総胆管嚢腫


Q:私の主人は、十二指腸の乳頭が腫れていると言う事で入院いたしました。その後の検査で胆管が普通の人の4倍位腫れていると言われました。膵管も少し太くなっているそうです。痛みとかは、ぜんぜんありません。血液検査の結果も異常はなかったようです。組織を8箇所くらいとって調べた結果、1箇所に癌細胞が見つかったようです。十二指腸の乳頭部と言われました。手術を受ける事になりました。もし胆管に癌ができていたらどのような症状があるのでしょうか?全温存膵頭十二指腸切除術を行うといわれました。どのような手術なのか。また、術後はどれくらいで回復するのか、危険を伴うのか、いろいろ知りたくてメールいたしました。


A:初めまして。大変ご心配の事と思います。お返事が送れて申し訳ありませんでした。

 ご質問の内容から推察しますと、ご主人(何歳でしょうか?)のご病気は、「胆管膵管合流異常+総胆管嚢腫、および胆管癌(乳頭部癌?)の合併」と思います。

 「胆管膵管合流異常+総胆管嚢腫」というのは先天性の病気で、普通胆管と膵管は別々に、あるいは短い共通管と言うモノを形成して乳頭部から十二指腸に開口しています(開いています)。内視鏡でみると、胃の次が十二指腸ですが、そこに肝臓で作られた胆汁の通り道である「胆管」と、膵臓で作られた膵液の通り道である「膵管」が、乳頭部という、オッパイの形になった出口から流れ込むところです。

 胆管と膵管が合わさってできる「共通管」が4mm以上の長さになることが「合流異常」と考えてください。正確には膵管の発生からお教えしなければなりませんが、理解しずらいと思いますので省略します。つまり共通管が長いため、胆汁が十二指腸に流れ出しにくく、胆汁が胆管の中に溜まり、胆管がふくれて、「総胆管嚢腫」と呼ばれる病態となります。また普通ではおこらない、共通管を介しての膵液の胆管への逆流がおこりやすい状態になっています。

 「胆管膵管合流異常+総胆管嚢腫」では、膵液が胆管に逆流すると言うことが大問題となり、胆管や胆嚢に悪性腫瘍、つまり癌ができやすくなると言われています。乳頭部癌を合併した方は、まだ当院ではみたことがありません。癌を合併されていない方のほうが多いのですが、万一合併されていた場合でも胆嚢癌か胆管癌です。もう一度主治医の先生に確認する必要があると思います。乳頭部癌でしたら、当院では5年生存率(治療5年後に患者さんが生存している確率:あまりいことばではなく、不愉快に感じられるかも解りませんが、すみません)は、ほぼ100%です。

 「血液検査も異常はないとのことです。もし胆管に癌ができていたらどのような症状があるのでしょうか?」というご質問ですが、通常腹痛や黄疸症状がみられてから来院されるか、検診などで総胆管が腫れているのをみつけられて来院することがほとんどです。症状がなければ、血液検査で異常が出ない場合もあります。

 治療としては、若い方が多いのですが、みつけたら前述のように、発見時にはなくっても、将来胆管系の悪性腫瘍がおこってくる確率が非常に高いので、手術を勧めます。

 「全温存膵頭十二指腸切除術」といわれたとのことですが、すみません聞き間違いだと思います。おそらく、「幽門輪温存膵頭十二指腸切除」ではないかと思います。当院でもその術式をとっています。膵臓癌で行われる「膵頭十二指腸切除」では、胃を2/3ほど切ってしまいますので、胃切除後症候群という、いろんな消化器の合併症が現れることが多かったため、最近では悪性度の低い癌(乳頭部癌なども含まれますが)では胃を温存するように開発された手術術式です。

 術後の回復は、その施設が「幽門輪温存膵頭十二指腸切除」に造詣が深いかどうかで判断しなければ成りませんので、執刀医の先生にお伺いした方がいいと思います。