程通信教育、病院物品管理担当講師をして、物品管理・物流管理の戦略・経営管理の戦略・部門別原価計算による施設経営・運営・管理の効率化に関する研究と高齢社会に向けての予防・保健・医療、福祉機能の経営管理等に関する研究を、研究所同窓生と連携して勉強しています。

私は、病院物品管理分野を主に研究しています。

 

最近の病院物品管理・物流管理は、病院経営安定・効率化コスト削減に大きな重要性が占められて、生きた学問を学生・経営者・管理者等に学ばせるため、病院経営の教育をコンピュータに取り組み、実際の病院データに基づいた教育カリキュラムに病院経営(物品管理)実践指導を取り入れ、医療福祉ビジネス病院・施設・企業と連携に生かしていかまければならないと考えます。

しかし、私も、今まで、多くの物品管理の効率化等を提言してまいりましたが、現実、病院の業務改善。改革は、専門職群の聖域にあり、企業経営の仕組みを取り入れることが厳しい環境状況にありました。

 

05年7月24日付けの朝日新聞に経済産業省が、厚生労働省と協力して、医療実務に精通した「病院や医療法人の経営者を育てる教育プログラム作り」に乗り出し、18年度からの実施を目指す記事が掲載されていました。
  (注:厚生労働省 医療経営人材育成事業について 参照と第1回医療経営人材育成事業運営委員会議事要旨参照)
プログラムの内容に、(1)地域医療での位置づけを設定したり、他の病院・診療所との連携を考えたりする事業戦略(2)人員配置体制など組織・人事管理(3)財務・会計管理や資金調達方法(4)ブランド戦略などのマーケティング(5)物流管理(6)リスク管理――などの項目が想定されているようです。
 実施(18年度以降)にあたっては、開発した教育プログラムを用いて、大学や関係団体と連携した医療機関の実態に即した、より実践的なカリキュラムや教育コンテンツ(ケーススタディ)を考えているようです。そして、病院長・医療法人理事長向け、事務長向け、診療所向けなどコース別のプログラムも検討する方向性にあるようです。
 これから病院の経営者・管理者等は、大学の医療経営学科のカリキュラムにも、経済産業省が、医療実務に精通した「病院や医療法人の経営者を育てる教育プログラム作り」を取り入れた教育コンテンツ(ケーススタディ)が必携と考えます。

 

私の「病院や医療法人の経営者を育てる教育プログラム」=カリキュラム教材案(物品管理論・物流管理論等のシラバス)は、当大学病院で38年間働いてきた中で築きあげた「病院経営の実践的に生かせる教育コンテンツ」であると自負しております。
 今後、物品管理論・物流管理論の教育コンテンツを主に医療福祉ビジネス系統の医療業務(医療経営に部門別原価計算・医療機能評価を取り組んだ仕事)の実践学が求められて行く時代と考えています
 

来年、この病院医療業務に従事した体験・経験(実践学)を、教育。研究に生かした(某医療大学に相談中)仕事を考えております。

実践的な部門別原価計算(部門別原価計算と連動した無在庫管理技法)を病院経営(コンピュータ会社・公認会計士と連携した部門別原価計算プロジェクト)に取り入れて生きた学問を学生・経営者・管理者等に学ばせるため、実践教育資料を提供して医療ビジネスにつなげられればと考えています。

 

 

病院の原価計算の取り組みは、原価計算のレベル・知識度が、どの位置(経営者・管理者や医師・看護師・コ、メディカル・事務員等)にあるか把握・認識した上で、その病院のレベル・知識度にあった@総合原価計算方式・A部門別原価計算方式・B診療科別原価計算方式・C疾患別原価計算方式・D疾病別原価計算方式へと、段階的に移行した仕組みで費用(人件費・材料費・経費)データの抽出・収集を図ることが大切であると考えます。

恵寿総合病院の原価計算の取り組みは、いかがですか。

 

私の物品管理の基本的な考え方について

 

