★北京春天★3

面的いっぱい

 北京市内には黄色い軽ワゴンがたくさん走っている。これがタクシー
(出租汽車)の中で最も安い面的というやつだ。初乗り10キロまで10元、
その後1キロ1元が加算される。1キロ1.6元加算の夏利という3ドアのシャ
レードクラスのもの、1キロ2元加算の4ドアタイプもある。広い北京を動
くには車が一番だが、自家用車はまだまだ普及していないから、タクシー
がとにかく多いこと。走っている車の半分はタクシーじゃないかという気
がする。手を挙げて運転手に行き先を告げる。「天壇公園」。「よし、乗
れ」と言われて、乗り込む。なにやら、中国語で話しかけられるのだが、
とりあえず「我是日本人。我的中国話不好了」と言って、いちおうこちら
の状況を理解してもらう。そうすると、中国語で、なのだが、目的地天壇
公園に着くと、入り口の場所や切符売り場なんかを教えてくれようとした
りするのだ。

朝の自由市場

 宿の真ん前が「東大橋市場」という生活市場で、早朝から大にぎわいだ。
なんせ、窓の外がその門前通りなので、朝4時ごろから車や、自転車で引
くリアカーのようなものなんかが通り始める。車は人や自転車をかき分け
て走るからクラクションを常に鳴らしながら走る。自転車の後ろには元気
な野菜が積まれていたり、リアカーにビニールを張って魚やウナギが泳い
でいたりする。さすがに眠れもしないので、小学校の体育館の二つか三つ
分くらいの市場にでかけた。一人が2畳くらいのスペースで、あらゆるも
のを売っている。衣料、金物、本などを売る部分と、生鮮食料品の二つに
大分されていて、食品の部ではさらに材料と飲食店に別れている。豚肉も
たくさん吊るされているし、新鮮な内蔵類もたくさんある。魚屋には藁で
しばったワタリガニ、スッポン、鯉、ふな、ウナギ、海蛇のようなものも。
香辛料屋には八角や花椒(山椒の実)なんかが、並んでいて、この臭いを
かぐとアジアの市場の臭いだな、という感じがする。勢いのいい売り手と
買い手の中を歩いていると、ストロボを光らせて写真を撮ることになんだ
か気が引けて、カメラを取り出さずじまい。ちょと上等の緑茶を500グラム
購入したら、お姉さんはうれしそうに一生懸命包んでくれた。

☆市場の水餃子

 市場の中の飲食店が並んでいるところを歩いていたら、威勢のいいお姉
さんが店の自慢料理かなんかを言いながら座れ座れと言ってくる。ふむふ
むと壁に貼られたメニューを眺めながら「水餃子」と言うと、なんだか困っ
た顔をされてまくしたてられた。こちらも意味が分からないから困った顔
をして「没有?」というと、ないわけではないらしい。言葉が通じないの
にあきらめたみたいで、酢醤油と割り箸をくれた。とたんに裏の方が忙し
くなった。どうやら用意ができてないから時間がかかるわよ、ということ
を言いたかったらしい。しかしものの十分もかからずに、小皿に山と盛ら
れた水餃子は湯気を立ててやってきた。ぷっくりとした皮のむこうに鮮や
かな青い色をした粗く刻んだニラがたくさん見える。熱々の水餃子をばく
りと一口で食べていたら、他にもお客がやってきた。威勢のいいお姉さん
はお客にいろいろと話しかけて、その男性客を獲得した。男性客の前にも
酢醤油と割り箸が置かれた。どうやら「水餃子がすぐできるわよ」という
のが、今度のセールスポイントになったらしい。20個以上あったか、とに
かく食べきれないくらいの餃子を詰め込んで、支払いは5元。
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