学校の内外でいろいろな事件が起こる度に、「生徒と教師の信頼関係」がないといわれることが多いが、実際に生徒は教師をそれだけ信頼しているのであろうか?

 教師は毎年平均すると、3クラス〜6クラス、人数にすると120人〜180人くらいの人間を教壇から教えることになる。多い年には8クラス〜10クラスとなり、人数は400人くらいにもなることもある。さらに部活動やクラブ活動、生徒会活動に各種委員会などでいろいろな生徒と関わることになる。

 仕事の関係であれば、顔を合わせないこともできるし、口を利かないようにもできるかもしれない。授業においては特定の生徒だけを相手にすることもできないし、また無視することもできない。常に生徒一人ひとりと人間関係を作り上げていかなければ、授業もうまく進めることができない。個々の生徒の顔を覚え名前を覚え、性格や家庭環境にも気を使いながら、一生懸命生徒と人間関係を築こうと教師は努力している。200人の生徒がいれば教師との人間関係は、1対200ではなく、1対1が200通りあるわけである。

 一般の企業や役所でも部下の顔を覚え、直接指示を出す人間が200人を越えるような人は少ないのではないだろうか?すべての部下に信頼されている上司などそんなに多くいるはずはないのである。もし200人も部下がいて、すべての部下に信頼されていると思っている上司は、自己認識が足らないのではないだろうか?家庭に目を向ければ、子供から信頼されていると自信を持って言える親はどのくらいいるのであろうか

 何か事件が起こる度に「教師と生徒の信頼関係」がないと言われることが多い。教師は日夜生徒達から信頼されようと努力している。ただ、一人残らず全ての生徒から信頼されることは可能だろうか。 

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