フジテレビに引き続き、TBSが買収問題に揺れている。楽天の方は事業提携を呼びかけているようだが、TBS側は話し合いもなく、株を買い占められたことに敵対的買収と見なして、ポイズンピルの発動も準備しているようである。阪神電鉄も株を買い占められ、その対応に負われている。

 日本は確かに資本主義の国である。企業は利潤追求が第一目標なので、株式会社の経営者は株主に最大限の利益を還元する義務がある。だからといって、株主の利益だけを考えることが企業の発展になるのであろうか?アメリカでは黒字企業であっても、株主への配当を増やすために、従業員を解雇するのが通常である。従業員から見れば、一生懸命働いて利益を上げたとしても、明日首を切られる可能性もあるわけである。

 日本の文化では、企業を会社と呼び、会社は従業員の忠誠心で成り立っているのではないだろうか?日本独特のムラ意識と結びつき、終身雇用制と年功序列の日本的な慣行が生まれた。言い換えると、会社は一度会社というムラに入ってきた人間は、よほどの理由がない限り定年まで雇用し、雇用されたものは安定した人生設計を考えながら会社のために働いてきた。会社は日本のムラ意識を取り入れることで、独自の発展を遂げてきた

 資本主義の原則に従えば、株式会社は株主のものである。日本は資本主義の国であるから、法的にはこの点については議論の余地はない。しかし、日本は従業員の努力によって会社が発展してきた国である。札束で人の心を買うことはできない国である。経営者は買収されない安定株主を作ることも重要であるが、従業員のことも考えなければならない。ストックオプションや社員持ち株をはじめ、従業員の経営参画も考えていかなければならない時期である。

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