▲Pumpkin Time▼  小説・俳句  鬼っ子物語2   

 鬼っ子物語

 昔々、ずうっと南の島におじいさんとお姉さんが住んでおりました。
  おじいさんは、お姉さんの言いなりで毎日川へ洗濯に行かされておりました。
  おじいさんは、全く洗濯機ぐらい買ってくれよと愚痴を言いながらその日も川に向かいました。 生活費はお姉さんがパチンコで稼いできているので面と向かって文句は言えないのです。 文句を言うとおじいさんの嫌いな納豆が食事にでてしまいます。 おじいさんは卵かけご飯の方がずっと好きです。 お姉さんが好きなのはインターネットと綾取りです。

 おじいさんがせっせと洗濯をしていると川上からドンブラコー、ドンブラコーと陽気に歌いながら流れてくる 大きな桃に気がつきました。 何じゃありゃ、とおじいさんは最初驚きましたが、 あんな桃だったら見せ物にすると儲かってお姉さんの世話にならずに毎日卵かけご飯が食えるばい、と考えました。 おじいさんは実は熊本県人だったのです。
 熊本県人のおじいさんは桃を採ろうとして溺れかけましたがなんとか岸に上がり 近くにあったPC9821Cx13で桃をたぐり寄せました。 PC9821Cx13は後で乾かして「ぷよぷよ」をやろうと 熊本県人のおじいさんは考え柿の木に吊しておきました。
 桃は熊本県人のおじいさんが抱えるのにはあんまり重いので ごろごろと転がして(ご指摘により誤字修正)運ぶことにしました。
 すると桃が痛い痛い痛いと泣き声で喚きます。 勿論、桃には人権がありませんから 熊本県人のおじいさんは構わず転がし続けます。
 町のストリップ劇場の横でおじいさんは、タータンチェックのござを敷いて 見せ物を始めました。
 熊本県人のおじいさんは、よってらっしゃいみてらっしゃい、世にも不思議な喋る桃と シャワー通りを通る人たちに大声で呼びかけます。
 桃は桃で愚痴愚痴と愚痴をこぼし続けてはいるのですが誰も聞いてくれません。
 人々は、きっと中に人が入ってたり、テープか何か機械が入れてあるんばい、と 相手にしてくれません。通行人も実はみんな熊本県民だったのです。
 熊本県人のおじいさんは、すっかり不機嫌になり桃に八つ当たりをします。 蹴飛ばしたり、投げ飛ばしたり・・・。ぎやーぎやー桃は喚きます。 ダラが、くらしたろか、 (理解できない言葉は 「熊本弁講座」 を参照してください) と熊本県人のおじいさんは桃に怒鳴ります。

 そこに、予定通りお姉さんが通りかかりました。
 おや、熊本県人のおじいさんじゃなかね、なんばやっとっとね、と やっぱり熊本県人のお姉さんは熊本県人のおじいさんに話しかけました。
 い、い、い、いや、変な桃があったけん、みんなにも見てもらお、思てくさ、 とどもり始めました。おじいさんは博多っ子でもあったのです。
 熊本県人で博多っ子のおじいさんは、ふっと納豆ご飯のことが大脳皮質の左端で スキップしていきました。
 こりゃ、なんとかせんと、と熊本県人で博多っ子のおじいさんは悩みます。
 うん、家持ってかえって一緒に食おうかと思ってなぁ、熊本県人で博多っ子のおじいさんは 猫なで声(できればペルシャ猫)で純粋な熊本県民のお姉さんに言い訳を始めました。
 純粋な熊本県民のお姉さんは、 そうね今日はパチンコで芥子蓮根の真空パックでないほう、もろてきたけん 一緒に食べよう、と答えました。
 この桃じゃ、この桃をじゃよ、この桃を食おうと言うとるんじゃ。 ちなみに熊本県人で博多っ子のおじいさんは広島県民ではありません。
 もも?桃は嫌いなのよね。絣模様のジーンズに汁が付きやすいし、やっぱりピタゴラスの方が好きだわ。
 ぎゃん大きな桃ぞ。ぎゃんとぞ。と、熊本県人で博多っ子のおじいさんは、向きになって 桃を指さします。でもぉ、と純粋な熊本県民のお姉さんは口ごもります。でもぉ、ぎゃん大きかとは何か変じゃなかね、虫でも住んどりゃせんね。 虫なんかおりゃせんばい、なんなら中切って見てみったい。 この挑戦的な言葉で明日は納豆ご飯に決定したことには熊本県人で博多っ子のおじいさんは まだ、気付いてはいません。とにかく二人は桃を転がして家に持って帰ることにしました。 痛か、痛かって、と桃は大声で喚きます。桃もいつの間にか肥後っ子に染まっていたのです。 日本で、方言を恥じないのは大阪と横浜と熊本だという話がありますが本当でしょうか。もし 自分は日本中、世界中の何処ででも自分の方言を誇り思うという方はご一報ください。東京で 熊本弁の目立つこと、不思議です。大阪弁もよく聞きますよね。なかなか染まらないものですね。 でも、大阪より、熊本の方が染まるの早いですよ。

