蕎麦は所詮味のないもの。
それを如何に美味しく食べるかが、食べる側に許された楽しみ方の1つである。
汁に凝る人、種物に箸をのばす人、それぞれであるが、「薬味」にその責任を持たせるのも、気楽に出来る「味冒険」である。
山葵、トロ、ネギ、海苔、唐辛子などたくさんあるが、今回はおろし大根を紹介したい。
長野県下伊那郡下条村で採れる
親田からみ大根(右の写真)がそれである。
小振りの逆円錐系をしており、一般に出回っている青首大根と比べるとかなり寸づまりである。
そんな体型からは感じとれない頑固な辛さを自慢しているが、おろすしか使い道がないのも面白い。
汁に入れて付けて食べるのもよし、蕎麦に直接付けるのもよし。
ピリッとした直線的な辛さが口に突き刺さると思えば、さっぱり感が充満し、そこへ瞬間に蕎麦のシコシコ感がはっきり味わえる。
口が自然に汁を求め、さらに舌先で辛さが増し、スーと息を吸う。
辛さが地獄であれば、地獄で会った仏様は、あのシコシコ感であろう。
注文を言わせてもらえるなら、2番粉で打った固めの蕎麦が合いそうである。
仏様を想像して、蕎麦粉は少な目の7割でお願いしたい。猛暑の中でも食べてみたい逸品である。
そば粉 | 茨城県久慈郡水府村国安
知人宅で栽培されたまぎれもない純国産100%もの (水府村そばは、滋久庵で味わえる。昔はタバコの裏作につくっていたようだ。 とにかく、アクが強いと言うか香りが高いと言うか滋味に富んだ粉である) |
つゆ | 玄蕃蔵(ヒゲタ醤油製)を生で使用。 |
薬味 | 信州親田からみ大根を別皿に山盛り一杯添える。 |
打ち方 | 知人の母上のそばの記憶を辿って腰のある田舎蕎麦を試作中。 当地では、そば、つなぎ=5:5で打つそうだ。 但しこの場合は、かさ比であって重量比では7:3になるそうだ。
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特徴 | とにかく辛い。ツンと鼻に抜けると一瞬気が遠くなる。 そのまま天国に行けそうなそばである。 → 地獄そばは前回のみの名称とし、今回から「極楽そば」と命名する。
一口食べただけで、腸の蠕動運動が開始する。便秘の方には、特効薬となりそう。 |
合う酒 | 神亀、土佐の荒々しい酒 |
名 称 | 店 名 | 辛味大根産地 |
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地獄そば | 池袋 「生粉打亭」 | 北山(北信州のねずみ大根?) |
おろしそば | 神田 「いしい」 | 京都 |
おろしそば | 立川 「蕎麦本陣」 | 秋田 |
(薬味) | 新宿 「吉遊」 | 信州下伊那下条村親田 |
おろしそば | 新橋 「天祥庵」(本陣房/竹泉) | 信州下伊那下条村親田 |