読売新聞2001年1月6日朝刊石川県版

石川新世紀 大胆予測20XX年−5

先端医療、ネットで共有

診療所が“総合病院”に


医療分野のIT(情報技術)化が進み、過疎地域でも都市部の大手総合病院と同様の治療が可能になる。患者は自宅にいながら、インターネットで十分な治療を受けられる。

 20XX年のある朝。一人暮らしの女性が脳梗塞で倒れた。搬送された近くの病院には専門医はいない。だが、診断結果はインターネットで即座に総合病院に送られ、専門医から的確な指示が出された。1ヵ月後、女性は退院。看護する家族はいないが、ネットで病院と結ばれたハイテクベッドが自動的に体調をチェック。異常があれば救急車が駆けつけることになっている。

****

 七尾市の恵寿総合病院は1998年、系列の診療所や病院との間にオンラインを開設した。約20キロ離れた穴水町の系列病院からは、CT(コンピュータ断層撮影法)で撮影した患者の脳画像をメールで送ってくる。

 CTやMRI(核磁気共鳴影像法)の画像で幹部を見極めるには、ベテラン医師の目が必要とされる。だが、専門医がいなくても、撮影から送信、診断まで計30分ですむ。しかも、データの保存、検索もコンピュータなら簡単にできる。

 「この方法を使えば、どの診療所でも総合病院の設備を共有することができるんです」同総合病院の神野正博理事長(45)は話す。能登地方では、交通事情から大手病院への搬送には時間がかかる。だが、医療では一刻が生死を分け、予後の治療を左右する。「過疎地方こそ、医療へのIT活用が大切なんです」。

 同病院では、昨年9月から、ITを利用して七尾市内の重度のリューマチの女性(51)の自宅看護の手助けをはじめた。

 全身の筋力が弱まり、5年以上寝たきり。会社員の夫(53)はよく看病してくれるが、昼間は仕事がある。

 2年前、女性は夫の留守中、ベッドから落ちた。しかもそばにあったヒーターとの間にはさまった。義母が偶然、立ち寄るまで、2時間もそのままの状態だった。

 病院では入院を勧めた。だが、本人が自宅での療養を強く希望したため、ハイテクを使って“遠隔監視”することになった。

 ベッドの前にカメラを設置。電話回線をつかって病院とつないで、1時間おきに女性の状態をチェックする。まくら元にはナースコールもあって、異常があれば、すぐに病院から看護婦やヘルパーが駆け付ける。

 派遣ヘルパーが毎朝、看護に訪れるが、安心度は格段に上がった。「お父さんが安心だって言うんだよ」。女性は、自分をいたわってくれる夫に気遣いながらこう話す。

 “悪評高い”病院の待ち時間を短縮し、医師や看護婦が医療情報を共有する。医療現場にITを導入する余地はいくらでもある。「医療サービスの向上にITの果たす役割は、ますます増えるのは間違いない」。同病院では、近くカルテの電子かも導入する予定だ。


報道記事目次に戻る