波動の干渉シミュレーションのMovie作成と
そのデータのインターネット上での公開


宮城県泉館山高等学校
加藤徳善

 数学ソフトMathematicaを用いて波動の干渉Movieを作成した。またこのデータをインターネットWWWのWebpageに載せ,コンピューターの機種やOSによらず利用できるように公開した。


1 波の干渉パターンMovieを作成した意味

 2つの球面波の干渉では,御承知のように美しい双曲線の節線パターンを見ることができる。授業では水面波をOHP等によってスクリーンに写しだして観察することがよく行われている。このような実験は,干渉現象を実際に見ているという点で教育的意義や効果が非常に大きい。しかし動きが速いため,そのようすを的確に肉眼でとらえにくい面もある。この動きを時間的にコントロールして見ることができれば,生徒にとって理解しやすくなり,教師にとっても説明が容易になると考えられる。また,干渉の数学的モデルからの演繹結果の一つとして,逆に数値的なシミュレーションを行ない,実際の現象と比較してみることも大切なことである。
 以上の理由から,数学ソフトMathematicaを用いて,数値的な干渉のシミュレーションを行い,その結果から時間的コントロールの容易なMovieデータを作成した。
 このMovieは実際にスキャンコンバーターを介して大きなテレビに表示し,授業で実験と併用しているが,干渉の時間変化や節線のようすの説明が大変やりやすくなった。


2 Mathematicaを用いた具体的計算法

 Mathematicaは数学ソフトとしてその革新的な高機能からよく知れ渡っている。そのグラフィックス機能を使って,波動の干渉シミュレーションを行いMovieデータをつくることが簡単にできる。具体的には次のような式を入力し,計算を実行すれば,干渉パターンの等高線図が計算され,それが時間経過と共に次々に表示されていく。


 この式の意味を簡単に説明する。2次元波動の干渉式の本体は,

である。xy平面上で座標(x,y)が(-1,0)と(1,0)の点にある2つの波源から振幅1,波長1,周期10の球面波が発生している場合を表している。ただし波面の広がりにともなう振幅の減少は考慮していない。これを

...の部分に入れることによって,-6≦x≦6かつ-6≦y≦6の領域で50×50のメッシュに分けて計算したときの等高線図が求められる。
 さらにこれを


...の部分に入れているが,これは時間経過にともなう変化を計算させるためである。ここでは時間tを0から9まで1刻みで計算するように指定している。周期が10なので,ちょうど1周期を10コマに分けて計算させることになる。計算された結果の1つを図1に示す。
 次に,これらの図をMathematicaの機能を使いQuickTime Movieに変換する。このMovieは1周期分であるので,MoviePlayerで再生の際,loop指定をすることによって,エンドレスに見ることができる。
 さらにこの方法のバリエーションとして,スリットから出ていく波のホイヘンスの原理による回折現象の現れ(図2),回折格子による回折波の角度依存性(図3),さらにドップラー効果(図4)や衝撃波(図5)のシミュレーションMovieも作成した。

 図1  図2  図3

 図4  図5


3 MovieデータをインターネットWWWで公開する

 現在のインターネットのデータ転送能力は,Movieデータを送る場合,ISDNを用いてもまだまだ十分とはいえない状況である。せっかくの教材Movieも,getに10分もかかるようでは精神的,通信費的抵抗がまだ大きすぎる。したがって,現状で実用的なMovieは内容がかなり限定されてしまう。この点で波動現象は周期運動であるため1周期分のデータだけで十分であり,インターネット向きといえる。特に線画や色数が少ないMovieでは,大きな圧縮率が期待できる。
 またMovieの形式は,MPEGやQuickTimeが代表的であるが,どちらもOSやコンピューターの機種をあまり選ばない。QuickTimeについては,Macintoshで作成した場合,通常はそれをWindowsで見ることはできないが,theFunCompanyのflattenMooVやAdobeのPremiereェ等でフラット化することにより,どちらでも見ることができるようになる。
 私の場合,MacintoshでQuickTime Movieをつくり,フラット化してzip形式に圧縮している。その結果1つのMovieファイルの大きさは,ほとんどが100KB以下,大きくても150KB以下にすることができた。このサイズは,getにかかる時間の負担をそれほど感じない大きさである。
 これらのMovieデータはWWWwebpage「のりさんのパソコン物理」(URLはhttp://www2.meshnet.or.jp/~norimari/sciencenori.html)で公開している。物理の授業等で御自由にお使いいただければ有り難いと考えている。
 現在,多くの方々が自分の研究成果や教材を公開し,誰でもが自由に参考にし利用できるようにしている。このような教材の共有化が進む中で,私のMovieデータも僅かでも役に立てればと願っている。


参考文献: スティーブン・ウルフラム著 Mathematica
Movieのフラット化については,東北電子専門学校の方々にアドバイスをいただいた。感謝いたします。



1996.10.20作成