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秋コンプログラムの没ネタ
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Update
1996-12-03
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私には変な知り合いが多い。ソーレ=チャウネン氏(関西系フィンランド人)もその一人である。ある日、いきつけのBAR「PISTONCLUB」で飲んでいたとき、彼は急に苦しみだして、あっけなく逝った。謎の言葉を遺して。「シベリウスが日本にいる。探してくれ。」私は途方に暮れた。
探すといったって、シベリウスの顔の特徴は?。そもそも若い頃のシベリウスはハンサムだった。しかし音楽室でみた彼の肖像画、はげてグロテスクと思うのは、私のみではあるまい。あの顔だったらお化け屋敷?探してみた。いない。と、ある日、テレビで偶然彼を見つけた。何とシベリウス氏は幸せ作り研究所に勤めていたのだった(皆様も、あとで確認して下さい)。
やっとの事で彼に会った。しかし、死後半世紀がたったせいか、今幸せなせいか、音楽家の時分を覚えていないと言う。そんなことではいけない、とりあえず彼の第二交響曲の練習現場につれていった。はじめ、彼はこの曲を書いたイタリアを懐かしんでいるようにも見えた。しかし、そのうち曲以外に気がいってしまった。指揮者の声がでかいとか、コントラバスに二人幸せそうなのがいるとか、トランペットはいかにもすけべそうなのが多いとか言い始めた。挙げ句1stクラリネットの髪が薄いのをみて喜び始めたが、一方で多少は過去を思い出したようだった。「この曲は寒い曲だけど、寒さの中に春を待つ声、暖かい国にあこがれる声もあり、最後に春(精神的な意味も含めて)の到来を感じる曲なんだ。でも何だかこのオケからは絶対零度の寒さしか感じられない。」と言っていた。どこのオケの話だろうか。祖国のことも思い出してくれた。氷河に削られてできた美しい湖、森、隣国からの圧迫の歴史を語ってくれた。当地で開催するラリーを千湖ラリーという事を彼に教えると、「フィンランドには6万の湖があるから千湖ではなくて、」と不満そうだった。まだまだ日本語を分かっていない。
話をしているうちに、フィンランドに行くことになった。
(以下次号)------
さて、というわけで、我々の醤油味な演奏から、多少なりともフィンランドの雰囲気を感じていただければ、これほど嬉しいことはありません。
【アンコールについて】
ナショナリズムの発揚を目的とした劇に用いる曲として作られました。作曲者本人も新婚旅行で行ってきたそうです。その後組曲に編み直された中から終曲をお送りします。今日のところはこの曲で、皆様とさわやかにお別れできる予定です。本日はご来場いただき誠に有り難うございました。
参考資料:名曲解説全集、作曲家別名曲解説ライブラリー、地球の歩き方、ホンダカタログ
(若き日のシベリウスな顔、記)
by Tp.海老原
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