物体がつるまきばねでつり下げられた系があります。このままでは何もおもしろいことが起こらないのでつるまきばねを支えている紫色の支えをドラッグしてみましょう。仮想の手が現れ,つるまきばねを引き上げたり横に振ったりできます。うまく正の仕事をすると,系の力学的エネルギーが増え物体が激しく動き出します。右端のEの記号がついたピンク色で縁取られた棒グラフが力学的エネルギーですが,うまく増加しましたか。コツは仮想の手が加えている力(ピンク色で示されたベクトル)の向きに支えをグイッと引くのです。
仮想の手の動きを止めると,力学的エネルギーは変化しなくなります。外部から仕事をされないと,力学的エネルギーは変化しないのです。これを「力学的エネルギー保存の法則」といいます。このシミュレーションでは運動方程式を数値的に解いているのですが,力学的エネルギー保存の法則が成立します。このように運動方程式と力学的エネルギー保存の法則には深い関係があります。歴史的には,運動の中で変わらない量がないかと探した結果,その1つとして力学的エネルギーというものがあったということです。
ところで,力学的エネルギーの具体的な中身はどのようなものなのでしょう。
まず,物体が運動しているときに持つ運動エネルギーがあります。それは速さの2乗と物体の質量の積を半分にしたものです。それをKの赤色のグラフが示します。速さが大きいときにKも大きくなることに注意しましょう。物体をつかんで放り投げるようにドラッグすると速度を変えることができ,運動エネルギーを変えることができるので試してみてください。
また,重力による位置エネルギーがあります。それはある基準の高さ(横線の位置を基準としました)からの高さと,物体の質量と重力加速度の積です。それをUgの緑色のグラフが示しています。基準の高さより低い位置では重力による位置エネルギーは負になることもあります。
さらに,つるまきばねが伸びたときに持つ弾性力による位置エネルギーがあります。この系では,ばねの自然の長さは0としており,ばねがある長さになっていればその長さだけ伸びていることになります。そのときのばねの伸びの2乗と,ばねの強さを表すばね定数との積を半分にしたものがこの弾性力による位置エネルギーです。それをUeの灰色のグラフが示しています。
この3つのエネルギーを単純に加えたものが力学的エネルギーとなり,Eの棒グラフの色分けでその内訳が示されています。
さて,物体が激しく動いている状態から物体を静止させるにはどのようにしたらよいでしょう。そう,負の仕事をすればよいのです。やってみてください。(仮想の手が加えている力の向きとは逆向きに支えを動かす。)
制作:加藤徳善
(2004)