それは「徹底した外部業者とのパートナーシップの構築」ということになると思う。病院という施設の「本来の使命(ミッション、Mission)」を考えてみたい。病を治療すること、さらにはヘルスケアの中心として機能していくことであることは自明であろう。そして物流管理、ソフト開発を含むシステム構築は決してミッションではないことも理解いただけると思う。
もちろん、現場としてのニーズやノウハウはたくさん持っている。しかし、そのニーズに応える仕組みは病院が多くの人的、経済的資源を使って行う必要がないのではないかと考える。
当院は一貫して進取の気質を持ち、また技術力、実行力を持つパートナー企業とともにシステムを構築してきた。そこでは当院のノウハウをすべて明らかにすることを担保とした。そして、そのシステムの著作権、販売に関しては何ら干渉しない方針を敷いてきた。システムの拡販は当院のミッションではないからである。
表1に、当院の方針見直しの規範を示す。これらの項目はお互いに独立するものではなく、連続するものであると理解している。この流れに従った当院における最近の歩みの一部を表2に示す。一つの部門の見直しが、次の部門の見直しにつながり、そしてそれらを統合し、ネットワークを作っていくという必然の流れが根底にあることを読み取っていただきたい。
本稿においてはこれら業務の見直しの端緒となった診療材料管理、薬剤管理とそのシステム化の一端を紹介したい。
まず、定数管理での問題点としては、「誰が」最終的な管理をするかということになる。定数を設定し、在庫調整をすることは容易である。しかしながら、実際に現場での管理は看護婦に委ねられるところが大きい。看護婦の本来業務(ミッション)は在庫管理ではないはずである。
次に、幹事卸による管理での問題点としては、「誰が」物流経費を支払うかということになる。モノの値段に物流経費が含まれるとしたら、モノの値段は当然高騰する。モノの値段と物流経費を明らかにしてこそ、信頼関係を持って管理を委託できるのではないだろうか。
そこで、某大手商社の院外SPDの第1号病院として仕組みを立ち上げることとした。材料はすべて、病院とメーカー・卸の交渉による妥結価格で商社の配送センターに納品され、ここで使用部署の実情に合わせた数で小分け梱包され、それらに各々バーコードカードを添付する。
バーコードカードには個々の品名、設置部署、定数、定価などが印字されている。これを業者が各部署の指定の棚に配送し、看護婦は使用時にバーコードカードを所定の箱に投入する。この時点をもって病院が購入し、病棟の発注が終了する。このカードは業者の手で回収され、同じ品物が翌々日に配送されるという仕組みである。また、物流管理経費は病院負担とし、モノの値段とは別途に支払いの対象とした。
さらに、院内のオーダリングシステムと統合する目的でバージョンアップを行った。そこで特定医療材料等の請求可能物品は色付きカードとなり、バーコードを利用して医事請求と連動する仕組みとした。
これにより、導入時の倉庫部署在庫で 7,400万円、在庫金利削減・診療材料のロスの解消などで 3,500万円、看護婦・用度課の診療材料管理業務(間接業務)削減で 2,300万円程度の導入効果をみた。
また、いい悪いは別にして、現行では薬価差が存在する。そこではゼネリック薬への移行の問題も存在する。薬価基準が低いゼネリック薬品では差益率は高いものの薬価差益額は低くなる。また、在庫金額は低くなる。これに対して、先発薬剤は薬価差額を確保できるものの、在庫金額が高額化する。
ここで、もし在庫を限りなくゼロの近づけることができれば、先発薬の方がキャッシュフローとしてのメリットを享受することができ、しかも病院の顔としてブランド品薬剤が処方されることとなる。そこで、物品管理の目的は在庫を削減することを第一とし、さらにそれに派生する発注業務を削減することとし、品目の見直しは行わなかった。
一方、薬剤在庫管理業務における問題点を列記する。多品目の発注に多くの卸業者が絡むこと、品目ごとに値引き交渉が必要なこと、包装単位ごとの発注のため在庫が膨らむこと−などがあげられる。
そこで、まず卸を一社とすること、しかも値引率は総加重平均、すなわち「何を買っても同じ値引率」とすることとした。これにより、発注と交渉の労力は大幅に削減された。
さらに、卸業者と共同で新しいシステムを構築した。薬剤庫に納品された薬剤は、院内で小分けにされバーコードシールを添付する。これを調剤室や病棟に搬出する際に、バーコードリーダー付きコンピュータ(レジ)を通過させる。
このシステムの導入によって、小分けの搬出を担保とした在庫量の削減が可能となった。また、このコンピュータを利用して一社の卸へ自動的に発注も可能となった。
もちろん、後に進めたオーダリングシステムの導入と、注射薬の一本出しによって、注射薬の薬剤庫からの搬出管理と発注管理は、より完全なものとなった。
このようなシステムによって、薬局在庫額が約1/2となり、キャッシュフローの改善を見たといえる。
表1:医療経営における方針の見直し(Management Re-orientation)
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表2:恵寿総合病院における最近の歩み
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