昨今、厳しい医療費抑制策の中で、物流業務効率化は、部門別原価計算の基礎情報データを基にした導入前の物流業務と導入後の費用対効果の比較分析((ムリ・ムラ・ムダの費用削減)をした取り組みの選定検討が必要であると考える。

従来、病院は,多くの取引業者に医薬品・医材料等を、それぞれ注文・発注をして、多くの労力と時間を費やしていたものを、統合して、全ての物品の注文・発注デ―タを一括して把握(発生源入力)する仕組みを作り、その情報と物流部門も共有できるようにモノの流れをコンピュータで一元管理化してきた経緯がる。

物流業務効率効果を示すには、モノの観点だけの経費削減でとらえずにストックからフロー(モノ・ヒト・カネ・情報)でとらえた費用対効果分析(期待効果:定量効果)が必要である。すなわち、部門対部門・業務対業務間の重複するムリ・ムラ・ムダのモノの流れを結びつけてランニングコストや在庫額・人件費(業務委託料含む)等の削減を図ることが効果的である。

それには、既成概念(現在業務委託等)にとらわれずに導入前の物流業務の分析は、モノの観点だけでとらえずにストックからフローでとらえた費用対効果分析が必要である。

更なる費用削減の効果は、地域病院との連携した共同購入システム構築(購買部設置)をすることにより物流業務(各病院は物品管理=入庫・在庫・使用に専念)のレベルアップが期待できる。。

物流統計情報デ−タ抽出は、物流管理の費用対効果が正確に把握《病院経営収支状況=部門別原価計算の基礎情報データ》できるようにする仕組みの構築にある。

部門別原価計算や疾病〔疾患〕別原価計算《診療報酬体系のオンライン化=DPCのコスト計算に反映》仕組みは、段階的に物流統計情報デ−タ抽出にも取り入れる傾向にある。物流統計情報デ−タの費用対効果が、正確に把握できる計算の仕組み(注;ITを駆使した電子カルテシステムに取り組む一元管理化)にすることにより患者サービス向上にもつながる。

現在、各病院の物流管理の仕組みは、三病院三様で、効率性・費用削減効果・物流統計情報デ−タ抽出等を標準化のうえ有効活用すること。それには、一定のルール(費用対効果分析=部門別原価計算)を統一設定して病院の物流管理に取り入れる配慮が必要かと思います。

 

私の病院経営(物品管理)のあり方・学生教育についてと考え方と基本的な病院経営戦略の考え方について(追伸;私見)述べさせていただきました。

これからも、神野正博による医療経営のホームページを拝読させていただき、医療経営者の医業経営の取り組み・考え方を学んで、病院経営に生きた実践学を取り入れる手助けをしていきたいとおもいますのでよろしくお願いいたします。

 

追伸;基本的な病院経営戦略の考え方について

 

基本的な病院経営戦略の考え方について

 

厳しい医療費抑制策の中で、病院を維持・存続させていくには、患者から信頼される、より優しい質の高い医療を提供できる病院経営の基礎知識と組織形成の仕組みを理解することにある。

 この経営の質向上の組織体制を経営者の自己責任において実施していくには、外部環境・内部環境の変化に対応した病院の経営戦略が求められるが、ここでは、主に内部環境の病院経営戦略について展開していくこととする。

 病院経営戦略とは、経営者(理事長・病院長)が病院理念を基本にした経営の目的を達成するために病院の進むべき方向性を明らかにし、その実現手段としての経営方針を示すことが重要である。                 

 その経営方針に従い中長期の目標計画を組織部門単位で、医師・看護師等の全職員に公表することから始める。、

そして、まず、経営方針に基づき各部門長(責任者)は、病院理念・経営方針・中長期の目標計画を理解、認識した上で、バランスト・スコアカードによる「財務の視点」・「患者の視点」「業務プロセスの視点」・「人材と変革の視点」の“4つの視点を用いて、前年度目標実績を基本に各部門で実現可能な目標・予算達成の額(目的・工程・手段・手順)を作成する。 

注;前年度目標実績を基本に各部門で実現可能な目標・予算達成額の基礎データは、部門別原価計算の統計情報デ−タの費用対効果が、正確に把握できる計算の仕組みを基調とする。

