クーロン力による散乱(原子の構造を見るには?)

解説と操作法

 原子のように極めて小さな物質の構造を調べるにはどうしたらよいでしょう。顕微鏡で観察するように,何か光のようなものを当ててみるという手段が考えられます。実際に光よりもエネルギーの高いγ(ガンマ)線やヘリウム原子核のα(アルファ)線,陽子や電子ビームなどを使って調べられています。特にα線のような電荷を持った粒子は原子内の同じように電荷を持った粒子に進行方向を曲げられます。これはクーロン力と呼ばれる電気の力によるものです。このように当てた粒子の進行方向が曲げられる現象を「散乱」といいます。
 このアプレットでは,左端から20個の電荷を持った粒子を中央の同種の電荷を持った重い標的に当てる場合の散乱のようすをシミュレートします。左下のスクロールバーで当てる粒子の速さを変えることができます。中央の標的付近をドラッグすることで,標的の広がりを変えることができます。このとき電荷の総量は変わらないようにしています。
 速さと半径を適当に設定してStartを押して下さい。当てる粒子が動き始めます。どのように散乱されるか観察しましょう。
 Resetで初めの状態に戻し,今度は右下のStroboをチェックしてからStartを押してみて下さい。軌跡がストロボのように残ります。
 標的の半径や,当てる粒子の速度をいろいろ変えると散乱のようすはどのように変化するでしょうか。特に次の点を調べてみて下さい。
(1)標的が広がると散乱はどのようになりますか。
(2)ぶつける粒子の速度を変えると散乱はどのようになりますか。
(3)標的の電荷の広がりのようすを調べるとしたら,当てる粒子の速さはどのような方が有利ですか。
 α線を金箔の原子に照射して散乱のようすを調べた実験は,1909年にラザフォードによって初めて行われました。ラザフォードはその実験で大きな角度で散乱されるα粒子があることを発見し,原子のほとんどの質量を担った正の電荷をもつ小さな何かが原子の中心にあると結論づけたのです。これは原子核と呼ばれています。

 この散乱の計算は4次のRunge-Kutta法を用いています。計算は適当な単位系を用いており,標的の粒子の質量は無限大,当てる粒子間には力ははたらかないとしています。
 標的は電荷の総量を変えないで一様な荷電密度で球状の広がりを設定できますが,その際,散乱される粒子は,その広がりの外部では標的の中心からの距離の2乗に反比例する斥力を,内部では中心からの距離に比例する斥力を受けるとして計算しています。電荷の広がりの内部では,散乱される粒子の位置の半径の球内にある電荷のみが力に関与するからです。(図参照)
 実際の原子レベルの散乱を取り扱う場合は正確には量子力学を用いなければなりませんが,クーロン力による散乱においては,古典的取り扱いと結果がよく一致します。


作成者:加藤徳善

作成ノート

 自作Java Applet第5弾です。スクロールバー,チェックボックスも取り入れました。この際,物理Javaメーリングリストで神川さん北村さんにアドバイスをいただきました。ありがとうございました。(1997.3.27)

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