日本型経営が批判され、グローバルスタンダードの波に乗って盛んに「実力主義」という言葉が使われるようになった。横並びの意識をやめ、賃金でも昇進でも能力や実力を評価し、差をつけていこうとするものである。

 プロスポーツのように、打率や防御率、客観的な数値でも評価できるし、たくさんの人がプレーを見て、チームの貢献度や役割などを判断することが出来る。監督だけがその選手を評価するのではなく、いろいろな人がその人の価値を評価できることが理想である。

 確かに、実力主義といえば聞こえが良いが、仕事の評価を誰がどうやってするのであろうか?そもそも仕事をどうやって評価するのであろうか?営業のように簡単に数値化できるものはまだ簡単である。経理や人事、業務や渉外など簡単に数値化できるものではない仕事をどうやって評価するのであろうか?評価する方は何人で1人の人間を評価するのであろうか?

 政治の世界を見れば明らかなように、族議員や派閥の理屈で動いていて、理想を追求しようとすればするほど既得権と摩擦を起こすので、動きが撮れなくなってきている。日本の会社組織のように労働力市場が固定化され、転職が難しい社会では、自分が正しく評価されていないと思っても簡単に他の会社に移ることは難しい。その結果、良い評価を得るためには派閥を作ったり、ゴマすりの上手い人間だけが良い評価を受けやすくなるだけではないだろうか?たくさんの人間が相互(上司が部下を、部下が上司を)に、またその評価の結果が正しく好評される、システムをまず作らないと、実力を評価するのは難しい。

 

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