終末論

終末の時代に起こること 第5章

復興ローマ帝国

聖書が預言する終末の「十か国の同盟国」とは何か


ヒトラーは、神聖ローマ帝国の復興を目指した

 聖書の預言研究者のなかには、終末の時代にロ−マ帝国が復興するであろう、との考えをもっている人が少なくありません。実際、聖書預言を文字通り解釈するならば、かつてのローマ帝国は、その末裔の国々の中から「十か国の同盟国」として復活するはずです。


ローマ帝国に関する聖書の預言

 ローマ帝国に関する預言は、旧約聖書の『ダニエル書』にでてきます。
 ダニエル書は、ユダヤ人がバビロン帝国に捕囚となっていた時代(紀元前六世紀)に、ユダヤ人ダニエルが記した預言書です。その預言においてローマ帝国は、バビロン帝国、メド・ペルシャ帝国、ギリシャ帝国に続く「第四の国」(ダニ二・四〇)として示されています。例えば、
第四の国は、鉄のように強いでしょう。・・・・それは分裂した国(で)・・・・その国は一部は強く、一部はもろいでしょう」(ダニ二・四〇〜四二)
 と記されています。その通り、第四の国ローマ帝国はそれまでの帝国に比べ、「鉄」のように比類ない強さを見せた国となり、破竹の勢いで諸国を征服していきました。
 しかしそのローマ帝国も、やがて東西に分裂。西ローマ帝国は五世紀にゲルマン民族の侵入を受けて、もろくも滅び、一方東ローマ帝国は、その後も約千年の間存続しました。
 預言者ダニエルはさらに、このローマ帝国の時代にイエス・キリストが降誕されることも、預言しました。
 「これらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく・・・・この国は立って永遠に至るのです」(ダニ二・四四)。
 ダニエルは、神に属する王国、すなわちキリストを信じる人々をその民とする国が、キリストによってローマ帝国の時代に立てられると預言したのです(ダニ二・三四参照) 。
 これはキリスト教会とそれに属するキリスト信者が、全世界に起こされていったことによって、成就しました。
ダニエルのその後の預言においては、この「第四の国」は、さらに終末の時代の事柄と深い関係をもって見られています。ダニエルは続く預言において、「第四の国」の終末における姿を、「第四の獣」と呼ばれる象徴的な幻の中に見ています。
 彼が幻のなかに見たという「第四の獣」は、
「恐ろしい、ものすごい、非常に強いもので、大きな鉄の歯があり、・・・・その前に出たすべての獣と違って、十の角を持っていた」(ダニ七・七)
とあります。この十の角をもつという第四の獣の幻の意味は、何でしょう。こう記されています。
 「第四の獣は、地上の第四の国である。これはすべての国と異なって、全世界を併合し、これを踏みつけ、かつ打ち砕く。十の角は、この国から起こる十人の王である」(七・二三)。
 このようにダニエルの預言の中では、「国」が、しばしば象徴的に「獣」として表現されて登場します。例えば、メド・ペルシャ帝国は別の預言の中では、「二つの角のある雄羊」と象徴的に呼ばれています。
「あの二つの角のある雄羊は、メデアとペルシャの王です」(八・二〇)
 ここで「二つの角のある」と言われているのは、メド・ペルシャ帝国が、メデアとペルシャの二つの国の連合によってなる国であったからです。
 同様に、「第四の国」すなわちローマ帝国は、「十の角をもつ」獣として表現されています。これは、メド・ペルシャ帝国の場合と同じく、ローマ帝国が十か国の同盟国からなるということ、あるいは、終末の時代にローマ帝国は十か国の同盟国として復興する、ということを意味しているようです。
 実際ヨハネの黙示録にも、終末の時代に十か国の同盟国が現われることが預言されており、それらの国々は、
「心を一つにしている」(黙示一七・一三)
と記されています。この十か国の同盟国とは、何なのでしょうか。またローマ帝国が復興する、というようなことが、本当にあるのでしょうか。


