「お便り そして Q & A!」 


その1:お便り

練馬区OさんよりE−mailをいただきました。
「ソバの科学」を贈呈下さるとのこと、早速連絡をとったところ、直ぐ送って下さった。想像以上の本でした。

Oさんはかなりの「そば通」であることが、端々に伺える。昔は月に20枚以上食べていたとか。

いずれ、多くの方がこのコーナにアクセス頂ければ、オフライン・ミーティングを持ちたいと思います。


その2

 Q:このコーナーがとりあげるそば屋の要件に「予約の必要がない」とあるのはどうしてですか。

 A:理由は3つあります。

  @予約の必要な店は、ほとんど他の図書で紹介されている場合が多く、
   「他で取り上げらていない」多摩の身近なそば屋を発掘する当コーナーの対象になりません。

  A本で紹介された有名店で、そばをいただくのは仲々大変なことです。
    ・地図が判りにくい
    ・ようやく辿りつくと定休日、売り切れ仕舞だったりする。
    ・さて今日こそとなっても予約が無いと可成り待たなければならない。
     「手軽にいただける」のが「身近なそば屋」と言えると思います。

  B予約制の店は「そば懐石」中心と思いますが、当コーナーは「ざるそば」をメインにしているため、
   やや方向が異なるのです。


その3 

 Q:”身近なそば屋レポート”のポイントに「そばは手打ちであること」とあるのは、何故ですか、又手打ちとは
   どういう意味ですか。

 A1:駅そばや食堂のそばは、どこかで機械力により集中的に作られたもので、さすがに乾麺は無いものの、
   半生状態で配達されて来るものと思います。
   実際に手打ちしているかどうかははっきりしませんが、うまいと感じるのは手打ちという事で取り扱っています。

   「手打ち」の意味は専門書に譲ります。なお、(社)日本麺類業団体連合会「そば・うどん百味百題」によれば、
   「...一方、高級店は座敷を設け、「手打ち」あるいは「生蕎麦」を看板にして、二八そばとのグレードの違いを
   強調した。もちろん、製麺機の無い時代のことで、どちらも手打ちには変わりはないのだが、精製という意味で
   あえて「手打ち」といったまでのことである。と明快に説明されています。

   しかし、何故、”打つ”というのかは不明です。延し棒を用いて延伸させる方法が開発される前は手でタタク
   ことにより平たく延ばしたであろうからこれを打つと云い、手延べと区別したと考えると説明はつきますが、
   新島繁著”蕎麦の世界”P55に中国12世紀の「三才図絵」の挿し絵に延し棒に巻かれた図が掲載されてます。
   そして、上述の2書によれば、江戸時代、そば切りの語はあっても、そば打ちの語は無い様で、”打つ”の意味は
   不明です。

   本当に何故”打つ”というのでしょうかねー!

 A2:新宿「きんかん亭」でそば焼酎のそば湯割りを飲みながら、ドンドンという低音でリズミカルなそば切りの音を
   聞いているうちに、ふと「何故手打ちと言うのですかねえ」との質問が口をついて出てしまった。
   聞いて来ますと言って奥に隠れたがすぐ戻って来て「業界用語で”切る”ことを打つという。
   「打ちもの」と言う呼び方があり、切ったそばのことを云う」との、明確な解答があった

   当店の客には教養人が多いらしく、その筋の権威に確認しておきます明日いらっしゃい、ということで数日後訪ねると、
   「切ること、あるいは一連のそばをつくる行為」を指すと言語学風な解説が得られた。

   水を打つ、投網を打つと云う場合のうつには、”広げる”の語感を含んでいる。そこで、広辞苑を見ると次のようにある。
     うつ【打つ、討つ、撃つ】
       (1)ある物を他の物に瞬間的に強くあてる
          F金属をうち鍛えて製品をつくる
          G麺棒でたたいてそば・うどんなどをつくる
       (2)(得物などで)きずつけたおす
          @武器などで打撃を与え、敵を倒す。ころす。斬る。
       (3)(遠くへ投げる意から)
          A投げて広げる
          B網で鳥をとらえる
          Cまく
       (4)転じて、あることを行う意
          Dかけひきしてある方策を行う、「新しい手を打つ」
          Eあるしぐさをする

   「うつ」は、元々「打ちつける」の意から派生し、様々な目的語と組み合わさり広範な動作・行為をあらわす言葉
   であることを再認識させられる。

   そこで、新説・珍説「手打ちそば」...時代考証一切無し、想像の世界より

    ・手打ちそばが先か、手打ちうどんが先かそれは曖昧にしておいて、
    ・その昔、うどん・そばは手又は棒で叩いて広げた。それ故「うどん・そばを打つ」と云い、
     うどんをつくる=うどんを打つ が言葉として確立、市民権を得た。延し棒を転がして延ばす
     技術を発見したのは後のこと、あるいは最後の均一な厚みを出す仕上げ工程でのことだった。

    ・当初は、それを食するに、果たして細く切ったものかどうか。何れにしても、打つという言葉が定着して以降
     細切りして煮るなり、つゆをつけるなりする食べ方が考案され、「そば切り」と称する様になった。
     (延ばす目的が細く切るためではないということが、本説のウィークポイントであるか)

    ・そうこうするうちに、強いコシを出す為に寝かせたり、つなぎや塩分に工夫をこらしたり、こね方にも
     足で踏んだりする等の技術改良がなされたか、一連の製造行為を「うつ」と称する語は
     既に出来上がった言葉として定着しているので、引き続き用いられた。

    ・家庭での食品が店売りされる様になり、インフレや物資不足の時代もあったり、高級品がもてはやされる時代も
     あったりして、何時の頃からか、食べ物を「足で踏んだりしないで、手でつくる」手づくりの謹製品の意味から
     高級品を差別する呼び方として、「手打ちうどん・そば」と云う語が生まれた。

   ところで、「信州戸隠手打ちそばの技術」;戸隠そば商組合、旭屋出版 P27には、次ぎの様に解説されている。
     戸隠そばの打ち方を見れば、そばをつくる事をなぜ”打つ”というのかがよく分かる。江戸前のそばは、
    一般的に数本の麺棒を使って四角く延ばしていく。それに対して、戸隠そばは1本の麺棒だけで丸く延ばしていく
    ”丸延ばし”だ。この延ばし方が特徴的で、生地を麺棒に巻き付けて転がし引き戻す時にトントンとそばを
    延ばし板に打ちつける。まさに手打ちと云われる所以である。


その4 

 Q:”まちそば”の語感について問う・・・”田舎そば”の反語!

 A:1998年4月初め、関東以北に4月にしては何十年振りかの大雪が降った。
   その大雪の中、人通りもほとんど絶えた20時30分頃、山形市駅前メインストリート徒歩5分小路を入ったそば屋に
   うら若い女性が1人でやって来てそばを食べた。めずらしい光景だ。所作、言葉使いにしっかりとした日本的しつけを
   感じる。酒は十四代あるいは黒縄を推薦すると言う。聞けば毎月一度アイルランド研究会出席のために上京している由。
   益々興味が高まる。その彼女が何気なく使った言葉である。

   問い質してみれば何でもない事だろう、普通の月並みな答えが返って来るに違いない。しかしです、
   この”まちそば”には、言った本人も気付かない大いなる示唆に富んだ内容を含んでいる様な気がしてならない。

   皆様、”まちそば”、どの様に解釈しますか。

   お便りお待ちします。  h5m7a3h2@mxa.mesh.ne.jp


バーチャルそば屋に戻ります 。