 桃を、どっこいこう、と言いながら家の中に二人は持ち上げました。 さあ、切るばい、と熊本県人で博多っ子のおじいさんはジャングルナイフを ポケットから取り出し大上段に振り上げました。 やや、止めてくれー、と桃は叫びます。勿論、桃に人権はありませんから、 熊本県人で博多っ子のおじいさんは、力一杯振り下ろしました。 ぱくっと、桃が割れた瞬間、中に潜んでいたMOMOの旦那がジャングルナイフを 真剣白刃取りしていました。や、MOMOの旦那だと純粋な熊本県民のお姉さんは 思わず大声で囁きます。熊本県人で博多っ子のおじいさんは、こりゃ、まるまると 元気そうなMOMOの旦那だばい、と目を細めます。MOMOの旦那は痩せて 胃潰瘍気味の胃をさすりながら、おぎゃーと一泣きしました。 このMOMOの旦那の名前は何と付けましょうか、と純粋な熊本県民のお姉さんは 熊本県人で博多っ子のおじいさんに尋ねます。 桃から生まれたから、桃太郎とするばい、と熊本県人で博多っ子のおじいさんは 答えました。 じゃあ、そおすっばい、と純粋な熊本県民のお姉さんは頷きました。

 そうしてMOMOの旦那の名前は桃太郎に決まりました。 桃太郎は、ときより栄養失調で入院しながらすくすくと育っていきました。

 桃太郎は、テレビニュースである日、鬼っ子ちゃんが熊本大学のダンスホールで 大暴れしているとの情報を得ました。 桃太郎は純粋な熊本県民のお姉さんに、おばあさん、僕、鬼っ子ちゃんを退治しにいくよ、 と言いました。
 純粋な熊本県民のお姉さんは、おばあさんじゃなかと、お姉さんと言え!と 怒鳴ります。
 ぎゃんなこと言うたって、もう八十越しとるだろう、だぁもお姉さんとは思わんばい、と言い返しました。純粋な熊本県民のお姉さんはブラックジャックで桃太郎の背骨をぶち折りながら、 女は二十歳からは年をとらんとよと、今度はメリケンサックで殴りつけました。
 桃太郎は、ごめんなさい、ごめんなさい、純粋な熊本県民のお姉さん、 と謝ってやっと許してもらえました。 こりゃとっとと鬼っ子ちゃんを退治してこの話を終わらせんと身がもたん、と考え、 純粋な熊本県民のお姉さんに、きび団子作ってと頼みました。 なんやそれ、と純粋な熊本県民のお姉さんは聞き返します。 よお、わからんけど、と桃太郎は答えました。 じゃあ、馬刺でよかろ、と言って、馬刺を包んでくれました。

