前回の学習指導容量の改訂の際、鳴り物入りで「総合的な学習の時間」が導入された。教科書も何もなく、学校独自の特色を生かした授業を展開するものであった。職場体験や自然とのふれあいやボランティア活動など、小学校から高校まで、本当に手探り状態で「総合的な学習の時間」を作り上げてきた。

 今年になって文部科学大臣が「総合的な学習の時間」の見直しの発言があった。理由は学力低下が著しいので「総合的な学習の時間」を見直して、教科を指導する時間に当てても良いというものであった。さらに、土曜日も授業をしたり、夏休みを短くすることも検討するなど、「ゆとりの教育」とは180度異なることが叫ばれ始めている。

 教育現場はこのような行政の思いつきに振りまわされている。週休2日制と「ゆとりの教育」もごちゃ混ぜになっている。先進諸国で学校が週休2日制になっていない国は日本だけである。発展めざましい中国においても、小学校から大学まで週休2日制になっている。なぜ他の国に出来ることが、日本では学力低下に結びつくのか、非常に理解に苦しむものである。

 一方では若者の自殺、引きこもり、ニートの問題など、解決しなくてはならない問題は沢山ある。「ゆとりの教育」を捨て、学力重視に傾くことも仕方ないとは思われるが、児童や生徒の「心のゆとり」は必要である。大切なのは「学力」だけを重視するのではなく、児童生徒が心にゆとりを持ち、楽しい学校生活が送れることができ、なおかつ必要な学力を付けていくための制度が必要なのである。

 

 元に戻る