記事(倒産事例)略:日経本誌をご覧ください。
厚生省は4月、薬価基準を平均9.7%引き下げた。医療機関は薬価と実際の購入価格の差である「薬価差益」を収入源にしていたが、1兆3千億円とされる差益は大幅に縮小している。大手病院幹部は「今までは薬価基準が下がっても、薬以外の診療報酬が上がってカバーできたが、今年は全く違う」と厚生省の方針転換に驚く。
バブル期に医療機関への融資を拡大した金融機関は「医療制度の大転換期に放漫経営を続けていれば、手を引くケースもある」(大手都銀)と融資体制を変えつつある。これに対し日本医師会(坪井栄孝会長)は「公共性の高い医療機関が貸し渋りの影響を受けるのは問題だ」と強く反発している。
国内最大規模の医療法人である明芳会(東京・板橋)は、グループ内に株式会社のハンドヘル・ケアを設立。営利事業として、在宅高齢者向けの介護サービスや福祉用具販売を始めた。
高額の機器を周辺の医療機関と共同利用、投資負担を軽くする試みも広がっている。石川県七尾市の恵寿総合病院は、高価なMRIやCT(コンピューター断層撮影装置)を、周辺の病院や診療所7施設にも開放した。
ただ病院の企業努力では越えられない“壁”があることも事実だ。診療報酬は国公立も民間病院も同じで、地価や人件費が異なる都市でも地方でも一律。病院経営者からは「巨額の設備投資をして高度な医療を提供する病院と、診療所の診療報酬が同じなのはおかしい」(東京・中野の中野総合病院の池沢康郎院長)と不満が出ている。
厚生省は2月下旬、社会福祉・医療事業団による医療機関向けの融資について、融資条件を緊急緩和。無担保融資の上限を3百万円から1千万円まで引き上げ、利息償還を始める時期を現行から遅らせた。