全日病ニュース 第563号 2003年1月1日発行

新春特集U.「勝つ戦略、負けない戦略」

合理的思考から、企業にも似た大胆な戦略

ヤングフォーラム(大阪学会)にみる病院経営の新たな息吹


(記事)

 病床区分届出を8月に控える2003年が幕開いた。病院の将来像を左右する決断のときが迫る中、昨年10月に開かれた第44回全日本病院学会「ヤングフォーラム」で、10人の青年病院経営者が「わが戦略」を語った。
 パワーポイントを駆使した自院データの披瀝と、各自の理念・信念に、21世紀においても日本の医療を確実に担う民間病院の新たな息吹を感じ取った病院関係者が少なくない。
 その中から3つの特徴的な事例を紹介する。
 なお、フォーラムの冒頭、座長を務めた高橋泰国際医療福祉大学教授は、わが国病院の将来展望を右図のように概観した。

「徹底した質向上と保険診療からの脱却」  総合大雄会病院 伊藤伸一理事長
    *見出しのみです。本誌をご覧ください

「病床を捨てる決断」  熊本敬愛病院 小山敬子理事長
    *見出しのみです。本誌をご覧ください

「お客様情報の徹底管理」 恵寿総合病院 神野正博理事長

 神野理事長が率いる医療法人財団董仙会は2病院、2診療所、2老健のほかに各種サービス、健康増進施設、社会福祉法人を擁し、「けいじゅヘルスケアシステム」と称している。

 過疎化の進む地域ニーズに応えてきた結果だが、医・介・福の複合体という現状の中に新たな市場を創り、その中からメリットを出そうと考えた賜物だ。メニューの豊かさと差別化要因を捉え、1人の患者との縁を大事に育てる戦略。急性期も「客寄せパンダ」と割り切って質の向上に力を入れる方針だ。

 欠かせないのが患者情報の一元管理。ITを活用して医療・介護・その他情報を洩れなく集め、オンライン化しなくてはならない。

 つまりは、限りなく企業経営に近づけていかないとこの戦略は実現できない。そう考えて「董仙会ビジネスモデル」を作製したという。その過程で使った「バランストスコアカード」と併せて読むとわかりやすい。

 神野理事長は物管理のIT化から始め、「院内資源マネジメント」を徹底して行った。その後、オンライン化やサービス面のIT化に取り組み、支払いのカード化、電子カルテ導入と進む。さらに、情報活用の例として介護保険開始に伴うコールセンターを設置。ここでは現在、物販も取り扱っている。物販は、インターネットでも行っているし、対面販売は院内に24時間営業コンビにも設置している。

 神野理事長は、同院の戦略の本質を「いいお客様を今以上に大事にすること」として、そのためには「全員の経験知を形式知に変えたうえで内面化する必要がある」と説明した。

 顧客情報管理に資するオーダリングシステム、電子カルテ、インターネット、あるいはコールセンター、TQC活動、文書管理システム等を立ち上げてきたのも「その一環」とのこと。

 今後は1)物販、2)クリニックモール形式の外来、3)セントラルキッチン等の新事業を予定。民間病院との協同購買、職員教育、診療(特に、質の評価・検査・セカンドオピニオン)などの場面における戦略的提携を視野に入れ、既に動き始めているという。


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