医療経営Archives

改めて…    介護保険は市場開放

エッジワン(ネットワーク348  月刊アゼットタイムス、平成11年11月号)より

registration date: 1999.11.19


<世代会計でも最悪>

  人はどんな時にカネを出すか?ある人は次の2つだといった。1つは快楽を得たい時、そしていま1つは苦痛から逃れたい時と。

  再び介護保険が揺れている。与党側がここへきて、同保険料徴収の凍結や家族介護への現金給付を声高に叫び出したからである。この動きに対して、民主党のみならず自民党のなかからも言語道断の声も出ている。保険料徴収を凍結すればその財源は国債に求めざるをえず結局は税金という形で国民にそのツケがまわってくるのは自明の理である。

  一国の財政状況を見る尺度として「世代会計」がある。世界17カ国比較は次のとおり。

  1. 壮年期世代(平成7年時点で40歳)の生涯にわたる純負担は3,200万円で、スウェーデンと並んで世界のトップ(ドイツは2,200万円、米国は1,400万円)
  2. 現在の最若年層と将来世代の純負担の比較(世代間分配)は、現在の財政・社会保障制度を維持すると将来世代は現在の若年層に比べて約1.7倍(約3,000万円)の負担増(ドイツは100%増、米国は50%増)
  3. 「つけ」を将来に残さないためには、社会保障25%削減か、所得税50%引き上げ
  この度の凍結さわぎは、選挙目当てといわれても抗弁する説得力がない。

<価格差と値打ち>

  その介護保険、仮単価が発表されて2ヵ月。それは事業展開の生命線になるものだから、敏感に反応するのは当然のことではあるものの、その本質はそんなになまやさしいものではないと警告を発する人も少なくない。国の財政構造を見ても前述のとおりであるから、その見解はもっともなことである。どう読むか、そのポイントは次のとおり。
  1. 仮単価といえども最終単価
  2. 介護療養型医療施設43.1万円はこれまでの怨念の積み重ね。だが医療保険療養型は48万円はくだらない。
  3. 介護保険になると在宅ケアサービスの3分の1は削られる。施設ケアの方が人気が出るかもしれない。
  4. 福祉系サービスはダンピングが可能、医療系サービスは医師会の反対で不可。訪問入浴は5,000円まで出てきた。価格競争が前面に出てくるか。訪問看護もステーションからでなく病院からいくと2,800円もやすい。
  5. デイケアをやめてデイサービスにする。
等々、品質と価格をてんびんにかけた市場競争への突入が介護保険の本質である。政治も姑息な手段を弄している時でない。

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