平成9年 | 平成13年 | |
老人1割 | 1,000億円 | 1,500億円 |
老人2割 | 2,900億円 | 4,100億円 |
被保険者本人2割 | 3,500億円 | 4,000億円 |
若年2割 | 1,300億円 | 1,200億円 |
若年入院2割外来3割 | 6,600億円 | 7,500億円 |
若年3割 | 7,000億円 | 7,900億円 |
薬剤3割 | 4,700億円 | 6,000億円 |
薬剤5割 | 9,300億円 | 1兆1,800億円 |
昨年7月に、「国民負担率」70%を誇る(?)福祉先進国のスウェーデンのスィードブ貿易大臣(通産大臣)が、私の住む石川県七尾市に来訪された。その際に、スウェーデンの福祉政策について直接お話を伺う機会を得た。スウェーデンでも社会保障負担が重要な問題であり、年金等の社会保障費を削減させるために、定年を延長しようとしたところ、逆に、若者の失業率が上がるとの予測が出た。そこで、国は現在のところ、失業率を下げることを優先し、社会保障費の率が高くなっても、定年を延長せず、さらに早期退職報奨金(年金)までも導入しているとのことであった。国として、高負担やむなしといった選択をしているとのことであった。
我がニッポンは経済成長率の鈍化がいわれてはいるものの、まだまだ豊かな国である。そんな中で、失業率の問題は大きな問題とはなっていないものの、いずれ産業の空洞化に伴い、この問題が浮上してくるやも知れない。その時に、ニッポン国として、何を優先させるべきかという方針を、国民負担が増えたことばかりを強調するのではなく、十分議論すべきではないだろうか。また、昨秋の総選挙の際にこういった問題が全く議論されなかったことを大変残念に思う。
国の財政で国債234兆円、地方債136兆円、旧国鉄未清算分28兆円などに特別会計を含めて440兆円(国民1人当たり約400万円)の借金があるといわれている。GDPの90%に達するという世界にも例を見ない、最悪の状態なのである。この根元は、リゾート法などでの官民一体となったバブル経済が破綻したことであることは衆知の通りなのである。そして、その後の景気回復策としての公共事業へのばらまき予算、また多額の補助金が傷口を広げたものと思われる。バブルに乗らなかった(乗れなかった)のは、余裕のなかった医療・福祉の世界だけだったのだ。今、バブルのつけが医療・福祉に乗りかかろうとしている。現在の、医療福祉の制度改革議論は、まさに「はじめに金ありき」が根底にあり、弱いところへのしわ寄せが押し寄せてきているように思えてならない。
豊かな国ニッポンが、高齢化社会の訪れと時を同じくして豊かでなくなるかもしれない。すべてのものを追うわけにはいかない。ニッポンが豊かな今こそ、国民は何が重要で、何を優先させるべきかをしっかり議論すべきなのではないだろうか。議論のうえで、福祉は自助努力に期待し、公共事業に金を使うのもよし、医療・福祉といった健康に金を使うのもよし、中途半端な金の使い方は、どれも混乱を招くように思えてならない。今年は介護保健法の議論や、医療費自己負担問題など、21世紀へのガイドラインが決定される重要な年なのである。
そして、われわれ医療機関は、現状に安閑とすることなく、今後図らずも到来するであろう新しい制度の選択肢を整理し、まだ「豊かな」うちに、内部の機構や、今後の計画を適合させていかなければならない時期にきている。今まさに、リストラクチャリングとリエンジニアリングの時期なのではないだろうか。