 馬刺をお腰に下げて桃太郎は、鬼っ子退治に出かけました。 でも、鬼っ子ってどけさおるんばい、と桃太郎は考えました。 それで、鬼っ子の居場所を聞くために交番を探します。 交番はなかなか見つかりません。 ちくしょお、と桃太郎は呟きながら町中を歩いていきます。
 あっあった、やっと桃太郎は交番をみつけました。 交番に入ると犬のお巡りさんがドックフードを食べていました。 げっ、柴犬だ、あれはキャンキャン煩いんだよな、やだな、 でもこのままじゃ、鬼っ子ちゃんは見つからないし、 えい、一応聞いてみるか、ねえねえ、お巡りさん、 鬼っ子ちゃんは何処にいるの、柴犬のお巡りさんは、 ぎょろりと、桃太郎を睨みました。 うん、近頃珍しいMOMOの旦那か、なんのよう・・・おっ、そのお腰に下げた 馬刺を一つ私にくれないかと、柴犬のお巡りさんはおっぽを振りながら 言いました。 あげましょう、あげましょう、これから、鬼っ子ちゃんの征伐についてくるなら あげましょう。 でも、仕事もあるしなあ、 柴犬のお巡りさんは困ってしまってわんわんわわん、わんわんわわん、 わおおおおおおん、わんわん、わおぉぉぉぉぉぉん、と遠吠えを始めました。 という訳で、桃太郎のお供になりました。
 ところで、鬼っ子ちゃんは何処にいるんだい、と桃太郎は柴犬のお巡りさんに尋ねました。 MOMOの旦那、鬼っ子ちゃんは鬼ヶ島にいるって噂でっせ、と答えました。 MOMOの旦那はやめろ、MOMOの旦那は、僕には桃太郎という名前があるんだ。
 で、その鬼ヶ島って何処にあるんだい、と桃太郎が柴犬のお巡りさんに聞くと、 柴犬のお巡りさんは、それは、熊本城の近くにあると聞いたことがあります、と 答えました。桃太郎は、なんか、RPGみたいになってきたなと、呟きながら、 じゃあ、熊本城まで行くか、と言いました。

  桃太郎はアイテムが馬刺だけなのは寂しいから何か他のアイテムが欲しいな、 と考えながら柴犬のお巡りさんと歩いていると、 大きな臼の下敷きになって藻掻いている猿を見つけました。 これは、可哀想だ、きっとここで助けるとまた家来になってあとで 助けてもらえるに違いない、ほんとに可哀想だと思い、 柴犬のお巡りさんに命令して臼を除けさせようとしました。 合点でさ、と言って柴犬のお巡りさんは臼のところに走っていきました。 柴犬のお巡りさんが臼を一生懸命押し始めると、 臼が怒鳴って、何邪魔するんだ、いま、この猿を懲らしめているんだ、 この猿はな、蟹がせっせと育てた・・・と言うのも聞かずに、柴犬のお巡りさんは 臼を押し倒し猿を助けました。 やあ、ありがとう、と猿は柴犬のお巡りさんに言いました。 なあに、いいってことよ、で、何でこんな目に、と柴犬のお巡りさんは尋ねます。 いやぁ、昔、蟹がおにぎりもってたんで、柿の種と交換したんだよ、 そうすると、蟹はバカだから、お菓子の柿の種を本物と勘違いして、 こんな柿の木まで育てたんだ。 まあ、どうせ、蟹は木の上まで上れないから俺が登って代わりに 柿を食ってたんだ。すると、蟹が生意気にも俺のもんだから、 全部俺によこせとかいいやがって、俺は柿を投げつけてやったのさ。 それで、蟹の奴、柿で買収して臼とか、栗とかで俺を闇討ちにかけやがったんた。 そりゃひどい、と柴犬のお巡りさんも頷きました。
 猿は、目敏く桃太郎の馬刺に気づきました。MOMOの旦那、MOMOの旦那、そのお腰につけた馬刺を一つ私に下さいな。いやだ! 桃太郎は言下に断りました。 なしてやねん、ここで、あげましょう、あげましょう、これから鬼っ子ちゃんの征伐についてくるならあげましょう、というのがお約束でしょう。おみゃーは関西人か、なして熊本弁使わんとや、こうしてやる、と桃太郎は猿にジャンピング手のひらを繰り出しました。猿はロープに飛びジャンピングヒップアタックで対戦だ。おおっと、桃太郎、猿の片足をつかんで、おおっ、スープレックスだ、これはキャプチュードですね、小鉄さん、ええ、うまいタイミングで決まりましたね、これは利きましたよ。こうして猿は、桃太郎のお供になりました。

