Medical Management 1997年3月号
そこで、外注業者は一社にする。院内業務は1時間以内に結果が出る項目の検査のみとし、その他は外注する。院内で検査する検査項目と、外注検査項目の結果データは同じサーバーに入れ、両者の区別をなくする。という方針を採り、平成5年12月から各業者と交渉に入った。最終的にこの方針の基で検査室内のすべての検査機器をオンライン化するシステムと外注会社からの電送情報システムを統合し、さらにこれと各診療科・病棟の端末をネットしたLAN(Local Area Network)を構築することがでた。
平成7年5月から運用したこのシステムで電話による問い合わせや人による伝票運び業務が削減されるとともに、検体検査業務の軽減によって検査技師4名を心臓、腹部、脳超音波検査や心カテ介助等専任に振り向け、生理機能検査の増加と検査待ち時間の短縮を見ることができた。さらに、業務量により流動的に検体検査、生理機能検査に人員をシフトできる体制を取ることができた。一社と提携することによるコスト削減効果、さらにはシステム導入費用の低減化にも大きな効果があった。そして、このシステムの導入が次のオーダリングシステムにおける職員のコンピューターアレルギーを軽減させるものとなったことも大きな副産物といえよう。
その結果、平成7年10月、ある一薬品卸とともに薬品庫内の在庫管理システムを構築した。材料同様に小単位に薬品を分け、バーコードカードを添付し、薬品庫出荷時にチェックするというもので、バーコードカードをカウントし、ある発注点に達したところで電話回線による自動発注とした。発注先が一社であること、大包装薬剤や、高額注射剤を箱単位から小分けにしたことにより、著明な発注点の低下をみ、薬品庫内の在庫量は導入前の1/2に削減可能となった。もちろん、一社化に伴った納入薬品の変更は一切行わなかったし、全品目は従来通り安定供給された。さらに、薬品価格のスケールメリット効果も言うまでに及ばないものであった。
オーダリングシステムは、在庫削減、人員削減、経費削減とは直接結びつかず、さらには導入費用まで考えると民間病院の経営上導入に踏み切る決断は容易いものではないと考えられる。しかし、病院のリエンジニアリングを旗印にした以上は避けて通れるものではない。情報の共有化、転記作業の軽減、物品管理業務の軽減ばかりでなく、スピードアップ、職員の余裕や医療内容の標準化など患者サービス面でのメリットを挙げればきりがない。
これまでの診療材料・検査・薬品におけるバーコード管理の流れをそのまま継承し、平成9年1月より、診察券からカルテ情報、医事・看護・給食・検査・薬剤業務、放射線デジタル画像システム、さらには職員の管理までの病院のすべての業務をバーコードに対応したシステムを構築した。院内にバーコードリーダー付きの約230台のパソコン端末の設置が必要となった。
さらに新しい考え方として、インターネットを範として、イントラネットというべき、院内文書の電子メール化、パンフレットなどの診療報酬と直接関係のない分野での院内ホームページと呼ばれる電子ファイリングを実現した。ピラミッド型の情報の伝達から、患者様を中心とした球状の情報の共有化に向けて、新しいシステムを “Keiju Information Spherical System (KISS)” と命名した。今後は、このオーダリングシステムを第1期と位置づけ、デジタル化した情報を統合した電子カルテへの取り組みを次へのステップとしていく。