医療経営Archives

門前薬局排除策の矛盾

薬局で値段がマチマチ

AERA('96.4.29号、朝日新聞社)より

registration date: 1996.4.23


門前薬局にお灸を据えたはずだった「ペナルティー」が、かえって商売繁盛を招くことになりはしないか。

病院を一歩出たところに軒を並べる薬局、いわゆる門前薬局というものがある。一方、病院から離れた住宅地や繁華街にも、医者の書いた処方箋に基づき薬を出す薬局はある。
たまたま、ある時は門前薬局に、また別の日には近所の薬局に、それぞれ処方箋を持ち込み、全く同じ薬を同じ分量だけだしてもらったとする。
保険がきくのだから、当然同じ金額が請求されるはず。だが、実際はそうでない。この4月から、薬局によって、請求される金額がまちまちなった。
薬の値段が同じでも、薬剤師が薬を出す時につく技術料の、調剤基本料が違う。
ひと月に扱う処方箋が4千枚より多いかどうか。特定の医療機関の処方箋が70%を超すかどうか。この2点から、最高45点(1点は十円換算)から20点まで、4段階の差がつけられることになった。

国の狙い通りにいかず
病院の門前で大量の処方箋をさばく薬局は、そうでない薬局の半分以下の調剤報酬しか、保険制度上受け取ることができない。
一種のペナルティーだ。だが、一定の割合で患者の自己負担があるため、患者にとっては、ペナルティーの科せられた門前薬局で薬を受け取った方が安くつく、妙なことになってしまった。
45点の薬局と20点の薬局だと、たとえば自己負担が3割の人の場合、20点薬局の方が75円安くつく。

(後略)


Kanno's Opinion 大手門前薬局のリベート問題に、厚生省が、我が意を得たりと乗った形で調剤基本料に手を加えた。しかし、医薬分業に対する厚生省の真意が分からない。同じ、成分でも商品名は多数におよび、高血圧に対する一般名ニフェジピンは27種類の商品名におよぶ。薬局側は処方箋により商品名を指定されるわけであるから、すべての病院の処方箋に対応するためには何千種類もの薬の備蓄が必要である。おのずと特定の病院と提携せざるをえない状況にある。
大きく医薬分業を進めるならば、薬の一般名(成分)記載にすべきである。逆に、規制を緩和して、病院内に、外部の薬局をテナントとして、参入させるのも外部委託の一つとして一考かと思われる。その方が、雨や雪の日でも、患者は院内で薬を調達でき、サービス向上につながるのではないだろうか。

地方の薬卸の井上誠昌堂(武田系、本社高岡市)は、調剤薬局の在庫リスクを回避するために、富山市と福井市で、薬局向けに、少量の薬剤の宅配サービスを開始した。これもニュービジネスチャンスと思われる。


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