肝内胆管癌(胆管細胞癌)その1


Q:初めてメール致します

 実は家の母が胆管癌を患っています。詳しい症状についての資料はここで述べる事は出来ませんが、先生のホームページを見て、かかっている病院より治療成績が良いのでメールをしました。 

 自分は現在東京に住んでいます。また、母は今年で59歳なので、そちらに行く事はできません。その為大変ぶしつけなお願いですが、東京で同様な治療を行っている医師をご存じでしたらご紹介していただけないでしょうか。

 現在、治療を受けている病院では、患者に対する扱いがあまり良いとは思えません。病状に関する説明も専門用語を使って解りにくく、不親切です。その為、もっとよい治療法や、患者と家族に親身に接してくれる病院を探しています。

 ちなみに現在の母の病状は、胆管癌が肝臓の左半分をしめ、右にも一部転移しています。担当医師の判断では手術するのは困難で、大学病院に転院して手術を行うか、往診のみ行うので退院するか、と言う2つの選択を提示されました。本人には今の所病気について「肝腫瘍」と話しており、告知はしていません。

 突然のお願い事で申し訳有りませんが、よろしくお願いします。


A:お返事が大変遅くなって申し訳ありません。

 お母様の件ですが、どうも文面から推察させていただきますに「胆管癌」ではないように思います。専門的になりますが、「胆管癌」には大きく分けて、肝臓内の胆管から発生する「肝内胆管癌=胆管細胞癌」と、肝臓外の胆管から発育する「肝外胆管癌」に分かれます。いわゆる「胆管癌」といわれているものは、後者の方です。治療法・予後も著しく異なります。私のホームページで述べているものは「肝外胆管癌」であり、「肝内胆管癌=胆管細胞癌」には言及しておりません。

 残念ですが「肝内胆管癌」は予後が悪く、当院の検討でも手術的に切除できなかったものは1年生存率がほぼ0%です。肝臓の中の胆管に胆石ができる「肝内胆管結石」という病気がありますが、肝切除を行い術後の病理検査で「肝内胆管癌」が偶然発見されるような場合には、治癒する場合もあります。

 現在、手術できない「肝内胆管癌」に対して、抗癌剤を直接肝臓に投与する「動注化学療法」という方法を開始しています。長期予後はまだでていませんが、良い感触を持っています。放射線治療を併用する場合もあります。薬剤は、5-FUという抗癌剤を1日5時間週4日投与し、少量のCDDPという抗癌剤を全身あるいは動脈内に投与する方法です。副作用も少なく、いままでの方法に比べては患者さんも楽に治療を受けられるようです。

東京には同様の治療をしている仲間がたくさんあります。S大学のK教授を訪ねてみられてはいかがでしょうか。「リザーバー研究会」という上記のような治療を積極的に開発・施行している研究会の仲間です。

 かなり厳しい戦いになりますが、まだまだお若いですから、かなりの治療にも耐えられると思います。K教授とよく相談されて、まず手術適応があるかどうか、なければどのようなスケジュールで、どのような薬剤を使って治療するか、あるいは病状が高度で、治療を加えるとかえって寿命を短くする危険性があるなら、今後どのように対処して行くべきか、親身になってご教授していただけると思います。