★北京春天★2
☆
二つ星ホテル
北京はアジア大会以降、めざましい勢いで市場経済の波にもまれている。
超高層のホテルがずらりとならび、シェラトンやホリディインといった西
洋資本のもの、ホテル日航やニューオータニのような日本の企業も高級ホ
テルを次々に建てている。宿泊料は日本に比べれば安いものだが、それで
も安いところで120ドル程度だから一万円以上はかかる勘定だ。そこで
宿は、下田特派員にお願いして、予約してもらった。ニューオータニ長富
宮飯店あたりが五つ星なのだが、選んだ宿は国安賓館という二つ星で一泊
が400元(約3700円)。それでも、結構高いほうらしい。さて、チェックイ
ン。何を言われているかはわからないが、書くものは書き、判らないとこ
ろはお互い片言の英語を使いながら、なんとか部屋に案内してもらった。
天井は低かったが、日本の普通のビジネスホテルよりは部屋も広く、21イ
ンチのカラーテレビはあるし、洗面のアメニティも備え付け。建物もさら
に増築中で、存外、立派な宿だった。
☆
長城なお健在
万里の長城は、ご存じの通り、秦の始皇帝が、いくつかの城壁をくっつ
け合わせてこの名前を称した。この始皇帝の在位は前221- 前210年。分か
り切っていることだが、当時、日本では縄文時代なのだ。途中何度も修復
してきたとはいえ、そんなはるか昔に作られたものが、今なお残っている。
そして、どれくらいか知らないが12億中国人民のほかに外国人を含む観
光客が連日押し寄せてなお健在、というのに、あらためてあきれ果てた。
もちろん「月から唯一見える人間が作ったモノ」ということだけでもすご
いのだが、そんな規模の大きさなんかは月からじゃないとわからない。な
にせ、その2400キロに及ぶ長城の中で、北京から最寄りのアクセスポイン
トにちょっとだけアクセスしているだけなのだ。そんなことを思いながら
汗ばむ陽気の中、石積みの斜面を登っていたら、老夫婦がカメラをぼくに
渡して、なにやらお願いされる。この場面では他の頼みはない。OK、O
K、と言いながらシャッターを押す。にこにこと笑ってお礼を言われた
(と思う)ので、ぼくもカメラを取り出して「請」と言うと、おじいさん
も愛機ティアラのコンパクトさに感動しながら、シャッターを押してくれ
るのであった。