大手企業でも、偽装請負や派遣社員の問題が報道されている。バブル期以降、正社員を減らし雇用調整弁として派遣社員や請負社員を働かせる場合が増えてきている。

 ニートやフリーターの問題も社会問題となっているが、失われた10年で正社員を減らし、若者に夢を与える仕事を企業の側も提供してこなかった面も見過ごすことができない。若者の中には、自分のやりたいことややりがいを優先し、正社員になりたがらない者も確かに存在するが、大多数の若者は将来が保障される正社員として働くことを望んでいるはずである。

 バブルが崩壊し、多くの企業で過剰人員、過剰設備、不良債権に苦しんできたことは紛れもない事実である。日本の伝統である、終身雇用制と年功序列に基づく賃金体系も批判されてきた。日本的な経営が世界に通用しないとの意見も数多く見受けられた。

 2005年以降企業業績も改善し、日本経済は緩やかな景気拡大が続いている。不良債権に苦しんできた銀行もその呪縛から解き放たれようとしている。デフレ脱却も出口が見え始めている。団塊の世代の大量退職も目の前に迫っている。なりふり構わずリストラしてきた企業も、そろそろ21世紀を見据えた従業員の育成に、目を向ける時期ではないであろうか。

 昔は能力的に厳しい社員でもまわりのサポートで簡単には首にならずに、助け合って働いてきたはずである。完全な個人の能力主義だけに基づく評価ではチームワークで動く事が難しく、多くの企業で見直しを進めているのも周知の事実である。若者の意識も変わってきたなら、在宅での勤務や、週3日だけの勤務、フレックスタイムなど、正社員や契約社員として雇うことも可能なはずである。介護や育児やボランティア活動などこれからの若者には仕事以外のことも求められている。簡単に請負や派遣社員ですますのではなく、雇用形態を多様化することでより、様々な若者が夢を持って働けるし、企業は多くの若者を雇用することで、新しい視点は価値観を取り込み、ますます発展して行くに違いない。

 

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