神野理事長が率いる医療法人財団董仙会は2病院、2診療所、2老健のほかに各種サービス、健康増進施設、社会福祉法人を擁し、「けいじゅヘルスケアシステム」と称している。
過疎化の進む地域ニーズに応えてきた結果だが、医・介・福の複合体という現状の中に新たな市場を創り、その中からメリットを出そうと考えた賜物だ。メニューの豊かさと差別化要因を捉え、1人の患者との縁を大事に育てる戦略。急性期も「客寄せパンダ」と割り切って質の向上に力を入れる方針だ。
欠かせないのが患者情報の一元管理。ITを活用して医療・介護・その他情報を洩れなく集め、オンライン化しなくてはならない。
つまりは、限りなく企業経営に近づけていかないとこの戦略は実現できない。そう考えて「董仙会ビジネスモデル」を作製したという。その過程で使った「バランストスコアカード」と併せて読むとわかりやすい。
神野理事長は物管理のIT化から始め、「院内資源マネジメント」を徹底して行った。その後、オンライン化やサービス面のIT化に取り組み、支払いのカード化、電子カルテ導入と進む。さらに、情報活用の例として介護保険開始に伴うコールセンターを設置。ここでは現在、物販も取り扱っている。物販は、インターネットでも行っているし、対面販売は院内に24時間営業コンビにも設置している。
神野理事長は、同院の戦略の本質を「いいお客様を今以上に大事にすること」として、そのためには「全員の経験知を形式知に変えたうえで内面化する必要がある」と説明した。
顧客情報管理に資するオーダリングシステム、電子カルテ、インターネット、あるいはコールセンター、TQC活動、文書管理システム等を立ち上げてきたのも「その一環」とのこと。
今後は1)物販、2)クリニックモール形式の外来、3)セントラルキッチン等の新事業を予定。民間病院との協同購買、職員教育、診療(特に、質の評価・検査・セカンドオピニオン)などの場面における戦略的提携を視野に入れ、既に動き始めているという。