操作法と解説 「ニュートンの運動の法則」と「波」は無関係のもの・・・でしょうか? いやいや,そうではありません。波もりっぱに運動の法則で理解できるのです。このアプレットでは,その関係と,波としての性質をみていきます。それでは画面を見てください。30個の球がばねでつながれています。右端だけおもりがつながれ,簡単には動かないようにしてあります。また,球の運動は縦方向にだけ限っています。
まず,左端の球をつかんで動かしてみましょう。左端の球をクリックすると仮想の手が現れて,マウスをドラッグすることで球を縦方向に自由に動かすことができます。たとえば上に動かしてみましょう。ばねが伸びて,となりの球を引き上げるようすが見えますね。ここです!ばねを介してとなりの球に力が加わり,その力によってとなりの球は運動方程式にしたがって加速度運動をします。このようにして動いたとなりの球は,そのとなりの球に力を加え・・・というように,球の運動が,ばねの力を介して次々と伝わっていきます。ここで,注意してほしいのは,一つひとつの球は上下には運動しますが球自体が波とともに動いていくわけではないという点です。にもかかわらず,運動が伝わるということは,球に質量がありますから運動エネルギーも伝わるということになります。波という現象は,このように,物体が移動することなしにエネルギーを伝えることができるという,非常に興味深い特徴があるのです。ここで用語の勉強をしましょう。このアプレットでは球が振動して波が伝わりますが,振動することで波を伝えるものを「媒質」といいます。また,媒質の波のないときの位置からのずれを「変位」といいます。となりどうしの媒質の間に,ばねのように力を伝えるなにかが存在しなければ波は伝わらないことにも注意しましょう。
さて,それではいろいろな波を起こしてみましょう。右下のRのボタンをクリックしてリセットしてから,もう一度,左端の球をつかみ,一回だけ上にあげてからまたもとの場所に戻してみます。山なりの波が右側に伝わっていきます。波の形は波形と呼ばれ,球の動かし方で波形は変わります。送り出された山なりの波は,右端まで行くと,おもりにぶつかって反射し,山なりの波が谷になって戻ってきます。山の波が谷の波に変わるなんて不思議ですね。リセットしてから,今度は谷の波を送り出してみましょう。どうなるでしょう。反射するときのばねの伸びなどをしっかりみて,なぜ反射するのか,山谷が逆になるのかなどについて考えてみましょう。
詳しくみたいときのために,右下にスローモーションのボタンSを用意しました。このボタンをクリックすると動きがゆっくりになり,細かなばねの伸びなどが観察できますので試してみましょう。もとにもどしたいときは,Sが変わったFのボタンをクリックします。普通の速さに戻ります。次に,真ん中あたりの球をつかんで動かしてみましょう。左右に波が現れます。振動が起きている点を「波源(はげん)」といいますが,,この場合はつかんで動かしている球が波源ということになります。波は波源から広がるように伝わります。さて,左右の端での反射のようすを観察しましょう。右端は前にみたとおりですが,左端はその先に球がありません。どんなことが起こるでしょう。右端と比較してみましょう。
右端のように重い物体によって動かないようにされている端を「固定端」といい,そこでの反射を「固定端反射」といいます。固定端反射では反射した波の山と谷が逆転する現象が起こります。また逆に,左端のようにその先に何もないような端を「自由端」といい,そこでの反射を「自由端反射」といいます。自由端反射では,山は山,谷は谷として反射します。さらにいくつかの,波の重要な性質があります。それは「波の独立性」と「重ね合わせの原理」*です。右端のおもりに固定された球をつかんで山の波を送り出します。その波が中央付近にさしかかったところでもう一つの波を送りだし,そのようすを観察しましょう。始めに送り出された波が左端で反射して戻ってきて,後に送り出した波とぶつかります。どうなるでしょう。驚いたことにぶつかったあと,何ごともなかったように離れていきます。このようなことが波の独立性と呼ばれる性質です。また,波が衝突している時の波形はどうなるでしょう。波が重なったように見えませんでしたか。実は,重なった波の媒質の変位は,それぞれの波が単独で通過しているとしたときの媒質の変位の足し算になることが知られています。このことを「波の重ね合わせの原理」といます。
最後に,波の伝わる速さについてもみてみましょう。画面の左下に棒グラフが表示されています。そのkと表示された棒グラフの右端を右に引いてみましょう。棒が伸び数字が大きくなります。こうすることでばねの引く力が強くなります。逆に左に押し込むと数字が小さくなり,ばねの強さが弱くなります。また,その下のmassと表示された棒グラフでは,同じようにして球の質量を変えることができます。これらの値を変えてみて,波の速さの変化を調べてみましょう。また,kを0にしたらどうなるかも興味深いですね。試してみましょう。
次の波についてのアプレットもご覧下さい。
これらの球の運動は,運動方程式を4次のRunge-Kutta方で数値的に解いて求めています。球同士の衝突や壁との衝突はないものとしています。
*このアプレットのように,球がばねでつながれているような場合は,媒質の変位が大きくなると「波の独立性」と「重ね合わせの原理」が厳密には成り立たなくなってきます。
制作:加藤徳善 (norimari@mxb.mesh.ne.jp)
(2003.12 .6)