筋肉・内臓・骨格

  1. 解剖図−ありのままに見ることのむずかしさ

     「体のからくり」が長い間わからなかったのは、解剖など、体を調べるための手段が、宗教的な理由から制限されていたからでしょう。
     それに加えて、「体を動かす原理は○○である」というそれぞれの時代の主流であった理論が精神的な障壁になって、多くの研究者の目から事実を隠していたのです。

    • ガレノス

       ローマの開業医であったクラウディウス・ガレノスは、初めて医学的な体系を生み出した、古代医学の権威です。彼は動物の解剖をもとに人体のからくりを理論化しましたが、そこには誤りもありました。しかし、ルネサンスに至るまでアリストテレスが学問の規範であったのと同じく、彼の理論は16世紀まで医学の中心でした。

    • レオナルド

       レオナルド・ダ・ヴィンチが多くの解剖図を残していることはご存知でしょう。生物、無生物に関わらず自然の存在を冷徹に見つめたレオナルドでしたが、解剖図には不正確なところもありました。しかし、見たままを描くという描写法は、後の解剖学者に大きな影響を与えました。

    • ヴェサリウス

       アンドレアス・ヴェサリウスによる『ファブリカ(人体の構造)』(1543)は解剖書の革命でした。彼は生きた人間の動きを骨格・筋肉の見える図像で再現しました。この考え方は、今でも医学研究の中に生きています。現代の医学では、生体の働きを生きたまま観察できるMRI(核磁気共鳴装置)などの装置が開発されています。これは近代医学の目標である「生きている人間の分析」が、ある面では実現されたということでしょう。

  2. プラスティネーション

     ポーランド生まれのグンター・フォン・ハーゲンス博士(ハイデルベルク大学)が開発した「プラスティネーション」は、「からくり」としての身体を誰もが見られるように保存する技術です。これによって、私たちは再び精妙な機械としての人体を見直すことができました。

    • 筋肉

       筋肉は、人間にとって最も「自分の意志で動かしている」という気持ちになれる部分です。しかし、「肩凝り」などに見られるように、無意識的な緊張がいつのまにか体を支配していることもあります。体にも体の「意志」があるようです。

    • 内臓

       内臓は、筋肉と違って自分の意志では動きませんが、感情やストレスに強く支配される器官です。脳が体を支配していると言われますが、内臓の調子が気分を左右するのもまた事実です。

    • 骨格

       下のリンクをクリックして、骨を回してみて下さい。

      骨格の Quick Time VR 画像
       (ムンクの『叫び』より)