ローマ帝国は復興するか

 東西に分裂する前のローマ帝国は、地中海沿岸地域からヨーロッパにいたる広大な世界を支配していました。それは強さと、統治の巧妙さにおいて並ぶもののない、巨大な世界帝国でした。
このローマが東西に分裂し、さらに西ローマ帝国が滅亡してからは (五世紀)、そのように強大な世界帝国は、現在に至るまで世界に現われていません。
 しかし西ローマ帝国の滅亡後、ローマ帝国を復興させようとする動きが、幾度か見られました。ローマ帝国が残した世界帝国の夢は、ヨーロッパ人の間に強く息づいていたのです。
 西ローマ帝国滅亡後に、ヨーロッパにおいて最大の王国に成長した「フランク王国」は、その王チャールズ大帝の時代に最盛期を迎え、その領土はほとんど西ローマ帝国の旧領に匹敵するにいたりました。そのために彼は、八〇〇年に「ローマ皇帝の帝冠」を受けます。
 世界史におけるこの有名な出来事は、フランク王国において"西ローマ帝国が復興した"ものとして見られ、その後の世界に大きな影響を与えました。
そしてその後、フランク王国が分裂した後も、チャールズ大帝のローマ帝国再建の理想は、人々の間に引き継がれていきました。当時の混乱していたヨーロッパに現われたドイツのオットー一世は、その後確固たる勢力を築き上げ、その強大な国家は、やがて「神聖ローマ帝国」と呼ばれるようになります。
 この「神聖ローマ帝国」は、九六二年に始まって一八〇六年にいたるまで、約千年ものあいだ続いた国で、世界史の中ではつい最近まで存在していたのです。
また、神聖ローマ帝国が解体する二年前の一八〇四年、フランスで帝位についたナポレオンは、ローマ皇帝の帝冠を自分自身で載冠し、ローマ帝国の皇帝の地位についたと称しました。
 神聖ローマ帝国(通常「ドイツ第一帝国」とも呼ばれる)の解体後も、ヨーロッパ人の間には、"ローマ帝国"が生きていました。二〇世紀に入って、あのアドルフ・ヒトラーが建設しようとした「ドイツ第三帝国」は、ゲルマン民族の帝国であった神聖ローマ帝国を復興し、かつてのローマ帝国のような世界帝国を築き上げようとした野望であったのです。
 一九四〇年二月一七日付けのニューヨーク・タイムズ紙には、カトリック司祭エドモンド・A・ウォルシ博士のナチに関する報告記事があり、こう述べられています。
 「アドルフ・ヒトラーが、ゲルマン民族の帝国であった神聖ローマ帝国は再興されなければならないと語るのを、ウォルシ博士は聞いたと述べた」。
 このように、古代ローマ帝国の滅亡以後も、"ローマ帝国"はヨーロッパ人の間に根強く生き続けてきました。そして終末が近づいたこの時代に、ローマ帝国は聖書の述べている終末の世界帝国として、復興するのでしょうか。
 先に述べたようにローマ帝国は、終末においては、十か国の同盟国として復興するように思われます。この「十か国の同盟国」は、いったいどの国々なのでしょうか。
 ヨーロッパ連合「EU」が、加盟国をしだいに増やし、一〇か国になったとき、それをこの「十か国の同盟国」とみた人々もいます。しかしEUは、現在、一〇か国を大幅に越える加盟国数となっています。EUは、西ローマ帝国の末裔ですし、将来、強力な軍事的同盟国となる可能性はないとは言えません。終末の時代に現われるという十か国の同盟国が、ヨーロッパの国々である可能性も確かにあるでしょう。
 しかし可能性のあるのは、EUだけではありません。私たちは東ローマ帝国の末裔にも、注意を向けなければならないのです。東ローマ帝国の末裔である旧ソ連においても、"ローマ帝国"は根強く生き続けているのです。
 かつてロシアの皇帝たちは、モスクワを「第三のローマ」と呼んでいました。またロシア大公は、ローマ皇帝の称号「カエサル」の変形である「ツァー」を、称号として用いました。


モスクワのクレムリン。ロシア皇帝たちは
モスクワを「第3のローマ」と呼んでいた

 また現在、旧ソ連の解体後、そこには強大な国ロシアと、他の十か国からなる「独立国家共同体」(CIS 計一一か国)が誕生しています。しかしこの共同体はうまく機能していないので、新たな共同体をつくることも模索されているようです。
 「終末の十か国の同盟国」、および彼らを率いる「独裁者」または独裁者の国が、本当はどこなのかが明確になるためには、もう少しの時間が必要でしょう。
 「彼ら(十か国の同盟国)は・・・・自分たちの力と権威とを『獣』(ここでは独裁者のこと)に与える」(黙示一七・一二)。
 聖書は、十か国の同盟国は、終末の時代に世界に現われる恐るべき世界的独裁者に権威を与え、その独裁者に協力する、と預言しているのです。この世界的独裁者が現われ、世界を荒らしまわる時、「十か国の同盟国」の正体も、ともに明らかになるに違いありません。


