Ms.K (Washington, USA)

アメリカの大学で病院経営学を学んでいらっしゃるKさんから頂きました。

病院経営学について


1997.10.23着信

神野先生へ

私はアメリカのW大学の大学院でMHA(病院経営)を勉強しています。

私自身、以前は医療分野に係わっており、アメリカの医療経営は日本にも応用できると思い、思い切って留学いたしました。神野先生もご承知のとおりアメリカの病院のCEOはかなりMHAの卒業生が多く、私のクラスメイトもアメリカの病院経営者の卵です。

偶然、私の論文のリサーチで先生のホームページを見つけまして、日本にもアメリカ的経営されている病院があったことに、驚いたのと、賞賛の両方でした。特に、医療費のクレジットカード化には賛成です。私も某病院に提案いたしましたが、革新過ぎるといわれました。でも、数パーセントの手数料はあっても確実に支払いがされることは大きな魅力です。特に、リスクマネージメントが進んでいるアメリカでは当然です。また、日本人はアメリカの病院は清潔でホテルなみと認識していますが、それは、日本のように全国民が受けられるのではなく、限られたお金のある人のためのものです。特に、保険会社は、なるべく専門病院に行くことは、制限しますし、病院もいかに早く退院させるかを考えています。

私もアメリカの病院経営を勉強していますが、コストが常に1番にやってきています。それを、考えますと日本の現在の医療制度は優れていると思います。

私は、日本にいるときから今勉強しているMHAのプログラムが日本にあればなあ、と考えておりました。私は、日本の医療制度が全く変わろうとしている日本にこのように病院経営を教える大学や大学院があって然りと思いますが神野先生のご意見はいかがでしょうか。私が、卒業して日本に戻るまでに少しでも日本の病院経営が変わっていることに期待いたします。


1997.1027発信

Ms.K様

はじめまして。アメリカで病院経営学を勉強できること、大変うらやましく思います。 私は、医学部を出て、すぐに大学付属病院の研修医となり、以後現職にいたるまで、体力勝負の外科医をやっておりました。CEOとして、ほぼ独習で経営管理するための労力は大変なものです。

私の財産は大学病院時代が長く、また研究・発表をしないとクビになる医局でしたので、どんなつまらないデータのように見えても、見方を変えたり、他のものと組み合わせることによってヒトにないなにか新しい研究データを発表するという訓練でした。これは、当然のこととはいえ、研究の発表では過去のデータの追試験では評価されないということがベースにあろうかと思います。

この考え方は病院経営でも役に立っているように思いますし、他所の病院で確立された(安全な)仕組をそのまま移植するようなことよりも、自分で納得できるオリジナルな仕組の創出に固執することがままあります。

そういう意味では国内の同業の他病院の動向よりも、外国の動向や異業種であるサービス業、流通業に対してきわめて興味があります。そして、実際に私が手本として仕組みを導入しているのは、一般の企業の経営方法であります。

日本では今年だったと思いますが、栃木県に4年制の病院経営管理講座を持った大学が誕生いたしました。しかし、4年という年月は長すぎるように思います。実務経験者が参加できるようなMHAや、さらにMBAにあるような通信講座の設立が強く望まれることはK様とまったく同感です。


1997.10.27着信

神野 先生

早速の御返答有り難うございました。私も神野先生の病院経営理念には同意いたします。

クラスのケーススタディでMBAとMHAの違いなど話し合いましたが、根本的な違いは患者さんがあっての経営で、普通のビジネスのように利益だけ追求できない、という無難な結果になりました。この点を除きますとやはり、普通のビジネスとさほど変わらないと思いますし、むしろ複雑とおもいます。ホテルのように宿泊施設も兼ねていますし、レストラン。。。神野先生のほうがこの分野はよくご存知のことと存じます。

MHA、ちょうど去年の今ごろ、見つけまして必ず日本にも近い未来必要と感じ、周囲の反対も押しきって渡米してしまいました。MBAと違いまだ日本では知られてませんので、かなり悩みましたが、新しいことは常にリスクが伴うと考え直して決心いたしました。最近よく私のように渡米される女性が増えているようですが、このW大学の大学院(MHA以外)も数人勉強しています。 皆さん、日本人女性と言いがたい方がほとんどですが、企業派遣や、大学から派遣されていらしている方は、あまり強さが感じられません。特に、企業派遣のMBAの方は、疑問が残ります。せっかく、アメリカという様々な国籍の方と話し合える機会があるのですが、言葉の通じる日本人同士でかたまってしまって一番大切な勉強の要素を忘れてしまっているようです。みなさんが全てではございませんが。

話が外れてしまいましたが、日本で病院経営の学部が出来たとは驚きです。もし、可能でしたら、大学の名前を教えていただけないでしょうか。この私のプログラムの教授は、日本にMHAのプログラムが無いことに興味を持たれています。韓国は去年ぐらいに3つMHAプログラムが始まったとのことです。私と唯一留学生の韓国人が教えてくれました。アメリカは現時点で約65の大学院でこのプログラムが開校されています。大学の病院経営学部は4年になると思いますが。神野先生のご指摘の通り、少々長い気もいたしますが、会計学、ファイナンス、基本的な医学知識の教科を考えますと、一般教養もこなす大学は丁度いいのかもしれません。MHAのプログラムは会計、経済学、統計学等あらかじめ大学でとっていませんと、受講できません。私は薬学部卒業いたしましたので、こちらで、今年の夏近くの大学で何とか会計学の単位を取りました。ただ、不思議なことに、医学系統の単位は要求されませんので、将来医療スタッフとの交渉に何か問題が生じるかもしれません。逆に私のようにビジネス関係の強化を取ってない生徒は、これが問題ですので、どちらがいいのかはわかりません。

現在、言葉のハンディがありますが、何とかアメリカの病院でインターンシップを取り働きながら勉強したいものです。


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