肝内胆管癌(胆管細胞癌)その2

Q:はじめまして。

 私の父が、現在肝臓ガンで、肝臓ガンといっても、担当医によると、父の肝臓ガンは、胆管のほうからきているものだということを言っていました。ということで、先生のホームページに興味をもちました。

 5月の末に発病して、7月に今の病院に移りました。手術か、そのままにしておくかということで、父は8月に手術をして、左半分の肝臓を摘出をしましたが、動脈にからんでいるものもあり、それは摘出できなかったということでした。11月の初め頃に、父に黄疸がでて、再入院となりました。で、現在は、余命あと3ヶ月ほどと、いわれました。(父は、56歳です)父は、現在栄養剤とモルヒネの点滴をうけています。1日中ねています。もちろん食事は食べれません。水のみです。現在の体重は54kgほどですが、むくみもあるため、実際の体重は、それ以下だとおもいます。私は、いろいろあって、父の担当医が大嫌いです。

 1日もはやく、胆管ガンや肝臓ガンと闘っている人が助かるような、いい方法をみつけてください。父は、もう助かりませんが、その他のたくさんの人を助けてください。お願い致します。

 がんばってください!


A:お便り有り難うございました。

 お父さまのご病状、大変だと思います。おそらくお父さまの病名は、肝臓癌の中の胆管から発生した「胆管細胞癌=肝内胆管癌」というものではないかと思います。肝臓癌といっても、肝細胞からでる「肝細胞癌」と「胆管細胞癌」は親戚同士ではあっても、その悪性度は著しく異なっています。「胆管細胞癌」は手術以外に効果的な治療法がないといっても過言ではなく、手術不能の場合や、再発してきた場合には有効な治療法がないのがなく、予後も非常に限られているのが現状ではないかと思います。

 これ程医学が進んだといっても、膵臓癌や胆管細胞癌は我々専門にしている人間にとりましても、やっかいな病気です。このような病気では、治療法が限られていることから、積極的な治療が患者さんの為にならないと判断した時点から、どのように患者さんの苦痛をとってあげるか、また患者さんやご家族の皆様との精神的なつながりをいかに築き上げていくかが、重要ではないかと考えるようになりました。少し前までは、積極的な治療ができないことが悔しく、こだわりを持っていましたが、一昨年ある患者さんとその娘さん達の闘病姿勢・看病姿勢をみせていただき、積極的な治療のみが「治療」ではなく、積極的な「緩和(苦しみを和らげる)治療」という方法も立派な治療であり、重要であることが認識できるようになりました。

 あなたが「主治医が大嫌い」と書いておられるのを見て、はっとしました。同じ医者として患者さんのご家族に「大嫌い」と言われるのは非常に残念ですが、主治医の先生はまだ積極的な治療にこだわりをお持ちのようだと推察いたしました。それがある意味では医者の傲慢というか、誤りであるというか、それに気づくには素晴らしい出会いと、いやな言葉かもしれませんが「死への医学」に興味を示さない限りは難しいのではないかと思っています。そういう意味で私は幸せだったと思っています。

 これからでも遅くはありませんから、どうぞ主治医の先生と心を開き合ってよく話し合い、心のつながりをもってお父さまの為に頑張って上げて下さい。それが一番お父さまも喜んで下さる事ではないかと思います。

 いらぬお節介をやいてしまい、申し訳ありませんでした。お互いに悔いを残さないよう、しっかりお父さまを看病してあげれるよう、遠方から祈っております。