千年続く国

 かつてローマ帝国は、共和政国家ローマとして誕生してから西ローマ帝国の滅亡までが約千年(紀元前五一〇頃〜紀元四七六年)。そしてその後も東ローマ帝国は、やはり約千年( 〜一四五三年)続きました。
 また、ローマ帝国の帝国主義を継承した神聖ローマ帝国も、やはり約千年(九六二〜一八〇六)続いた国でした。
さらには二〇世紀になって、あのナチスのヒトラーは、
「国家社会主義ドイツ帝国は、千年続くであろう」
 と豪語しました。しかしヒトラーの国は、わずか数年で滅びました。終末の時代に起こる復興ローマ帝国も、同様に長く続くことはありません。
 というのは聖書の預言によれば、神はそのとき人間による一切の帝国主義に終止符を打ち、それに代わって「千年王国」と呼ばれる、イエス・キリストによる至福の王国を地上に樹立されるからです。
 かつてイエス・キリストは、ユダヤの国がローマ帝国の支配下にあり、その属国となっていた時代に、降誕されました。そしてそれ以後、ローマ帝国内に増えていったキリスト信者たちは、数々の迫害にもかかわらず、その勢力を伸ばし、やがて信教の自由を獲得し、さらにローマの国教とされるに至りました。
当時ローマは、言わば、キリスト教によって征服されたのです。
 同様に、イエス・キリストが再臨される時も、世界にはローマ帝国、あるいはそのような大帝国が君臨しているでしょう。その時キリストは世に来られて、そうした人間の帝国主義を、ご自分の「千年王国」の至福の統治に取って代わらせて下さるのです。
 現代世界は、ある意味では、古代ローマ帝国の末期社会によく似ています。エドワード・ギボンが著した『ローマ帝国衰亡史』によれば、ローマ帝国崩壊期において見られた社会の五大特徴は、次のようなものでした。
 1 見世物とぜいたくへの好みが生じた
 2 貧富の差が激化
 3 性的なものへの執着と性的倒錯
 4 芸術における気まぐれさ
 5 国を離れたがる傾向
 これら五つの特徴は、現代世界においては、すべて聞きなれたものです。今や多くの学者は、現代世界が古代ローマ帝国の崩壊期の状況に似てきていると、考えています。
 現代世界も、すでに人類の歴史における、末期の時代をむかえているのかも知れません。そして、ローマ帝国によって代表される人間の帝国主義と、人間の腐敗した文化にも、終わりの時が近づいているに違いないのです。
 人間は現在まで、神をぬきにして、人間だけで平和で幸福な社会を築けるかのように、歩んできました。しかし人間は、恒久的な平和を、あるいは永続的な幸福の社会を、築き得たでしょうか。
 いや現代社会ほど、人間が自分たちだけでは真の平和と幸福の社会を築き得ない、ということが明らかになっている社会はありません。私たちは現在では、平和を望みつつ大戦争の不安におびえ、幸福を望みつつ様々の不幸に悩んでいます。
 世界の大国間には、息詰まる緊張関係が続き、核戦争、あるいは第三次世界大戦への不安は今日も消えません。アフリカなど、ききんに悩む国々の数は増加し、環境汚染は、ますます生物を住みにくくしています。
道徳は退廃し、人々の心は荒れ始めています。この世界は、真の平和と幸福から程遠いのみか、ますます遠ざかっているように思えます。このままでは、世界は取り返しのつかない状況にまで行ってしまうことでしょう。
 聖書の預言を待たずとも、神をぬきにした人間中心の文化であるこの世界が、どうしようもないような状況に進んで行ってしまうことは、ある意味では自明のことなのです。実際、終末の時代には、古代ローマ帝国のような世界帝国が"復興ローマ帝国"として再び台頭し、おそるべき帝国主義支配をなすようになるでしょう。
 そして人類は、最後の悪を神の前に積み上げるのです。しかしそれも、真の平和と幸福に満ちた新しい世界が来る前の、この古びた世界の末期的現象でしかありません。
 終わりの日に悪が栄えるのは、悪が永遠に滅ぼされるためです。聖書が言っているように、
 「悪者どもが、青草のように、もえいでようと、不法を行う者どもが、みな栄えようと、それは彼らが永遠に滅ぼされるためです」(詩篇九二・七)。
つまり神は、終末の時代に復興ローマ帝国が現われた時、その暴政と腐敗した文化を破滅させることによって、ご自身の存在を人々に知らせられることでしょう。そしてご自身の、
 「聖なることを諸国民の目の前にあらわされる」(エゼ三八・一六)
のです。

久保有政

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