まりちゃん通信(5)
タイプーサムのお話のさらに続きですよ。


 一体どうやってあんな針を体に刺すんだろう??と、興味津々で会場に入りました。  黄色は何か特別な色らしく、お祭りに参加する当の本人たちはみんな黄色の服を着ていました。みんなごく普通の人でとても落ちついています。「これから針を刺すの?」「そうだよ。」とにこにこ・・・

 私達が一部始終見せてもらったグループは、大きなカバディを担ぐ人6人、小さいカバディ5人、ミルクカバディは10人ぐらいでした。12才ぐらいの子供たちもいます。彼らは、一日一食の断食(人によるが1週間〜1カ月)で体と精神を清めてこの日を迎えています。そのまわりは、彼らの家族や見物の人たちで、がやがやごちゃごちゃ。

 それぞれ川の水で身を清めて、祈祷師のような人に一人ずつお祈りをしてもらって額や腕に聖なる灰を塗って準備完了。大きなカバディを担ぐ人は担いで椅子に座って待ちます。にぎやかな音楽隊が着てドンツクドンツクジャンジャラジャンジャラとリズムを鳴らす中、お祈りがさらに進みます。

 祈祷師の一人が、カバディを担いだ人の前に立ちました。カバディを担いだAさんは目を閉じ手を合わせて一緒にお祈りしています。祈祷師の手がAさんの額にふれAさんを前後に揺らします。まわりの人たちの「ヴェール!ヴェール!」のかけ声とアップテンポの音楽と拡声器から飛び出てくるお祈り?の声がいっそう大きく激しくなって、突然!!!!!・・・・目をかっと見開き、口をぐわっと開け、「キエエーキエエーー!」と奇声を発し、何かに乗り移られたかのごとく暴れ出しました。それをすばやく係りの人が押さえ込みます。串を刺す係りの人が手早く、舌をつかんでぶつっ!椅子に座らせると、今度は背中と胸に何本もの鉤針を引っかけていきます。皮をぎゅっと摘んでぷつっ、ぎゅっ、ぷつっ・・・その間、Aさんは暴れはしませんが、激しい貧乏揺すりのように足を揺らし体を揺らしていました。首の動かし方といい、まるで鳥が乗り移ったかのようでした。

 そうしている間にあちこちで、女性ががくがくと暴れ出して、まわりにいた家族に押さえられ、係りの人に舌や額にぶつっと針を刺されミルクカバディをのせられていました。のせられても、体ががくがくと勝手に暴れてしまうので家族に支えられながらいました。このように、自分を失い(何かが乗り移って)、体が勝手に動いていてしまうのをトランス状態というのだそうです。何よりも、あの人たちのその時の目が、私の印象に残っています。

 赤ちゃんや小さな子供もたくさん見ています。ごく当たり前にみんな見ていました。「うわーすごい・・!」なんて見ているのは、観光できている人だけなんでしょう。

 トランス状態にはならず、担ぐだけの人もいました。全員がそろうと、いよいよ行進。こんなに最初から暴れて体力を使ったら、まともな時でさえ272段登り切れないと思うほど、ある人は踊りながら、ある人は足を踏みならしながら行きます。足首に付けているたくさんの鈴がしゃんしゃんと鳴ってまた不思議な雰囲気をかもし出します。踊り疲れたのか、ふらふらと歩く人もいます。あまりの人混みでときどき立ち止まらなくてはならないときもあります。階段では、たくさんの人が家族に支え押し上げられしながら登っていました。

 どうにか272段の階段も上り終え、最後に串を抜かれます。頬に刺した太い串を抜く時は、一人が頭を押さえ、もう一人がまっすぐに一息で引き抜きます。抜いた後も血は出ません。みんなぐったりしていましたが、じき晴れ晴れとした顔で、まだまだたくさんの人が登ってくる階段を下りていきます。

 車にたどり着いたのが昼近く。くたくたでした。それにしても何とも不思議なお祭りでした。

 では、Jumpa lagi!



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1996,4,10更新