Phase3.1995年8月号 月刊フェイズ3.1996.8月号

特集 ニューエイジを築くHI/PR最前線 PART3.新時代のPRより

インターネット
PRツールはツールと割り切り間断のない情報創出に注力

石川県・特定医療法人董仙会恵寿総合病院


(記事)

現代における情報の「玉手箱」として、日本中を席巻しているインターネット。情報検索に止まらず、、近未来のコミュニケーションとしても注目を集めている。
このインターネットを使って、自院の情報を積極的に発信しているのが、能登半島の病院で最大規模を誇る、石川県七尾市の恵寿総合病院(454床)。平成5年に院長に就任した神野正博氏が中心となり、今年4月からホームページを開設、多角的な情報提供に取り組んでいる。

多彩な情報をそろえ
アクセス数は1,000名に達する

「インターネットは世界中のネットを結ぶもの。その意味においては、地域密着型のPR方法とはいえず、広告効果はそれほど期待していません。ただ、インターネットのメリットは意見交換が容易にできること。当院の情報に対する意見を集めることにより、次の経営改善や戦略に役立てることができます」と神野院長は導入の目的を語る。病院と患者との双方向性を強調したPRの実践には、うってつけの手段と考えたわけだ。
提供する情報は多彩。同院のホームページを開くと「診療・施設のご案内」「検診・人間ドッグのご案内」「ちょっといい話」「病院周辺(能登半島)のご案内」「病院へのアクセス」などの項目が、ずらりと並ぶ。
「診療・施設のご案内」では、高速らせんCTスキャンなど高度医療機器を使った診断や、カテーテル手術やレーザー治療などの先端技術を紹介。施設案内では、同法人が半島内に開設している診療所や老健施設、関連の社会福祉法人徳充会が運営する、身体障害者更生援護施設やデイサービスセンター、在宅介護支援センターを写真付きで見ることができる。
加えて同院では、院外広報誌「ほっとたいむ」を季刊で発行。同院における最近の話題や、患者の関心の高い健康情報を提供しているが、それをホームページ上でも「ちょっといい話」というコーナーに掲載している。
「基本的にインターネット上の情報はすべて私が集め、プログラミングしています。今後は職員からも情報を募り、ホームページの番組作成を通して、院内の活性化にもつなげていきたいですね。」と神野院長は語る。インターネットにおける情報提供を開始して、2ヶ月経過した時点で、同ホームページにアクセスした人は約1,000名。他の関連ページと相互乗り入れの輪も広げていることで、今後はさらに増加すると思われる。

狭義のPRにとらわれずに
同院の経営情報も積極的に公開

一方、神野院長は、こうした病院情報や健康情報だけではなく、医療経営に関するホームページも開設。その中では、厚生行政の現状分析を試みた院長自身のコラムのほか、自院がこれまで取り組んできた経営改善の事例も紹介されている。
「これは、どちらかというと私個人のページという色彩が強い。ただ、このホームページを訪れた方々と、ネットを通して本音で意見交換ができるのは、非常に助かるし、私自身の勉強になります」と謙虚に語る。
ちなみに同院は、医療過疎といわれたのと半島の高度医療を担うべく、外科系の急性期病院として規模を拡大してきた。現在、1日平均患者数が約1,000名。昨年の手術件数は1,821件を数える。しかし、規模拡大につれ組織も肥大化し、様々な弊害を生むようになってきたという。
そのため神野院長が就任して以来、経営のスリム化・合理化を敢行。スタッフが本来業務に専念し、かつ無駄なコストを排除するために物品管理の外注化を推し進めるなど、院内体制の改革に取り組んできたが、この取り組みについても同ホームページ上に掲載している。
「これが果たしてPRと言えるかどうかは分かりませんが、院外報を発行しても、ホームページを開設しても、発信する情報がなければ無意味です。ですからPRで一番重要なのは絶え間のない情報づくりであり、言い換えれば病院を日々変革させていくことです」と神野院長は強調する。
そして、最終的には医療の質がPRの決め手となるという。「診療の場は一発勝負。誤診や医療過誤などは許されません」(神野院長)。スタッフが本来業務に専念させるような、体制づくりを行ってきたのは、そうした意味合いも込められている。
今後の取り組みとしては、患者の待ち時間を解消していくために、オーダーリングシステムの導入を来年早々に予定している。さらには「インターネットと院内ネットワークとの相互乗り入れを実現し、医療現場から直接、院外へ情報を提供するような体制作りを進めたい」と夢を膨らます。
PRツールはツールとして割り切ってインターネットを使いこなす神野院長。日々変革していく同院を今後、どのようなPR戦略でアピールしていくかが楽しみだ。


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