ヒンドゥーの奇祭タイプーサム


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 ヒンドゥー暦のタイ月の満月の日に,世界中でヒンドゥー教徒たちがシバ神の息子ムルガ神に捧げものをするのがこの祭り。今年は2月4日から3日間にわたって行われた。世界的に有名なのがクアラルンプールのバツーケイブのもので実に110万人の人出があった。
 マレイシアでは人口の約8%がヒンドゥー教インド人。彼らはムルガ神に願い事をし,それがかなうとお礼に捧げものをする。捧げものはカヴァディと呼ばれ,大きな御輿や,ミルク壷など様々である。特徴的なことは捧げものに苦行が伴うことで,これが奇祭と呼ばれるゆえんである。舌や頬に長い串を刺し,体中に無数の鉤針を掛け,重い御輿を担ぎバツーケイブへの272段の階段を登るのである。
 今回知人のインド系マレイシア人に同行して見てきたので,その様子を写真とともに紹介する。


 4日の早朝4時に参道に着いた。既に人々でごった返している。捧げものはお寺ごとにグループで行う。いくつかのグループが参道沿いに陣取り準備を始めてる。願い事がかなった家族であろうか,家族ぐるみでお祈りをしている。子供たちも真剣である。






 参道にはいくつも床屋が店開きをしている。そこでの唯一のヘアスタイルがこれである。神への感謝の気持ちをあらわすために行うという。剃った後の頭皮にはサンダルウッドの樹皮の黄色い粉を塗る。この粉は皮膚の薬として,いろいろな場面で使われる。








 カヴァディを背負う男の前に僧侶がやってくる。その場を清めるために椰子の実を地面にたたきつけて割る。男の額に手をあて祈ると,男は催眠術を掛けられたようになる。周りではテンポの速い打楽器にあわせて甲高い歌が歌われ,男は奇声を上げ始めトランス状態になる。それを見計らって串を舌に一気に刺す。麻酔はしない。






 大きなカヴァディは鉄の枠に孔雀の羽などで飾り付けた華やかなものである。それを体にボルトで固定する。回転しながら激しく踊るからである。20キログラムを越える重さがある。そのあと無数の鉤針を体中に刺していく。写真の彼はこの状態で行進開始まで1時間近く待った。舌の痛みを和らげるためか,しきりにライムをかじる場面もあった。











 カヴァディには背中に太い鉤針を掛けるものもある。鉤針にロープを付け後ろで人がもつ。鉤針を付けられた男は力いっぱい前に進もうとして背中の皮は引きちぎれそうになる。









 夜が明け8時すぎに我々のグループの行進が始まった。カヴァディを担いだ男達は音楽に合わせて激しく踊りながら進んでいく。女性のカヴァディはミルクをいっぱい入れた壷の場合が多く,舌や頬への串刺しはしたりしなかったりまちまちである。正面にバツーケイブの鍾乳洞窟が見える。











 いよいよ洞窟の中へ。ここまでカヴァディを運ぶと,たくましい男達も力つきる。これで行進は終わる。舌や頬に刺した串は2人掛かりで慎重にかつ一気に抜かれる。不思議なことに血は出ない。帰りはサポート係が力つきた男達に手を貸し,御輿も運びおろす。



※ このリポートはペタリンジャヤ在住のインド系マレイシア人Shan,Lalli,Sash諸氏の協力によってできました。ここに感謝の意を表します。
 これらの写真は加藤徳善に帰属します。


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1996,4,10更新