2次方程式の解法


K を体とします。 z0、z1 を変数とし、 K の元を係数とする多項式の集合 R = K[z0,z1] 上の多項式 (X - z0)(X - z1) を考えます。
a = - ( z0 + z1 ),
b = z0z1
とおくと、

X2 + aX + b = (X - z0)(X - z1)
となります。 ここで z0、 z1 を a、 b を使って表すことを考えます。

Z = { z0, z1 } と置きます。 Z から Z への全単射の全体を S とすると、 S は次の表で定義される2つの元 s0、 s1 からなる集合となります (s0 は恒等写像です)。 この表は、 Z の元 zi の S の元 sj による像 zi . sj を表しています。
s0s1
z0 z0z1
z1 z1z0
S の元 si と sj の合成 si . sj を、任意の Z の元 z に対して、 ( z . si ) . sj = z . ( si . sj ) となるものとすると、 si . sj は次の表のようになります。
s0s1
s0 s0s1
s1 s1s0

s を S の元とします。 R の元 r は、r = c00 z00z10 + ... + cij z0iz1j + ... という形の有限個の和なので、 r . s = c00 (z0.s)0(z1.s)0 + ... + cij (z0.s)i(z1.s)j + ... と定義することによって、s は R から R への写像と考えることができます。 R から R への写像 u、v に対して、u + v、u - v、uv、un
r.(u + v) = (r.u) + (r.v),
r.(u - v) = (r.u) - (r.v),
r.(uv) = (r.u)(r.v),
r.(un) = (r.u)n
と定義します。

s1 . s1 = s0 なので

f1 = s0 - ( s0 . s1 )
とおくと、 f1 . s1 = ( s0 . s1 ) - s0 = - f1 となります。 したがって、
f12 . s1 = ( f1 . s1 ) 2 = ( - f1 ) 2 = f12
となります。 よって任意の S の元 s に対して f12 . s = f12 となります。

X2 + aX + b = (X - z0)(X - z1) の X に z0 を代入して、 z02 + az0 + b = 0 より

z02 = - az0 - b,
X2 + aX + b = (X - z0)(X + z0 + a) + z02 + az0 + b = (X - z0)(X + z0 + a) なので X + z0 + a の X に z1 を代入して、 z1 + z0 + a = 0 より
z1 = - z0 - a
となるので、これらを代入すると、 R の元 r は、z1 の次数は0次、z0 の次数は1次以下に することができます。 よって、 r = cz0 + d (c、d は、a、b の多項式) と表すことができます。 S の任意の元 s に対して、r.s = r であるとすると、 r.s1 = r であることから、cz0 = cz1 となります。 c は z0、z1 の多項式なので、 c が 0 ではないとすると、 cz0 の z0 に関する次数 = c の z0 に関する次数 + 1、 cz1 の z0 に関する次数 = c の z0 に関する次数、 となるので、 cz0 = cz1 が成り立たなくなります。 よって、c = 0 となるので、r は a、b の多項式で表すことができます。

よって任意の R の元 x に対して x . f12 は a、b の多項式で表すことができます。 とくに z0 . f12 = ( ( z0 . s0 ) - ( z0 . s0 . s1 ) ) 2 = ( z0 - z1 )2 = z02 - 2z0z1 + z12 = z02 - 2z0(- z0 - a) + (- z0 - a) 2 = 4z02 + 4z0a + a2 = 4(- az0 - b) + 4z0a + a2 = a2 - 4b となります。

X2 + X + = 0
z02 =
z1 =
z0 . f12 = z02 - 2z0z1 + z12

R の元 x に対して y2 = x を満たす R の元 y が存在するとき、 そのようなものの1つを x1/2 と書くことにします。 すると、(-x1/2)2 = (x1/2)2 = x となるので、-x1/2 も上の条件を満たします。 R の元 z が z2 = x を満たすとすると、 z2 = (x1/2)2 となるので、 (z - x1/2)(z + x1/2) = 0 となって、 z = x1/2 または z = -x1/2 となります。 よって、 z0 . f1 = (a2 - 4b)1/2 または - (a2 - 4b)1/2 となります。

p = (a2 - 4b)1/2 または - (a2 - 4b)1/2 とおきます。

f0 = s0 + ( s0 . s1 )
とおくと、 z0 . f0 = z0 + ( z0 . s1 ) = z0 + z1 = -a、 z0 . f1 = z0 - ( z0 . s1 ) = p から
z0 + ( z0 . s1 )=- a
z0 - ( z0 . s1 )=p
となり、これより
z0 =(- a + p) / 2
z0 . s1=(- a - p) / 2
となって、z0、z0 . s1 は (x1/2 という記法を使えば) a、b の式で表すことができる ということがわかります。




上に述べた式
z0 + ( z0 . s1 )=- a
z0 - ( z0 . s1 )=p
に s1 をほどこすと
( z0 . s1 ) + z0=- a
( z0 . s1 ) - z0=p . s1
となるので、p . s1 = - p であり、 p = (a2 - 4b)1/2 としたときの z0 は p = - (a2 - 4b)1/2 としたときの z0 . s1 であり、 p = (a2 - 4b)1/2 としたときの z0 . s1 は p = - (a2 - 4b)1/2 としたときの z0 であり、 p = (a2 - 4b)1/2 としても p = - (a2 - 4b)1/2 としても、 z0 か z0 . s1 のどちらかに z0 が得られる ということがわかります。 (参考文献)