まりちゃん通信(3)
今回はヒンドゥーのお祭りタイプーサムのお話です。


 この女性、どうしちゃったと思いますか?頬を横に貫く太いくし。うそんこではなく、本当に頬を突き抜け、口の中を通り、反対側の頬から突き出ているんです。血が出ないのが不思議です。目は焦点定まらず、お供え物のミルクが入った金の壷を頭にのせてふらふらと歩いています。

 タイプーサム(Thaipusam)というヒンズー教のお祭りでの一場面です。

 「クアラルンプールに暮らす」(JETRO発行 1990年)という本には、こんな風に紹介されています。

〈・・・この祭りは、身体のいたるところに針やくしを刺した人々がヒンズー寺院へ向かって街をねり歩く行列で知られています。・・・マレーシアではバツーケーブのヒンズー寺院でこの行事が行われています。インドでは危険という理由でこの祭りは禁止されており、今ではこのバツーケーブでのお祭りが世界最大といわれています。・・・〉

 「地球の歩き方 マレーシア、ブルネイ」(ダイヤモンド社)には、

〈・・・信者たちが体中に針や鉄グシを刺して練り歩く様は圧巻だ・・・〉

 行きたい!見たい!と思いつつ、去年のタイプーサム(1995年1月17日)は旅行と重なってしまい行けませんでした。おまけに、行った人は誰もが、「見に行くまでもすごく大変で、見ているときもものすごい人出で、もー大変!!。」と口をそろえていうのです。ところがラッキーなことに、私のインド系マレーシア人の友人Lさんの親戚がその行列に参加するということで、その有名なバツーケーブに一緒につれて行ってもらい、一部始終を見てきました。

 タイプーサムはヒンズー暦10月の満月の時にするのだそうです。私の使っているカレンダーでは、2月4日がThaipusamと書いてあり、いくつかの州が祝日と定めています。実際は、前日2月3日の早朝4時にKuala Lumpurの中心あたりにあるヒンズー寺院から、このお祭りの神様Murugaの像が僧侶や楽隊、5万人の信者と共にバツーケーブまで8時間ほど行進をするところからお祭りが始まるのだそうです。

 私達は、4日早朝、まだ真っ暗な3時半に車で出発。運転は、地元に詳しいLさんのいとこSさんに任せてらくちん。付近のメインロードはすでに閉鎖されていました。運が悪いと、遠い上に、即席集金屋にぼられることもあるのですが、Sさんは横道をこにょこにょと行ってすぐ近くにただで車を止めました。

 車から下りると、道行く人みんなインド人・・・大人も子供も赤ちゃんも、みんなぞろぞろ歩いています。日本の初詣の雰囲気そっくり。私の思い出の中では、仙台大崎八幡神社のどんと祭の雰囲気。八幡町のあの通りが通行止めになって両脇に屋台が出ている、その景色そのままです。違うといえば、歩いている人がインド人ばっかということ、まわりで鳴っている音楽と、そちこちに即席床屋があること、辺り構わずごろごろと寝ている人がそちこちに転がっていること・・・

 鳴っている音楽は、当然インド音楽です。甲高いボーカルが威勢のいいリズムに合わせてがなり立てているといった感じで、スピーカーから飛び出しています。しかも、それぞれ違う曲。

 大繁盛している即席床屋の共通唯一のヘアスタイルは恐怖の「つるつる坊主黄色のどろんこ付き」。バケツの水を頭髪全体になすり付けると、何人剃ったか分からない剃刀で、てっぺんからしょりしょりしょり・・・瞬く間につるつる坊主。最後には、黄色い泥のような物(ローションの代わりのような物だそうです)をつるつる頭にまだらに塗って終了。女性では、見かけませんでしたが、男性、赤ちゃん、子供(10才ぐらいまでなら女の子も)は、ずいぶん剃っていました。なぜ、こんな風に頭を剃ってしまうかは、次号でお話しします。

 では、Jumpa lagi!



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1996,4,10更新