そして、在庫削減の成果が見え、企業の体質を強化したところで「品質管理」である。この憎いばかりの流れは、われわれ医療機関にとっても、大いに見習わなければならない流れであるように思う。
当院における「在庫削減」の試みは、すでに本誌で繰り返し述べてきた。さらに先月号で、品質の管理をする上で今後の情報化戦略とネットワークが大きなウエイトをしめることも述べた。今回は、スーパードライの戦略に習って、現在と今後の品質管理の話題について整理して考えてみたい。
この4原則からも明らかなように、TQCの手法はトップダウンではなく、ボトムアップの品質管理運動である。現場各部署における小単位のQCサークルは、自部署における業務、患者サービス上の問題点を挙げ、これをQC手法と呼ばれる客観的データを重んじる解析法で解決策を模索し、評価する。誰でも、QC手法にのっとればそれなりの結果を生む出せるといった特徴がある。当院では、この活動から在庫管理、待ち時間の短縮、伝達業務の見直し、サービス改善など数多くの成果をあげてきた。
最近、TQC活動から、撤退する企業、病院が多いと聞く。現場で全く問題点がなくなったとは考えにくい。しかし、閉塞感が出てきていることも事実のようである。というのは、小単位のサークルでの問題解決努力では企業全体のシステムや業務の見直しにつながらないことや、せっかくの問題解決が他の部署で取り入れられない(水平展開できない)ことなどが問題となってくる。さらに、企業や医療を取り巻く環境の変化のスピードはボトムアップを待っていられないという心理が経営側にも働いているようにも思う。
いずれにしても、現場に問題点はなくなるわけでもないし、経営者がすべての現場の業務に精通するわけにもいかない。次に挙げるいわばトップダウンの品質管理活動とともに、TQC活動を存続させていく意義は十分にあると思われる。
当院のQCサークルの活動方針を紹介しておく。
評価の大項目として、@病院の理念と組織的基盤、A地域ニーズの反映、B診療の質の確保、C看護の適切な提供、D患者の満足と安心、E病院運営の合理性を柱としている。 この評価はいわば、高いところに「日本のあるべき病院像」を掲げ、そのハードルにどれだけ近いかによって合否をつけていくものである。
問題点としては、この「日本のあるべき病院像」にアメニティーの充実やカルテや図書の管理などと民間病院として採算性を出しにくい部門も多く含まれていることが挙げられる。贅沢なアメニティーと豊富な非現業職員を擁しているものの、補助金や赤字を公的資金から繰り入れている公的病院で高い評価がつく可能性が十分ある。さらに、評価員(サーベイヤー)は医療職(訪問審査時には診療2、看護2、事務管理2の6人体制)であること、すなわち「仲間内」であること、また、審査の内容は一般に公開されないことなどが挙げられる。実は、私自身もサーベイヤーの一人である。一サーベイヤーとしては、1日のみの訪問審査で、表面的ではない、真の病院の評価が可能か、評価時にあたって心の内にジレンマがあることを追加しておきたい。
しかしながら、旧態然とした日本の医療界においては、大きな第一歩と評価すべきであろう。多くの病院が受審して、自らの責任で評価内容を公表し、「あるべき病院」の品質にどれだけ近いかを世に問うべきかと思う。
医療機能評価との違いは、認証機関が複数存在すること、また、医療のみをターゲットとした基準は存在せず、一般企業の生産管理と同じ土俵で評価すること、そして、最も大きな違いとして「あるべき姿」は存在せず、一つ一つの生産現場での品質管理を検証するということであるように思う。
ここでは、経営者の責任から始まって、品質システムとして、設計、開発、製造、工程などの各要素で手順書、管理査証体制が求められてくる。一つ一つの工程、医療に置き換えれば一つ一つの診断と治療の整合性と品質が求められてくる。
一般企業と同一の基準で、厳しいハードルが設定されている。そのため、医療機関が医療業界内での「あたり前」というスタンダードから離れ、自らの甘えを払拭するという点で極めて意義深いものと思われる。当院でも、次のステップとして取り組む努力を行っていきたいと思っている。
また、環境基準としてのISO14000シリーズの認証取得も今後のトレンドとなってこよう。