大進化と小進化について


小進化ってなに?

 交配が遺伝子的に可能な範囲での進化のことです。
 負の自然選択の中で、指向性選択がこの進化を起こしていると考えられます。
 この小進化は、地理的隔離などで簡単に発生します。地理的な生物の模様の違いなどの、いわゆる品種改良などの変異が小進化です。現在、意見がまっぷたつに分かれているのが、この小進化の蓄積が大進化になるのかということです。
 たびたび述べていたことですが、表現型が獲得形質のことであれば、小進化は獲得形質に左右されることになります。


大進化ってなに?

 交配ができなくなるほどの変異のことです。隔離(地理的・性的にかかわらず)による交配の不可能は交配可能とみなされます。種が離れすぎているため交配を行ったとしても(受精しても)発生が不可能な状態が交配不可能です。
 小進化が大進化になることが疑問視されている最大の理由が、遺伝子の進化速度の遅さが、化石からしばしば見られる、飛躍的な進化の速度と矛盾することです。


小進化と獲得形質の関係ってなに?

 首の短いキリンのテリトリーに、シマウマが入ってきたとします。
 シマウマの方が首の短いキリンよりも強くキリンは今までの地面の草や低い場所の木の葉を食べられなくなりました。
 キリンは高い場所の木の葉を取るようにすみ分けを強要されます。
 首の短い個体から生存が難しくなっていきます。逆に首の長い個体の淘汰(とうた)は緩和されます。
 このような環境の変化により、群全体が、同じ方向の獲得形質を手に入れます。つまり、群のほとんどのキリンが首を懸命に伸ばし続けることによって、(1世代内で)首を長くします。
 この環境の変化は継続的ですから、獲得形質も継続的です。長期間、遺伝子が適応するまで何世代であろうと獲得形質は保たれ続けます。
 獲得形質が遺伝しなくとも、何代も同じ性質を獲得し続ければ、求心性選択の下限上限が当然、獲得形質によって上昇され続けます。
 環境変異を含めた獲得形質は、意外に大きいものです。
 環境がいいと無性生殖(雄なしで子供を産む)、悪いと有性生殖などという種は多いのです。このような種が悪環境が続けば、有性生殖の能力に対してのみ自然選択されますから、有性生殖の能力が伸びてきます。
 茶色しかない環境では、カメレオンは茶色をいかにうまく発色させるかが問われます。
 獲得形質の結果でも、首がより長い個体は、遺伝子も首が長い可能性が高いのは当然です。遺伝子が、首が短いものと、長いもので、同じ努力をした場合にどちらがより長い首を手に入れられるかは自明のことです。
 獲得形質が加われば、群全体の平均値が上がるわけです。
 異常と見なす下限が上がります。しかも、獲得形質の方向は通常は最適値に向かっていますから、上限は獲得形質の上にあります。獲得形質による最適値への変異が、求心性選択の上限を緩和するからです。
 求心性の枠が、さらに獲得形質より進化の方向に移動することになります。


行動によるのと環境による獲得形質では指向性選択は同じなの?

 種は求心性選択の上限下限をもっと上昇させたいのですが、形質が追いつくのを待っている状態であり、この種が要求する求心性選択を実現するのが獲得形質です。
 環境変異による獲得形質を持つ場合は、環境変異の結果によってこの指向性選択されます。
 したがって、獲得形質が真っ先に環境に対応し、この環境変異により、より最適値に近い指向性選択ができ、進化の速度は速くなります。
 行動による獲得形質を持つ種は、自ら、最適値の方向を定められます。積極的、能動的に進化の方向を決めます。首の短いキリンは、シマウマよりも強くなる道も選べました。
 首の短いキリンは、首を長くすることによって、指向性の方向を決定します。
 獲得形質により種の最適値は変化します。


獲得形質がないと指向性選択もないの?

 獲得形質がない場合についても、指向性選択が行われますが、群の中心を急に変えることが困難です。獲得形質がある場合と比べ、遅い上に、方向は完全に環境に左右されます。
 進化が種の単位で行われる場合(求心性選択が働いているかぎり)、種が存在するためには、獲得形質を助けるような自然選択になります。したがって、遺伝を定義通りに、子孫へ性質が受け継がれることとすれば、獲得形質は個体では遺伝しませんが、種としては遺伝します。