その成果に対しては、評価・還元の組織構造の仕組みが必要性となつてくる。

この評価・還元の組織構造の仕組みが、全職員の勤労意欲・原価意識を高めて、その結果、病院の利益の確保に貢献することにつながる。

従来から病院(医療事業)は、営利事業ではないという考え方が強く主張され、職員もそのように思い込んできていた経緯がある。現に、医療法にも営利を目的にしての病医院の開設は認められないと規定されている。

 しかし、昨今では、医療も産業であるとの考え方により産業社会の中にあって、現実の問題として医療が経済原則の外側に置かれていることでなく、医療機関(病院)同士の競争は、現実のものとなり、医療費の急増に対する国の抑制政策はますます厳しくなってきている。

また、厳しい医療の変革要因が、次から次へと出現する医療環境の中で、限られた医療資源をどう有効活用するか、「病院経営」のあり方・質が問われるようになってきている。

患者を中心とした組織的な「医療経営体質の変革」には、(財)日本医療機能評価機構の病院機能評価を受審し、評価を受け、その結果、明らかとなった問題点・課題の改善は、組織体として、自ら認識して、診療部門・診療協力部門・事務部門の一致団結した機能の充実・向上の改善・改革の病院経営戦略が求められる。

「病院機能評価」で要求されている事項は、これからの医療機関が生き残るための達成すべき経営管理基本必須項目である。

従って、病院経営に携わる理事長・病院長・職員にとっては、その経営を取り巻く環境変化に適切に対応し、その変化の中でチャンスを見つけ、病院を維持・存続・成長させる「病院経営戦略」が重要視されてきている。

病院経営戦略には、変化を予測し、事前に対応策をとることも併せて大切なことである。

つまり、医療の質を落とさない効率経営(ムリ・ムラ・ムダの除去)の中で、患者から信頼されるより優しい質の高い医療評価を受ける経営努力で安定的な利益を確保し続け、かつ短期的・長期利益の確保に努めることにある。

この病院経営を適切に運営させ永遠に継続させていくためには、全職員が病院理念を基本に経営者(理事長・病院長)の指揮・監督に従い一致団結した成果主義・能率主義の仕組みを取り入れた業務管理活動が重要となつてきている。

すなわち、この厳しいサバイバル時代の病院経営を、いかに維持・存続・発展させていくには、経営者・管理者の病院経営戦略の手腕と職員の自助努力が問われる時代である。

 


2005.12.7発信

Y様

 私のホームページをご覧いただきありがとうございます。最近、更新が少なくなっており、申し訳なく思っています。

物品管理について

 平成6年から三菱商事と共同でSPDシステムを構築。現在同じ仕組みが124病院,約52,000床まで増えております。現在はこの三菱チャンネルのほかに、もう一つ別のチャンネルを利用した共同購入事業が動いております。最近はITタグ(経済産業省へも補助金申請)の研究のほかに、IT化した物品棚(物品管理と同時に電子カルテの実施入力に連動)の共同開発プロジェクトも開始されています。

原価管理について

 診療材料ばかりではなく薬剤のSPDとこれらの電子化を基盤として、患者一人1日別原価管理システムを構築いたしました。あくまでも出来高に基づく原価管理であるため、現在DPC対応を外部組織と模索しております。

人材育成プロジェクト

 経済産業省委託の医療人材教育の方は、その実施担当組織の一つとして全日本病院協会に落ちましたので、こちらの組織の中で教材作製や教育などの実務を担当するように専任されています。ここで吉澤様にご相談するやも知れません。よろしくお願いいたします。

目標管理について

 私どもの組織では、組織目標、個人目標ともに、「財務の視点」、「患者の視点」、「仕事の進め方の視点」、「研修と人材育成の視点」ということで、これらの視点をもとにして病院の年度目標を各部署、各自の目標に落とし込む作業を行い、組織・人事評価に使っております。ここでは、アレルギーを起こしそうなBSCという言葉は敢えて使わない方針とし、表の空欄を埋めていくことで目標を策定していくという形式をとっております。


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