 桃太郎は、上通りから下通りと交差点を渡りました。
 ここで、数少ないマニアックな読者より質問がきています。「昔々、ずうっと南の島におじいさんとお姉さんが住んでおりました。」で始まる物語なのにどうして南の島にシャワー通りや熊本城があるのですか。
 答え(1)しらん!(2)九州も南の島です(3)あんた、熊本県人でしょ
 お好きな答えを選んで下さい。

 桃太郎は露店でジーンズを売っている前で立ち止まりました。他にもいろいろな洋服が無造作に並べられています。なかなか、色鮮やかだねと、店の主人の雉に桃太郎は話しかけました。
 雉は桃太郎に得意げに自分の生地が上等であることを得々と説明し始めました。おーっほっほっほっほ、と雉は自分の生地が記事にまでなったことを話し始めました。桃太郎はだんだん自慢話を聞くのにも飽きてきました。そうして、桃太郎がふっと視線を雉の首筋に落とすとなんと、白いわっかに気がつきました。きさま、朝鮮半島からきた不法労働者だな、桃太郎は叫びます。なな、何を根拠に、雉は古来より日本にいる正当な在来種だぞ、雉も怒鳴り返しました。ふっふっふ、ネタは上がっているんだ、その首の白い輪は高麗雉の証拠だ。なな、なにをおっしゃるやら、高麗雉は故意に日本に移入された、正当なピザを持ってるのですぞ。煩い、ごたごた言わずに朝鮮半島に帰れ。
 い、いやだ!! 朝鮮には帰りたくなか。と雉は泣き叫びます。煩い、じたばたするな!桃太郎は怒鳴りつけます。そこに、猿が桃太郎に耳打ちしました、MOMOの旦那、この雉、きっと小銭貯めとりまっせ、仲間にしたら、銭にこまらへんとちゃうか。桃太郎はMOMOの旦那と呼ばれたことにむっとして猿を殴りつけたあと、雉に向かって鬼ヶ島へ鬼っ子ちゃんの征伐についてくるなら許してやる、と偉そうに言いました。はいはい、行きますよ、いきゃいいんでしょ、もう。と雉は喜んで桃太郎のお供になりました。
  桃太郎は犬と猿と雉を連れて熊本城の鬼ヶ島へと向かいました。信号あり、横断歩道ありの、辛く長い道のりを桃太郎の一行はやっと熊本城にたどり着きました。桃太郎たちは、あの時の赤信号で待たされたのは辛かったなとか、とか言いながら入場料を払って熊本城に入っていきました。
 
熊本城の城内は神経繊維のように入り組み、なかなか天守閣の場所まで行き着けません。
  どぎゃんしようか?桃太郎は猿に尋ねました。
  どぎゃんもこぎゃるもなかばい、今日はここで野宿しましょうと犬のお巡りさんが提案しました。
  すると鬼っ子ちゃんがなまず堂で買ってきたプレミア付きの写真集を胸一杯に抱えて雉の前を素早くこそっと走り抜けていきました。

・・・挫折

続きを読みたい方がいれば作成しますのでメールをください

「鬼っこ面白いです。 続き書いて下さい!」とメールを貰いましたのでぼちぼち復活させようかと考えているこのごろです。

続編: 鬼っ子物語2